“三難”背負っての取締役就任

日本サブウェイ 取締役 庵原リサさん。営業統括本部長。

サントリーの営業から41歳でサブウェイの役員として出向し4年目になります。当初は、女性、外部、若いと“三難”背負っての就任でしたので、プロパーの男性と同じことをしても誰もついてこないだろうと思いました。そこでトップダウンではなく、合意形成のプロセスを大事にしてきました。部下に、自分のやりたいことを伝え、何を協力して欲しいかを語りかけ、相手の意見も聞きながら話をまとめます。

役員が管理職と違うのは「伝える力」だと思います。情報共有し、周りを巻き込む力が欠かせないのです。先日、テレビ番組で女性経営者のどなたかがおっしゃっていた「報連相は部下が上司にするものではない。上司が部下にするものだ」という言葉には心から同感で、上になればなるほど伝える力が大事になってくることを実感しています。

そうしてチームで何かを動かせることが、今の仕事の醍醐味です。最近では、あるエリアで売り上げが厳しい時期があったので、営業マンやFC店のオーナーと相談し、サブウェイの認知度を上げる策を練りました。野菜のサブウェイなのだからとFC店の近くの広場でタマネギを配り、また米国からサブウェイのキャラクター「サブマン」の着ぐるみを買ってきて街を歩くイベントを開きました。売り上げの数字以上に、営業マンやFC店のスタッフと協力してファンを増やせたときに一番働きがいを感じます。

リーダーに必要な胆力

役員になって、私もまたビジョンメーカーでなくてはと思うようになりました。ビジョンを語るのは社長の仕事と言われます。でも店舗数が470あり、それぞれにお客様、オーナー、スタッフがいるので、ボスひとりが伝道師ではビジョンが伝わり切りません。

トップと違うことを語ってはいけませんが、かといって受け売りでは魂がこもりません。自分の言葉で同じ内容を話す必要があります。最初は自信がありませんでしたが、今は自分のミッションのひとつと心得ています。

ビジョンを語ること以上に、リーダーシップで大切なのは胆力です。それを実感したのが3.11のときでした。東日本大震災が起きて私も大変動揺しました。そういう中で、社長はまず東北のFC店の安否を確認し、続いて店舗再開の判断を下します。

物流が分断され野菜が用意できません。それでも「ハムだけはさんで出そう。ハムもなければパンだけでもいい。我々は食べ物屋なんだから」と決断します。

震災の影響の大きかったある商店街で真っ先に店を開けたのがサブウェイだったと聞きました。みんなが動じているときに方向性を示し、全責任をもって即断する。リーダーは知識やスキルだけでは足りず、人間力が必要だと感じた瞬間でした。

優等生の謙虚さはセコい

このような腹をくくる胆力を、私も身に付けなくてはいけないと思っています。では社長を目指すのかと問われれば、「目指すと言える自分になりたい」と答えます。少し前までは社長は目指すものではない、周りが決めるものだと考えていました。でも、それは逃げかもしれないと思うようになりました。

私たちの世代の女性は謙虚であれと育てられてきたために、上の仕事やポジションを打診されても「いえ、私なんか」と謙虚ぶり、実際やって褒められれば喜ぶという優等生タイプが多いんです。でも、それってズルいのではないかと。女性も一歩踏み出す勇気をと説いたフェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグさんの『リーン・イン』を読んでそう考えるようになりました。

サブウェイの社長ということではなく、トップに就けるチャンスがあれば、「挑戦したい」とはっきり言えるほうがいいでしょう。でも現段階ではまだ「目指すと言える」自分を目標としています。カッコいいことを言いましたが、実際のところ私のキャリアはつまずきだらけです。