抗体医薬分野をリードする協和発酵キリン株式会社が、新しい企業タイアップの手法を展開している。「Ns’あおい」などで有名なこしのりょう氏を起用した漫画を、Webサイトで連載中だ。第一線で活躍する漫画家を企業タイアップに起用することは珍しい。その仕掛け人ともいえるコルクの佐渡島庸平氏と、漫画家こしの氏が熱く語る。

可能性を広げる
企業タイアップのWeb漫画

――おふたりが組むきっかけは。

佐渡島 漫画家の力や可能性は出版社の仕組みの中に閉じ込められていますが、時間的な余裕があるなら、もっと別の枠組みの仕事をしてもいい。企業の広告もそのひとつで、ちょうど声がかかったこともあって、信頼している漫画家のこしのさんに頼んだんです。

こしの 佐渡島さんは『ドラゴン桜』や『宇宙兄弟』をつくった超ヒットメーカーですが、それだけではなくて、その漫画を売るためのアイデアと行動もすごい。例えば『宇宙兄弟』を女性に読んでもらうために400軒もの美容院に配ったり。普通、やらないですよね。そんな佐渡島さんに、より多くの読者に漫画を届けられる可能性を感じました。今回のお話をすぐに引き受けたのは、漫画がコミック誌に掲載されるだけでなく、自分の漫画の世界がどこまで広がるか楽しみだったからです。

――ウエブサイトにアップされることについては?

こしの いい作品を描いていればテレビドラマになるという想像はつくのですが、Webの場合、自分の想像がつかないところまで作品が広がる可能性がある。そこに期待しています。今回はタイアップというかたちですが、従来のタイアップのような単なる商品紹介ではなく、本当の漫画として楽しめるものを描くつもりです。抗体医薬という難しい内容を、どうやってわかりやすく、ストーリーにしていくか。実際に描いてみて、とてもおもしろいです。

佐渡島 これまで、トップの漫画雑誌で連載している漫画家さんがタイアップを受けることはほとんどありませんでしたが、これからはやっていけると思います。

また多くの人が、漫画とは「イラストとセリフとコマ割り」だと理解していますが、漫画は単なるイラストと違い、感情を描いているから面白いし、読みやすくなっているわけです。同じひとコマに感情を伝える表情とセリフが入り、喜怒哀楽だけの単純なものでなく、複雑な感情を表現できる。

漫画だからこそ伝わる
世界がある

――その技量が難しい情報を面白くするわけですね。

佐渡島 実は企業のほうで、情報は面白くないと考えている。けれど、単なる情報も、エンタテイメントという演出によって面白くなるんです。テレビで人気を集めるバラエティ番組も、情報を演出することで面白くなっている。このあたりで、僕らがお手伝いできる部分があると思っています。ときには研究者にも取材して、企業から情報をいただき、その中から漫画にすると面白いと思う部分をピックアップしていくわけです。

こしの こうした企業ものの漫画では、説明漫画はたくさんあったと思いますが、純粋な漫画作品として連載してきたケースは他にあまりないですよね。

佐渡島 そうですね。さらにいえば、漫画家と読者をつなげる方法は出版以外にもたくさんある。そういう仕組みも、今後もっとつくっていきたいですね。