DNPが目指す「より良い未来」の実現に向けて、2024年、社会とともに成長していくための重要な「マテリアリティ」を特定。各事業領域では独自の「P&I」(印刷と情報)の強みを発揮した取り組みが進んでいる。さらなる事業価値の創出と同時に、東京・市谷地区での緑地づくり「市谷の杜」を通した地域とのコミュニケーションをはじめ、「様々なステークホルダーと連携して、理想とする社会をつくりたい」と、コーポレートコミュニケーション本部の越智由香子本部長は語る。

グローバルでも取り組みの価値を示すことができた

――環境やサステナビリティ関連の活動について、現状の手応えをお聞かせください。

【越智】2022年、2050年のありたい姿として「DNPグループ環境ビジョン2050」を策定し、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」実現に向けた活動を加速させています。2023年3月末時点で2030年度をターゲットとしたGHG排出量削減目標の約9割を達成し、他のテーマでも早期の目標達成が見込まれたため、より挑戦的な目標に引き上げました。2050年のビジョン達成をより確実なものにしていきたいと考えています。

越智由香子さん 大日本印刷株式会社 コーポレートコミュニケーション本部 本部長
越智由香子さん
大日本印刷株式会社
コーポレートコミュニケーション本部
本部長

こうして成果が出ている中で、2024年3月、DNPが「より良い未来」として目指す「4つの社会」(安心・安全かつ健康に心豊かに暮らせる社会、快適にコミュニケーションができる社会、人が互いに尊重し合う社会、経済成長と地球環境が両立する社会)の実現に向けて、DNPが社会とともに成長し続けるために重要なこととして「マテリアリティ」を特定し、様々な取り組みを推進していきます。環境と経済のバランスをしっかりと踏まえて課題解決に挑み、「持続可能な社会」と「成長し続けるDNPグループ」の両立を図りたいと思います。

また2024年12月、世界的なESG投資インデックスである「DJSI World」2024構成銘柄に当社が選定されました。「気候変動戦略」「エネルギー」「廃棄物と汚染物質」「水」「環境方針」などの環境関連の項目はもとより、「労働安全衛生」「企業倫理」「サプライチェーンマネジメント」「人的資本管理」など、幅広い領域で高く評価された結果です。情報開示など企業に求められる基準がどんどん上がる中で、われわれの取り組みがグローバルに認められたことは、非常に大きな意味があると感じています。

対話を重視し、協働によって新しい価値を

――どのような役割を果たしていきたいと思われますか。

【越智】「DNPグループビジョン」は次の3つで構成されています。「企業理念(DNPグループは、人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する)」「事業ビジョン(P&Iイノベーションにより、成長領域を軸に事業を拡げていく)」、そして「行動指針(対話と協働)」です。当社は多様なパートナーとしっかりと対話をして、協働によって新しい価値を生み出すことを重視してきました。先ほどお話しした「4つの社会」の実現も、当社だけでなし得るものではありません。多様なつながりを持つ企業として、積極的に周囲に働きかけていくことも当社の重要な役割だと受け止めています。

――「都市における新しい森づくり」として2015年に始まった「市谷の杜」も、すくすくと育っているようですね。

【越智】はい。かつての武蔵野の雑木林をイメージして、地域固有の在来種のみを植えた自然に近い緑地づくりは当初苦労も多かったのですが、現在は環境にも適応し、木々が大きく生い茂っていますね。鳥や風が運んできたのか、当初は植えていなかった植物が、自生することもあって、まさに「市谷の杜」で自然の循環と生物多様性を確認することができます。森の中に整備した道を散歩する近隣の方々の姿を見かけることもあり、自然に親しむ機会を提供することで、地域の皆さまにも貢献できているのかなと感じています。DNPの事業の原点である活版印刷の技術とその魅力を伝える文化施設「市谷の杜 本と活字館」もありますので、心地よい時間を過ごしていただけたらと思います。

武蔵野の雑木林をイメージした「市谷の杜」
武蔵野の雑木林をイメージした「市谷の杜」

身の回りにある自然に気づき、行動するきっかけに

――環境フォト・コンテストについて、感想などをお願いします。

【越智】自然の中に息づく命の大切さ、温かさなどを捉えているコンテストだと、私は感じています。当社の募集テーマである「万物の息吹」に対しても、応募者それぞれの目線から「私はこういうふうに再解釈した」と、明確な意思を感じる作品になっているのが印象的でした。雄大な自然ばかりではなく、例えば「市谷の杜」でも見られるように、身近な場所にも小さな虫や鳥がいて、自然が循環しています。こうしたところにも目を向けた作品も多く寄せられるのが、本当に素晴らしいと思います。

人間が環境に与えてきた影響はたしかに大きいかもしれませんが、人間がいるからこそ回復できる自然もたくさんあるはずです。自分の身の回りを見つめて、自然との関わりを考えてみる、環境フォト・コンテストはそんなきっかけになると思います。

●「環境フォト・コンテスト2025」入賞作品

●募集テーマ:万物の息吹

2025優秀賞「水ぬるむ」山内 勝さん
2025優秀賞「水ぬるむ」山内 勝さん
2025佳作「生命」長尾正子さん
2025佳作「生命」長尾正子さん
2025佳作「地球(ほし)の息吹」高柳創志さん
2025佳作「地球(ほし)の息吹」高柳創志さん