「2つの顔」で「誰もが安心できる社会」をつくる
――主な取り組みについてお聞かせください。

日本生命保険相互会社
サステナビリティ経営推進部 部長
【加藤】経営基本理念に「国民生活の安定と向上に寄与する」と明記されているように、1889年の創立からこれまで、当社グループは本業を通じたサステナビリティ経営を実践してきました。2023年度には当社グループのサステナビリティ経営を再整理し、「人」「地域社会」「地球環境」を重点領域に定め、それぞれにサステナビリティ重要課題を設定しました。「生命保険を中心にアセットマネジメント・ヘルスケア・介護・保育等の様々な安心を提供する“安心の多面体”としての企業グループ」を目指し、『誰もが、ずっと、安心して暮らせる社会』の実現に向けて各種取り組みを展開しています。様々な社会課題の解決が当社グループの企業価値向上にもつながり、目指す社会の実現に近づく、そんな全体像を描いています。
事業の特徴としては「2つの顔」があり、まず、「保険商品・サービスの提供」という顔です。保険料をお預かりして、何かがあったときにはしっかりとお支払いをすることで経済的な不安を軽減します。もう1つの顔は「資産の運用」です。様々な企業への責任投融資を通じて、投融資先による社会課題解決のための行動を後押しし、かつ企業価値向上を通じたお客さまの利益の拡大も見据えています。
当社グループのCO2排出量は年間約17万トン(2023年度実績)、投融資先の排出量の合計は、そのおよそ100倍の1,700万トンに相当します。SDGsに即したテーマ投融資を2017年以降で5兆円の規模で行い、そのうち3兆円を脱炭素ファイナンス枠が占めています。また、投融資先との気候変動を主要テーマとする「対話」の実施、ESGの要素を投資判断に組み込むといった各種手法をバランスよく活用しています。


簡単に到達できる目標では、挑戦する意味がない
――目標をどのように設定していますか。
【加藤】明確な目的を持って推進できるよう、当社グループの取り組みや活動が社会にもたらす変化、影響を測定する「アウトカム目標」を設定しています。「地球環境」については2050年のネットゼロに向けて、引き続きCO2排出量、温室効果ガス排出量の削減などに注力します。また、私たちの活動の根幹をなす「人・地域社会」においては、2035年までに「お客様数1,700万人」「顧客企業数37万社」「ニッセイ版健康寿命2歳延伸(2023年比)」といった意欲的な目標としています。いずれも、いまの延長線上として捉えていては、到達できないでしょう。あえて厳しい目標を公表し、お客さまや社会にも私たちの活動をご覧いただきながら、自らを突き動かす力に変えていきたいと考えています。
取り組みを加速させていく上で、役職員が主体的に行動できることが、重要なポイントです。まずは日本生命で働く約7万人の全役職員が行動することを示したものが、「にっせーのせ!」プロジェクトです。社会に宣言すると同時に、従業員にとっても「自分も参加している」という意識の醸成を目指したものです。
ある営業職員が自発的に始めた「お客さまへのがん検診受診の情報提供」が全社的に広がり、「がん検診受診勧奨活動」として全国的な活動へと発展した例もあります。2023年度では約55万人のアンケートを回収し、その結果を施策にも生かしてもらおうと、各自治体への情報提供も行っています。また、2024年度は、2023年度を上回る約90万人の声を収集することができました。2年連続アンケートに回答いただいた方の中で、昨年度がん検診を受診しなかった方のうち、約4人に1人が、当社のご案内後に検診を受けていることが分かりました。自分たちの取り組みに社会的意義があるのだと実感することで、職員のモチベーションも高まっていると思います。

「たくましさ」と「美しさ」が伝わってほしい
――環境フォト・コンテストへの参加を通じて、どのようなことを感じていますか。
【加藤】やはり、言葉ではうまく伝えられないことも、写真なら「見て感じ取ってもらえる」という側面がありますよね。「環境フォト・コンテスト」は、自然や環境について、写真という形を通じて、多くの人々に地球環境への関心を高める機会を提供していると考えています。このコンテストへの参加を通じて、環境保全のメッセージをより多くの人々に届けるお手伝いがわずかでもできることをうれしく思っています。
今にも力強い息遣いが聞こえてきそうな圧倒的な迫力が印象的な優秀賞「北限に活きる」、空と海の美しさとトビウオの躍動感が切り取られた佳作「飛翔」、子どもが自分よりはるかに大きな鯉のぼりに向かって両手を伸ばす姿から、未来への希望やたくましさを象徴的に表現している「小さなカメラマン」。これらの入賞作品をはじめ、寄せられた数々の作品からは「美しい地球を守っていきたい」という撮影者の願いが強く伝わってきました。きっと作品をご覧になった多くの方々も、「たくましさ」「美しい地球」への関心が高まるんじゃないでしょうか。そこから、少しでも自分ができることを実践してみよう、そんな行動につながっていけばうれしいですね。
●「環境フォト・コンテスト2025」入賞作品
●募集テーマ:たくましく生きる力


