自社の営業体制をいかに強化、変革するか――。収益性の向上が強く求められる今、これは多くの企業にとって喫緊の課題に違いない。そうした中、注目を集めているのが営業プロセスの最適化により、生産性向上や収益最大化を実現する「レベニューオペレーション(RevOps)」だ。それはいったいどのような機能を持ち、いかなる役割を果たすのか。20年以上にわたり法人営業、マーケティングの改革を支え、RevOpsの設計、構築でも高い評価を得ているブリッジインターナショナルの吉田融正社長に聞いた。

“あうんの呼吸”による法人営業は今後難しい

――法人営業の課題解決を支援する立場として、顧客企業の現状や事業環境の変化をどう見ていますか。

吉田融正
吉田融正(よしだ・みちまさ)
ブリッジインターナショナル株式会社
代表取締役社長
1983年日本アイ・ビー・エム入社。営業部長、副社長補佐などを務め、94年米国IBMに出向。97年米国シーベル・システムズ入社。同年に日本シーベルの設立に参画し、取締役営業本部長に就任。2002年ブリッジインターナショナルを設立。

【吉田】人材の不足や流動化、やはりこれが大きな問題になっています。これまで日本における法人営業は、“あうんの呼吸”で成り立ってきた側面がある。そのため業務が属人化し、見込み客の発掘から顧客への提案、クロージング、アフターフォローまで全てを担当するゼネラリストが活躍してきました。しかし、優秀な人材からどんどんと転職していく今の時代、“人に依存した営業”は深刻なリスクといえます。私は米国でも仕事をしましたが、多国籍で以心伝心が通用しない環境での営業活動は非常にシビア。分業化やテクノロジーの活用によって合理性、効率性を徹底的に追求することで成果を上げています。

――テクノロジーについては生成AIの活用などに関心が集まっています。

【吉田】最新技術が単に人の補完をするだけでなく、人ができない高度な作業を担うようになる中、それを賢く使いこなせるかどうかが営業の競争力を左右します。AIは学習を重ねることで進化するので、いち早く活用を始めたところが競争優位を勝ち取れる。「導入はもう少し先」と考えている経営者も多いかもしれませんが、すでに岐路に立たされていると認識すべきでしょう。

あなたの会社の営業部門はこんな課題を抱えていませんか?

データが分散していると課題の原因を分析できない

――営業力を強化するため、具体的にどのような取り組みが求められますか。

【吉田】私たちがまず重視しているのが、レベニュープロセスの確立です。レベニューとは「売り上げ」のこと。売り上げ確保に向けたマーケティング、インサイドセールス、セールス、カスタマーサクセスといったプロセスを分業化し、機能を明確にする。そうしてゼネラリスト型の属人モデルから脱却し、各業務の専門性を高めていくのが第一歩です。

ただしプロセス分業を進めていくと、多くの場合ある段階で問題が発生します。“サイロ化”です。それぞれの組織が自分たちの業務ばかりに目を向け、部分最適に陥ってしまう。まさにそこで役割を果たすのが、今関心を集めている「RevOps」に他なりません。

――RevOpsはどのような役割を担うのでしょうか。

【吉田】一連の営業プロセスの土台となって、それぞれを統合、連携するのが最も重要な仕事です(下図参照)。サイロ化の問題の一つは、システムやデータも分断してしまうこと。すると最終目的である売り上げが上がっていないとき、どこに原因があるかを分析できません。結果、適切な対策も打つことができない。そうした事態を生まないため、各組織の壁を排除して一貫性のある活動を後押しするのがRevOpsの大きな役割です。

レベニュープロセスとRevOps(レベニューオペレーション)の在り方

――テクノロジーの活用も支えることになるのでしょうか。

【吉田】そのとおりです。生成AIなどの活用においては、統合された質の高いデータをいかに持っているかが鍵になる。各所でバラバラに集められたデータはあまり役に立ちません。今後はテクノロジーによって営業や購買がある面では急速に自動化していくことが予測されます。その中で、RevOpsの存在は極めて重要なものになると考えられます。

営業モデルの抜本的変革を考える企業が増えている

――RevOpsの設計や構築におけるブリッジインターナショナルの強みを教えてください。

【吉田】一口にRevOpsといっても、その在り方は個々の企業によってさまざまです。その点私たちは、2002年の設立以来、多様な業種業態のお客さまの法人営業改革や一部の業務をアウトソーシングで支援してきました。どんな仕組みにすれば売り上げが上がるのか、症状や目的に合った有効な処方箋を数多く持っています。またCRMやMA(※)などのシステム面もサポートし、顧客データとAIを連携する取り組みなども先駆的に行ってきました。

法人営業の場合は当社のお客さまの先にさらに取引先があるため、そのニーズや購買行動の変化も意識しながら提案や仕組みづくりを行うのが私たちのやり方。おかげさまで「本当によく分かっている」「行き届いている」といった声を多く頂いています。

※CRMは「Customer Relationship Management」(顧客関係管理)、MAは「Marketing Automation」(マーケティングの自動化)のこと。

――顧客からはどのような相談を受けることが多いですか。

【吉田】ここにきて、代理店販売を直販にしたり、売り切り販売をサブスク型にしたりというような事業変革を機に、法人営業モデルを抜本的に変革したいという相談が非常に増えています。まさにそこで重要になるのが精度の高い顧客データであり、RevOpsです。これがないと最適な営業プロセスを組み立てられません。そこで当社はコンサルティングからシステムの選定、導入、運用支援までを一貫して行っています。また、社内リソースの不足やスキル不足からアウトソーシングの相談も多くあります。

――最後にRevOpsに関心を持つ企業にメッセージをお願いします。

【吉田】繰り返しになりますが、今後はいっそう人材獲得競争が激化し、法人営業の領域にも生成AIなどが本格的に入り込んでくる。人に依存した営業、従来の延長線上の取り組みでは競争力を維持するのが難しいでしょう。そうした中では確かな権限を有したRevOpsを設置し、継続的に業務を改善していくことが不可欠です。当社としては、その取り組みを後押ししていきたい。これまで蓄積してきた知見を生かし、総合的にバックアップしていきたいと考えています。