顧客、社会のニーズに応える
物流ソリューションを

2年前の東日本大震災は、産業界や各企業に「BCP(事業継続計画)」の重要性を再認識させ、同時により“強靭なロジスティクス”を求める動きを加速させている。一方、リスク管理とロジスティクスの観点から見るとき、近年浮上してきた新たな経営課題の存在にも気づく。リコールや製品の自主回収などの問題だ。

近年のリコール等の増加は、企業にとっては影響度の高い経営リスク。消費者への危害が拡大する前に、製品を迅速に回収するために必要なのは、周到な物流戦略だ。佐川急便・東京本社の笹森公彰営業部長は、現状について次のように解説する。

「運輸サービス主体の『デリバリー』に、保管・加工機能などを含めた『ロジスティクス』、そして決済機能や情報サービスを支える『ITシステム』。いまやこれらは一体となっています。リコールや自主回収においても、それぞれ機能がスムーズに連携しないと対応できません。そうしたなか当社では、お客様が求める機能を幅広く準備。そして、そのなかから必要とされるものだけを提供する“カスタマイズ性”を重視しながら、物流ソリューションをご提案しています。現在展開している『リコール・トータルサービス』などは、その典型的な例といえるでしょう」

「リコール・トータルサービス」とは、その名のとおり、リコールや製品の自主回収に対応したサービス。製品事故や不具合が発生した際に、佐川急便が緊急対応、回収業務、フォローアップなどを担う。製品の欠陥などによるリコールや自主回収は、いまや製造・輸入業者にとどまらず、販売・流通に関わる者にも影響が及ぶ。消費生活用製品安全法の改正(2007年5月施行)や消費者庁の発足(2009年9月)、またブランドイメージやCSRの面からも、消費者への迅速かつ的確な対応は不可欠だ。

「リコール・トータルサービス」を開発した黒川泰之営業戦略担当部長は言う。

「当社がこのサービスを始めたのは、約3年前。当初は製品の回収部分を中心にサポートしていましたが、その後、コールセンター業務や情報管理の部分など、お客様からの要望に応える形で、周辺のサービス機能を強化してきました。『佐川急便がここまでやってくれるのか』とおっしゃってくださるお客様も多いですね」

確かに顧客からの高い支持も納得できる。同社では「リコール・トータルサービス」と合わせて、昨年8月から返品・回収となった製品に対する返金を代行する「商品回収・返金サービス」をスタート。回収業務のみならず、購入者との連絡や、指定口座への返金まで請け負えるようにした。現場のサービス担当者やファイナンス機能をもたない企業にとっては、実に頼もしいサービスといえるだろう。