2012年にスタートした「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」(FIT)を契機に普及が加速した太陽光発電。出資を募って太陽光発電所を建設し、収益を投資家に還元する「太陽光ファンド」など、投資対象としても注目を集めている。そうした中、独自性の高いビジネスモデルで事業を展開しているのがブルースカイソーラーだ。今後も太陽光発電市場は成長を見込めるのか──。投資リスクについてどう考えればいいのか──。同社の窪村梨絵氏と、実際に太陽光ファンドへも投資を行う土屋アセットマネジメントの土屋剛俊氏が語り合った。

他の電源と比較して太陽光に競争力はあるか

土屋剛俊
土屋剛俊(つちや・たけとし)
土屋アセットマネジメント株式会社
代表取締役社長
野村証券チーフクレジットアナリスト、バークレイズ・キャピタル証券ディレクター、みずほ証券金融市場本部シニアエグゼクティブなどを経て、2021年7月より現職。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会認定アナリスト。

【土屋】中長期の投資を行う場合、投資家は当然事業の将来性や持続性を重視します。太陽光発電についていえば、原子力発電所の再稼働が影響を与えないか、化石燃料の価格が下落しても競争力を維持できるかなど、さまざまなリスクが想定されます。そうした点について、太陽光発電事業者自身はどのように考えていますか。

【窪村】まず原発と太陽光発電については、脱炭素社会を目指す上で共存関係にあると考えています。実際、政府発表の「第6次エネルギー基本計画」の電源構成も、原子力が20〜22%、再生可能エネルギーが36〜38%でそのうち太陽光発電だけで14〜16%となっている。太陽光発電はすでに日本の電力を支える重要な電源として位置付けられています。

【土屋】そもそも日本における太陽光発電の普及は、FITが強力に後押しした側面があります。しかし、電力の買い取りには期間が存在し、買い取り価格も徐々に下がっている。そうした中で、今後も太陽光発電が他の電源と競争していけるかも課題といえますね。

【窪村】おっしゃるとおりです。その点については技術革新などによる発電コストの低減。これが鍵になると思っています。FIT開始当時と比べると、例えば太陽光パネルの価格はおよそ5分の1になりました。その他、運転維持費などを考慮しても、発電コストはすでに石炭火力に近いところまできています(グラフ参照)。

2020年の電源別発電コスト試算

【土屋】今の太陽光発電は、補助金や優遇策がなくても、実は確かな競争力を有している。そう判断する人としない人の両方がいるからこそ、そこに投資妙味が生まれます。私自身は太陽光発電の競争力には根拠があると考え、一つの投資対象としています。

【窪村】国内の電力需要も、例えばデータセンターや半導体工場の新設で今後増えることが予想されます。一方で従来型の火力発電所は段階的な廃炉が見込まれますから、その意味でも太陽光発電所の存在感は高まっていくものと考えています。

面積当たりの発電効率が50%程度アップ

【土屋】もう一つ太陽光発電への投資リスクとして、「国土が狭く、平地が少ない日本では、今後発電所の開発が難しいのでは」という声があります。本質的な課題かと思いますが、この点についてはどう捉えていますか。

窪村梨絵
窪村梨絵(くぼむら・りえ)
ブルースカイソーラー株式会社
取締役
電源管理部門 部門長
法律事務所、不動産会社を経て、リニューアブル・ジャパンのグループ会社であるアールジェイ・インベストメントに入社。上場インフラファンドのアクイジション業務に従事。2022年より現職。ブルースカイアセットマネジメントの代表取締役も兼務。

【窪村】今後の開発は森林を切り崩すような大規模なものではなく、耕作放棄地や遊休地などでの小中規模なものになっていく。これがブルースカイソーラーの基本的な考えで、実際当社はそうした開発に注力しています。

【土屋】確かに、一部のメガソーラーが自然環境に負荷を与えているとか、地元住民とトラブルになっているといった話も聞かれ、その種の大規模開発を続けていくのは難しい。ただそうすると、中小規模の開発で採算が取れるのかという疑問も湧いてきます。

【窪村】そこで私たちが力を入れているのがリパワリング事業、パネルやパワーコンディショナーなどの設備を入れ替え、発電効率を向上させる取り組みです。当社では地面に反射シートを敷き、両面パネルを用いるなどの手法も駆使し、面積当たりの発電効率を50%程度向上させることにも成功しています。

【土屋】重要なポイントだと思います。お話ししたとおり、投資家は事業の将来性を重視する。「土地の面積が開発の限界を決めてしまう」というのでは未来がないわけです。しかし、既存の土地を有効活用できる、小さな土地でも収益を確保できるということであれば、そこに将来性を見いだせる。後は、事業者の技術力や経営力の問題ということになります。

【窪村】ブルースカイソーラーでは、これまで110件以上のリパワリングを手掛けており、この分野のリーディングカンパニーであると自負しています。発電効率が上がれば、より小さな面積で同等の発電量を得ることができる。そうすると、例えば空いた土地に蓄電池を設置し、無駄なく電力を活用するといったことも可能になります。当社では、さまざまな工夫によって太陽光発電所を再生し、その価値を高める取り組みを行っています。

高度な資金調達力を生かし質の高い投資機会の創出を

【土屋】リパワリング事業の他にブルースカイソーラーさんの特徴はありますか。

【窪村】開発や電気施工、O&M(オペレーション&メンテナンス)管理、アセットマネジメントを一気通貫で行っているのが私たちの特徴です。それら事業のほとんどを内製化しており、社内にノウハウを蓄積できることも強みとなっています。O&Mの受託件数は約1500件、850メガワットと業界内でも高水準。この分野ではドローンやロボットの活用なども始まっているため、蓄積したノウハウを生かして他社との差別化を図っています。

脱炭素を支えるブルースカイソーラーの実績

【土屋】ブルースカイソーラーさんとのコミュニケーションでは、こちらの疑問に対して迅速に具体的な説明をしてくれる点を投資家として高く評価しています。また、どの事業においてもファイナンスは非常に重要になりますが、その点についての御社の取り組みを教えてもらえますか。

【窪村】ありがとうございます。金融の専門的な知見に基づく高度な資金調達力は当社の事業を支える大事な要素です。太陽光発電所の開発ではプロジェクトファイナンスによる資金調達が一般的ですが、それだと資金の用途が限定され、設備の追加や入れ替えが難しくなることも多い。そこで私たちは、みずほ証券さまなどを中心に金融機関とも連携し、状況に合わせて多様な手段を取っています。そうして柔軟に開発を進め、脱炭素に貢献する質の高い投資機会を創出することは当社の重要な使命です。現在、より多くの方に投資機会を提供すべく、上場インフラファンドの組成も準備しています。

【土屋】現在、脱炭素の推進は言うまでもなく世界的な課題です。一方で、天然資源の乏しい日本にとって再生可能エネルギーの開発はエネルギーセキュリティーに関わる重要な国家戦略でもある。私自身は、そうした観点からも太陽光発電の動向を注視していきたいと思います。