多くの企業が便利なITツールやシステムを事業の成長に結び付けられていない。そうした問題意識の下、2022年に創業したエンミッシュ。Salesforceをはじめとする営業支援システムや顧客管理システムの導入・運用支援、営業領域のコンサルティング、実務代行、インターネット広告の代理業などを手掛けている。社長の河原義平氏はセールスフォース・ジャパンやサイバーエージェントで営業職に従事した経歴を持ち、さまざまな現場でIT活用の課題と向き合ってきた。

顧客企業の支持を受け3年目で100社超と取引

――多くの企業でITツールやシステムが十分に機能していない原因はどこにあると河原社長は思いますか。

株式会社エンミッシュ代表取締役社長 河原義平
河原義平(かわはら・ぎんぺい)
株式会社エンミッシュ
代表取締役社長
1991年生まれ。大学卒業後、製薬会社に入社。その後、セールスフォース・ジャパン、サイバーエージェントで営業職を務め、それぞれにおいて優秀な営業成績を残す。2022年に「Salesforce認定コンサルティングパートナー」としてエンミッシュを創業し、代表取締役社長に就任。

【河原】知見を有した人材が社内におらず、ITを使いこなせていない企業が多い印象です。私の実感では、期待どおりの効果を得られている企業は全体の2~3割程度。かなりの企業でせっかくの仕組みが宝の持ち腐れになってしまっています。

そうした中で一つ重要なのが、ITとマーケティング、セールスをひも付けて考えられる人材だと私たちは考えています。営業支援や顧客管理のシステムは、本来マーケティング施策、セールス施策に基づいて構築されるべきものです。一方で、システム特性を考慮しない営業施策もうまくいきません。それぞれをいかに効果的に連携するかがビジネス成功の鍵となります。

――実態としては、そのための人材を確保するのが難しく、連携ができていない企業が多いわけですね。

【河原】当社のお客さまでも、もともと各領域で個別に外注を活用し、それぞれの支援が「点」になっていたケースがとても多い。当社では、それを「線」にすることを強く意識しています。するとたいていは、お客さまのアポイント数や有効商談数が数倍になります。多様な知見を備えたプロ集団として“全体最適”を追求するサポートを行う。これは、私がエンミッシュを起業した大きな理由です。

――これまでの実績を教えてください。

【河原】創業から3年目で取引社数は100社を超えました。BtoB、BtoCのどちらのお客さまもいらっしゃいます。当社として営業活動は行っておらず、おかげさまで紹介ベースで案件が増えている状況。今期は売上高5億円が目標です。

――サービス提供に当たって、特にどのようなことを重視していますか。

【河原】当事者意識、これを何より大事にしています。システム、マーケティング、セールスを一気通貫でサポートするには、お客さまのビジネス構造や組織の在り方を深く理解する必要があります。そこで各部門のマネジャー、また現場の方々からも課題を吸い上げた上で、コンサルティングや実務代行を行っています。

また、お客さまのサービスや商品を必ず利用してみるというのも当社のやり方です。例えば、ユーザーインターフェースを微調整するだけでリード獲得率が大きく変わることもあるので、ユーザー目線できめ細かくノウハウを提供します。そして最終的には、お客さまが“自走”できる体制を構築していく。これが私たちの基本方針で、その点も高く評価していただいています。

エンミッシュのビジネスモデル
ITと企業を成長させる原動力であるマーケティング、セールスを連携し、相乗効果を生むことで、顧客企業の成長を後押しする。

事業責任者のようなポジションで仕事ができる

――エンミッシュ自身の事業戦略としては、どんなことに注力していきますか。

【河原】多くの引き合いを頂く中、人材面の強化は重要な経営テーマで、“胆力”のある人材をいっそう充実させていきたいと考えています。私たちの仕事は不確実性の高い中で解決策を見いだしていく必要があるため、物事に動じず、最後まで成し遂げる力が大事になる。もちろん技術的なスキルも重要ですが、胆力を重視した人材戦略を推進していきます。

――自社の働く環境の整備として取り組んでいることはありますか。

【河原】まず、リモートワークを含めて多様な働き方の選択肢を用意しています。それぞれが能力を最大限発揮するために、自分に合ったスタイルで働けることは今や大前提です。また、社員のモチベーションアップを目的に表彰制度を設け、毎月ベストプロジェクト賞など複数の賞を授与。成功事例として社内で共有しています。そしてもう一つ、社員にとって大きいのは事業責任者のようなポジションで仕事ができる環境、これが当社にはあることだと思っています。

――どういうことでしょうか。

【河原】成長途上にある当社では、部門の目標設定やKPI設計などに多くの割合の社員が関わります。また、採用活動なども社員が主体的に進めていく場面が多く、それぞれが責任者かそれに近い役割を果たすことになります。

各案件の進行においてもそれは同様で、一人一人がエンミッシュの代表としてお客さまとやりとりします。責任者として現場の最前線で意思決定を行うことは、自身の成長機会となるはずです。実際、大手企業から転職してきた社員は「自分の仕事がお客さまにヒットしている感覚を強く得られる」「これまでと手応えが違う」といった話をよくしています。

――最後にエンミッシュの今後のビジョンを聞かせてください。

【河原】数字面では「2028年までに年商100億円」が目標です。達成するには、ステークホルダーにより多彩な選択肢を提供していく必要があります。例えばAIやデータサイエンスの活用はこれから重要度を増してくるに違いない。人材供給も含め、今後そうしたニーズにも応えられる体制をつくっていく考えです。

一方、社内では傾聴することを大事にして、質の高いコミュニケーションを実践していきたい。それが社員の前向きな気持ちの醸成、組織力の強化につながると思っています。私たちの仕事では、基本的に「人」が密に関わることで価値が生み出されます。その意味では、「人」の可能性を最大限引き出すことがリーダーの大きな役目。そのための環境、仕組みづくりを引き続き行っていきます。