働く、住む、遊ぶ、食べる、買い物する、発見する。すべてが揃う街、恵比寿。
【宮澤氏】「恵比寿ガーデンプレイス」は、恵比寿の街と切っても切れない関係にあると思っています。当施設の魅力が上がると恵比寿の街の魅力も上がるし、その逆も然り。そして、ヱビスビール発祥の地である恵比寿は、私たちサッポログループにとって札幌と並ぶ大切な祖業の地です。
近年、恵比寿は「住みたい街」の上位ランキング常連というだけではなく、「働きたい街」としても評価される稀有なエリアになっています。長年この土地に身を置いてきた私から見ても、非常に個性的な街であるように感じられます。
都内の他の繁華街やオフィス街に比べると、恵比寿ははるかにコンパクトな規模の街です。それでいて、オフィスや商業スペース、映画館、美術館、飲食店などさまざまな機能を兼ね備えている。また、昔ながらの下町風情が残る商店街もあれば、そこに隣接した場所にミシュラン級の飲食店やセレクトショップなどハイエンドのお店が並んでいます。こういった多様さが、この街の大きな魅力です。
しかし30年前は、今の様子からは想像できないほど静かな街でした。人通りがあるのは平日の日中だけ。東口エリアは夜になればさっと人が引いて、オフィスが閉まる土日にはしんと静まり返ってしまう。強いていうならJRと日比谷線の乗り換えをする人が西口のごく一部を通過していた程度、と言っても過言ではありません。
こうした状況の中で1994年に「恵比寿ガーデンプレイス」を開業して以来、私たちはこの施設を起点としながら、常に人が集まる、賑わいのある街づくりをしていきたいと考えてきました。オフィスや住宅に振り切った施設を建ててしまうと、人通りのない時間ができてしまう。だから、「恵比寿ガーデンプレイス」を、商業・文化施設・住宅・オフィス・ホテルなど複数の機能を兼ね備えた大型複合施設にしたのです。私も、当時の開発プロジェクトチームの一人でした。チームの誰もが、祖業の地に対する恩返しの気持ちと、この街の発展に貢献しなければならないという責任感をもって臨んでいたことを覚えています。
同時に、恵比寿ガーデンプレイスを開業すれば、その周辺も人の流れが生まれ、自然と賑わっていくだろうという仮説も立てていました。実際に住みたい街として注目され出したのは、2010年頃からでしょうか。その影響でオフィスも増え、相乗効果でエリアとしてのポテンシャルがどんどん上がっていきました。こうした流れを背景としながら、恵比寿に元々あった機能のそれぞれが伸びてエリアとして成熟し、今に至っているように感じています。
恵比寿のイメージを調査したアンケートで、一番に恵比寿ガーデンプレイスを想起する方が多かったというデータもございますが、「恵比寿といえば、ガーデンプレイス」なんてお声を聞くと、やはり嬉しいですね。より愛される施設になるよう、地域の方々とのつながりも大切にしています。たとえば毎年秋に開催している「恵比寿文化祭」は、2011年頃にこの地域に住むお子さんたちからの「ガーデンプレイスの大屋根の下で、普段習っているチアリーディングを発表できたらいいな」というリクエストでスタートしたイベントです。その翌年以降も続き、2023年には恵比寿にゆかりのある71の企業・団体にご参加いただき、過去最大規模で実施しました。恵比寿ガーデンプレイスで始まった地域の方のイベントが、街全体のイベントとして確立しつつあることを大変喜ばしく思っています。
ビジネスパーソンにとって「恵比寿ガーデンプレイス」が魅力的な理由
2024年10月、恵比寿ガーデンプレイスの開業30周年を迎えます。そこで、「はたらく、あそぶ、ひらめく。」という新たなブランドコンセプトを打ち出しました。開業以来、さまざまな目的を持った方が集まる施設として成長してまいりましたが、ビジネスパーソンの方々が働きやすい場所になるような仕掛けをつくることにも注力しています。
ブランドコンセプトを刷新した大きな理由は、この30年で私たちの生活が大きく変化したことです。ビジネスの分野でいうと、仕事のオンとオフを明確に区別する生活から、少しずつシームレスに行き来するようになりました。特に、コロナ禍がこうした変化を加速させたことは言うまでもありません。オフィスに対する価値観もガラッと変わり、毎日出勤しなければならない「執務室」としての機能が薄れ、その代わりに、人々が集まってコミュニケーションをとり、新しい発見やアイデアを創出するための「場」としての期待が高まっています。
こうした状況の中で、「恵比寿ガーデンプレイス」は今新たにさまざまな企業様から注目していただけるようになりました。というのも、オフィスに新たに求められているこれらの機能が、当施設内にはすでに揃っているからです。オフィスから一歩外へ出ると広い空や木の葉の緑が目に入り、リフレッシュしやすい環境です。さらにブルワリーやジャズなどの生演奏や映画なども充実していて、アイデアが生まれたり、気づきを得られそうな機会がたくさんあります。
当施設に入居されている企業様にお話を伺うと、「恵比寿は一つの機能に限定せずにオフィス機能や遊びの要素がバランスよく融合していることが、ビジネスにとっても良い影響を与えている」といったご感想をいただきます。「散歩がてら近くの飲食店に行くこともできるし、お弁当などを買って施設内のベンチのほか好きな場所で時間を過ごすこともできる」とおっしゃる方もいます。
また、近年はリモートや在宅勤務も浸透する一方で、企業へのエンゲージメントやコミュニケーションにおける課題が指摘されています。当施設にはレストランやカフェがあるので、「仲間とのランチがオフィスに出社する理由になることもある」と言ってくださる方もいらっしゃるのが大きな特徴です。そのほか、アンケートでは「『恵比寿ガーデンプレイス』という認知度の高い施設にオフィスを構えていることが会社への信頼感につながり、自社のブランディングに寄与している」「来客や採用面接の際、道案内なしでも到着できる」といったお声もいただいています。
イノベーションを生む施策を打ち出しながら、街の発展に寄与していく
さらに一歩踏み込んで、企業の壁を越えたビジネスパーソンの方々の交流を促し、イノベーションが起こるきっかけとなるような施策も積極的に打ち出しています。今年4月に開業したブルワリー「YEBISU BREWERY TOKYO」と連携した、「みんなでつくるビールプロジェクト from YEBISU BREWERY TOKYO」はその一つ。これは、恵比寿の街の皆様と開業30周年を祝うプロジェクトです。当社がビールをご提供するだけでは一方通行になってしまうので、恵比寿ガーデンプレイスで働く方を中心に30周年記念ビールを造り、開業30周年を迎える10月に街の皆様と乾杯することでコミュニケーションを活性化させる工夫をこらしました。
もう少し身近なイベントとしては、「Workers’ Networking Evening」も実施しています。これは、気軽にビールを飲みながら他のオフィスワーカーと交流する、というもの。仕事終わりや仕事の合間に気軽に参加でき、無料でビールと料理を楽しみながら、当施設らしいオンとオフのシームレスさを感じていただけます。また、自社の中だけでは得られない気づきや発見を相互に得られる機会にもなることでしょう。
そのほか、アートの分野でもイベントを開催できることが当施設の強みです。「Workers’ Cinema Week」では、「仕事」「イノベーション」をテーマに選定した映画作品を上映。また、「Good Morning Music with BLUE NOTE PLACE」と称して、ブルーノート・プレイスが選定した上質な音楽を4月の間、平日の朝にエントランスで放送。これらの仕掛けが、恵比寿ガーデンプレイスで働くビジネスパーソンの方々にとって、仕事上の気づきや発見を得るきっかけになれば、と考えています。
「恵比寿ガーデンプレイス」が、働く時も、遊ぶ時も、ちょっとしたひらめきが生まれる場所となり、ワークプレイスとしての街の価値を高めていきたいというのが当社の思いです。そのためには、我々自身が考え方や施策を常にアップデートしていかなければならないでしょう。今回の新しいブランドコンセプトのようにソフト面でのアップデートはもちろんのこと、ハード面では建物の形を変えずに、経年とともに味わいが増すように施設を維持することも時には必要になるはずです。こうした不断の努力を続けながら、恵比寿の街と「恵比寿ガーデンプレイス」の関係が今後もいい形で続くよう、邁進していきます。当社のこうした取り組みに魅力を感じ、より多くの企業様やビジネスパーソンの方々が集まり、今後ますますこの施設と街が発展していけば、と願っています。