食材と人件費が売上原価の大部分を占める飲食店経営において、近年の物価高騰とスタッフの賃金上昇は、大きな悩みの種となっている。そんななか、広島県福山市の映クラ株式会社では、シフト管理業務を大幅に効率化し、店舗の人材配置を可視化するシフト管理サービス『Airシフト』を導入したことで、経営に大きな改善がもたらされたという。その実際の効果について、同社の外食事業部長・佐々木恵介氏と福山川口店店長・下山剛弘氏に話を聞いた。

飲食店スタッフの人件費効率化が課題に

世界的な物価上昇にともない、飲食店の経営は厳しさを増している。原材料の価格高騰に加えて、円安にともなうインフレ基調のなかで上昇が続いているのが人件費だ。顧客離れを考えるとメニューの値上げにも簡単には踏み切れない「四面楚歌そか」の状況のなかで、低コストで導入できるシフト管理サービスを活用することで、業績を伸ばすことに成功した企業がある。

「もともとは、当社が経営する複数の飲食店の人件費を何とか効率化したかったんです。それに役立ちそうなサービスを探すなかで、リクルート社に『Airシフト』というシフト管理サービスがあることを知りました」

そう語るのは、広島県福山市に本社を置く映クラ株式会社の取締役外食事業部部長の佐々木恵介氏だ。人々の生活に関するサービスを事業とする同社では、広島県・岡山県を中心に、40店舗以上の飲食店や中古車販売店を展開している。その飲食事業のなかで中核となっているのが、中華料理の大手フランチャイズ「大阪王将」17店舗の経営だ。

食材と人のコストが収益に大きく寄与する飲食業。物価高や円安によるインフレ基調により売上原価の最適化がますます難しくなってきた。

「年々業績が伸びて新規出店が続くなかで、店ごとの人件費のコントロールが難しくなっていきました。当社が経営する大阪王将には、それぞれ10~25人ほど、全部で約250人のアルバイト・パートのスタッフがいます。そのシフト管理というのは基本的に店長の仕事なのですが、忙しい時間に人が少なかったり、必要以上にアルバイトがいたりする店が増えてきたんです。適正なシフトを組むことができれば、人件費の削減につながり、それは利益の増大に直結します。経営的な観点からも、人件費の効率化が大きな課題となっていました」と佐々木氏。

映クラ株式会社取締役外食事業部部長の佐々木恵介氏。21歳で映クラに入社後、27年間、飲食事業一筋で勤務する。現在は大阪王将をはじめ、居酒屋、焼肉など同社の外食事業全体を統括する。

Airシフトの試験導入ですぐに効果を実感

従来のシフトの組み方は、アナログな手法をとっていた。月末になると「来月の働きたい日を出して」とアルバイトに依頼し、出勤時に紙に書いてもらったり、スマホからメール、LINEなどでシフト希望を提出してもらう。各店の店長はそれらをエクセルの表に転記し、人数が足りない時間、多い時間があれば各人に個別に連絡をとってシフトを調整する。だがそのやり方が、各店舗の店長にとって大きな負担となっていた。

大阪王将 福山川口店の店長を務める下山剛弘氏は、「バラバラなタイミングと方法で提出されるシフトを一元管理するだけでもとても大変でした。1週間分のシフトを作成するのに、3時間ぐらいは毎週かかります。その間、私は料理を作ったり接客ができずに更衣室のパソコンとにらめっこなので、現場を見られないことにも問題を感じていました」と語る。

そんなある日の役員会で、佐々木氏は別の役員から、「リクルートがAirシフトというシフト管理サービスを提供している」と聞いた。それまでにもいくつかのシフト管理サービスを試験的に使っていたが、管理画面の操作がわかりづらかったり、スタッフ側の入力がやりにくかったりと、本格導入するには至っていなかった。

「ところが試しにAirシフトを1カ月間、大阪王将の4店舗で試験導入してみたところ、『これはいい』とすぐに効果を実感したんです。パソコン操作が苦手な社員でも、マニュアルを読めば、すぐに使いこなせるようになりました」とシステム導入時のことを佐々木氏は振り返る。

「大阪王将 福山川口店」店長の下山剛弘氏。福山市出身。16年前に映クラに入社後、複数の大阪王将店舗の店長を務める。得意料理はレバニラ炒めと青椒肉絲。その2つを指名で食べに来るお客さんが多数いる。

シフト作成にかかっていた時間が半減

Airシフトの導入によってなぜシフト管理が効率化され、大きな効果を実感できたのか。その理由は、シフト希望の収集とシフトの作成、配布までのすべてを、一つのサービス上で完結できるようになったことにある。Airシフトではカレンダーで設定した日程になると、登録したスタッフに自動的にシフト提出を依頼するメールが送られる。提出日の締め切りが過ぎると、シフトを未提出のスタッフには自動的にリマインドが行われるため、店長が煩わしい催促の連絡をする必要がない。

集まったシフト希望は画面上に一覧表示されるので、これまでのように手作業で転記する時間的コストと、入力間違いのミスはゼロになった。シフトを作成する画面では、日にち・時間帯ごとに各スタッフの過不足がひと目でわかるので、効率的なシフト配置が可能となる。日ごとにかかる人件費も自動的に計算・表示されることから、リアルタイムの店舗経営指標となる。突然のスタッフの病欠などの際にも、サービス上にあるチャットツールを使えば代わりに働いてくれる人を募集できる。

「僕もそれほどパソコン操作が得意なほうではないので、最初はちょっと心配だったんですが、画面も操作もすごくわかりやすくて、すぐに慣れました。以前に比べてシフト作成にかかる手間も半分以下になり、現場を見る時間が増えたのが嬉しいですね。アルバイト・パートさんは同じリクルートが提供する『シフトボード』というスマートフォンのアプリを操作してシフトを提出・確認しているのですが、デジタル世代の若い彼ら、彼女らはあっという間に使いこなしています」と下山店長。

わかりやすい配色とシンプルなユーザーインタフェースにより、使いやすさと機能性を追求した『Airシフト』。飲食店経営で生産性の重要指標である人時売上高などの数値も自動で算出してくれる。

Airシフトの試験導入の効果の高さから、同社はすぐに16店舗での導入を決定。他のシフト管理サービスに比べ、スタッフ1人あたり月110円という圧倒的な低コストであることも導入を後押しした。複数店舗で数百人のスタッフが利用する大型導入だったことから、リクルートも映クラを重点的にサポートすることを決め、Airシフトから集められる勤務データをもとにした経営改善の提案を行った。その提案を店舗経営に生かした映クラでは、本格導入から1年後の現在、シフト作りの効率化だけにとどまらない大きな経営面での改善効果が生まれているという。

佐々木氏は、こう話す。

「以前は各店の店長が、それまでの経験で、感覚的にスタッフのシフトを組んできました。でも実際にリクルートさんの協力で、時間帯ごとにスタッフの人数と売上の数字をきっちりデータで取ってみると、無駄な人件費がかかっていたことが一目瞭然となったんです」

スタッフのやる気も上昇、16年間で最高の売上を達成

福山川口店店長の下山氏は、Airシフトの導入により時間帯ごとに適正な人員で働くようになったことが、スタッフのモチベーション向上を促していると語った。

「従業員がヒマそうな飲食店というのは、活気も失われていきますし、従業員同士が無駄話をしたりして、お客さんへのサービスも低下していきます。その結果、少人数で忙しく働いている店より、売上が落ちていくんです。人員削減を聞いたスタッフのなかには『忙しくなるのは嫌だ』と感じた人も最初はいたかもしれません。しかし『利益が上がった分は、みんなの時給のアップに必ず反映させる。だから一生懸命働いて、いい店にしていこう』と呼びかけた結果、みんなのやる気がどんどん上がっていったんです」

従業員の動きが店舗のパフォーマンスと売上に深く関わる飲食業。Airシフトの導入で削減した無駄なコストや工数は、料理の味や接客のクオリティアップにつながるはず。

映クラでは、Airシフトの導入による人件費の改善と同時に、自動配膳ロボットの導入と、店舗ごとの利益率向上に見合ったインセンティブ(賞与)の施策を行った。その結果、昨年度に比べて4%もの収益改善効果がみられたという。

飲食店をはじめとする地域に密着したサービスを提供する映クラは、Airシフトの導入によってさらなる飛躍の時を迎えようとしている。同社の取り組みは、多数のスタッフを抱え、その人材活用に悩む多くの企業の参考となるに違いない。