昨今の新卒採用状況と中小企業を取り巻く環境
【大熊】現代の新卒採用で中小企業が抱える課題は何でしょうか。
【小嶺】新卒学生の取り合い状態になっていて、募集をかけても人が集まらないということです。大企業が新卒採用を増やす一方で、18歳人口は減り続けていますから。また、何社か内定をもらうと、親に意見を求める若者が多いことも課題ですね。
【大熊】今はいろいろ情報を手に入れられる時代ですが、いくら情報があっても自分が何をやりたいのか分かっていないと、どこに入っていいか決められないというわけですね。だから結局、親も知っているような名前に頼って有名企業に行ってしまう。
【小嶺】そうです。大熊さんは就職活動はどんな形でしておられましたか。
【大熊】私の場合は「アナウンサーになりたい」という思いが先にあって、東京のテレビ局を順番に受けていったら、運よくテレビ朝日に受かったんです。1987年の入社で、まさにバブルの真っ最中でした。企業はどこもたくさんの人を採っていて、学生は選び放題みたいな感じがありましたね。
小嶺さんは就活する学生たちをご覧になって、以前と比べて変わったと感じられますか。
【小嶺】大きく変わっていますね。昔とは学生に刺さる言葉も変わってきていて、例えば「出世できる」などという話をしても、あまり興味を示しません。
【大熊】今の学生はきっと、プライベートを犠牲にしてまで働きたいとは思っていない人が多いんでしょうね。
【小嶺】今は「個性を認めてもらえる」「自分で仕事を選べて強制されない」といったことが重視されています。
【大熊】やりたい仕事を選べる職場があれば、確かにそれが一番ですよね。
【小嶺】問題はそういう厳しい状況なのに、多くの中小企業が昔のやり方をそのまま続けていることです。それで「こんなにお金をかけているのに、なぜ人が集まらないんだ」と紹介会社に文句を言っている。企業説明会でも、募集要項に書いてあるようなことを延々と話し続ける会社があります。学生はその会社についてネットで調べているので、説明会では働いている人の実際の様子など、ネットで分からないようなことを知りたいんです。
【大熊】確かにその会社に入って、本当に自分のやりたいことができるのかどうか、「この会社に入ると、1年目はこうで、2年目はこう」といった、実態を知りたいですよね。
企業と学生のミスマッチをなくすKimete®のツール
【小嶺】大熊さんは今の状況に対して、中小企業は何を大切にすべきだとお考えですか。
【大熊】やはり「人」を中心に考えることが大事なのではないでしょうか。例えば適材適所で人材を配置して、一人一人の能力が最大限生かせるようにできれば、企業として伸びていくだろうという気がします。
【小嶺】私も同意です。実は、上司と部下の相性を予測したり、その人が自社に合う人材かどうかを見分けたりするツールがあるんです。
【大熊】そんなことができるんですか?
【小嶺】武蔵野の代表取締役社長の小山昇が、適性検査の独特の読み解き方をするんです。適性検査の数値を見て、「この数字とこの数字がこういう人は営業に向いている」というように、経営者目線で検査結果を分析するんですね。当社はその小山昇の判定メソッドをAIに搭載した「ミルメ」というKimete®ならではのツールを開発し、会員さまに提供しています。
もう一つ適性検査ツールがあるのですが、大学との共同研究で、400人のデータを使って、「3年後に離職していそうな人は誰か」を鑑定させたら、400人のうち40人を選び、その40人全員が3年後には会社を辞めていました。
【大熊】すごい。的中率100%ですか。
【小嶺】「マネジャーはこの新人をどう扱ったらいいのか」といったアドバイスもできますし、同じ部署に相性がいい人同士を組み合わせて配置することで、退職率も下がるんです。
【大熊】人間関係のストレスがないことが一番ですからね。
【小嶺】はい、われわれがコンサルティングやツールの導入支援をしたお客さまにも、そこが一番喜ばれています。
Kimete®が提供する実績に基づく新卒採用支援
【大熊】Kimete®は他にも、どんなサポートをしているんですか?
【小嶺】基本的にはこれまで武蔵野で行ってきた採用活動のノウハウの提供です。自社で培った採用ノウハウをそのまま伝授する採用コンサルは珍しいですね。導入した企業さまでも、「80%だった内定辞退率が9%まで下がった」「3年以内の退職率が41%から6%に減った」という効果が表れています。
また、会員企業さまには武蔵野のインターンシップの様子も公開しています。
【大熊】それもまた珍しいですね。
【小嶺】インターンシップでありがちなのが、自社の仕事を経験させようとすることです。その内容が魅力的であればいいのですが、中小企業の場合、残念ながら必ずしもそうとも限らない。
【大熊】では、どうすればいいでしょう。
【小嶺】例えば「会社のCMを制作する」といった、ゲーム的なカリキュラムを行います。制作の過程では武蔵野のスタッフがきっちりフォローして、学生を名前で呼んだり、懇親会を開いたりして、「この人たちと働きたい」という雰囲気を作っていく。会員企業さまにはその様子をお見せし、希望する場合はマニュアルもお渡ししています。
また、Kimete®では会員企業さまに個別で学生の紹介もしています。紹介した学生が入社した後、3年以内の定着率は94%もあるんです。
【大熊】それは高いですね。紹介する学生はどうやって見つけているんですか。
【小嶺】学生向け就職応援・支援サービス「就活カレッジkimete」を運営しているので、そこで接点のあった学生を紹介しています。また武蔵野でインターンをしていたり、就職活動で武蔵野に来た学生を紹介することもあります。
【大熊】なるほど。信頼できる人材だけを紹介しているんですね。反対に、企業が学生に信用してもらうには、何が重要なんでしょうか?
【小嶺】やはり世代が違う学生たちとも、フランクな関係を築くことです。誰だって好きな子がいたら、その子の気持ちをつかむために自分を変えようとするでしょう。企業も同じで、事業はもちろん採用でも、相手に合わせて変化しないといけないんです。
【大熊】そうやって変化できた企業が「選ぶ側」から「選ばれる側」になっていくんでしょうね。
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