ハイブリッドワークの中で求められる環境とは
――働き方や働く人の意識の変化について、どのような点に注目していますか。
【水野】国内の労働人口が減少し、雇用の流動化も進む中、企業と従業員の関係がフラット化してきています。企業は優秀な人材を確保するため、これまで以上に“選ばれる企業”になることを意識しなければなりません。例えば非対面でパフォーマンス高く働ける仕組みや自ら学び成長できる環境を整備できている企業はまだ少ない。そうした課題を解決し、選ばれる企業になることは人的資本経営における持続的な企業価値向上にとっても欠かせません。
――そうした中で、経営層にはどんな意識が求められると思いますか。
【水野】従来の働き方や職場環境を改善、補正するのではなく、根本から刷新する意識を持つ必要があると感じます。これまでの制度やツールを個々に改めるのではなく、ハイブリッドワークを基本に働き方全体を再定義することが求められている。まさにそうした思いからNTTデータが掲げているのが「Work Re:Invention」というコンセプトであり、BXOではそれに基づいてデジタルとリアルを融合したこれからの働き方を提案しています。
【高岡】コミュニケーションの在り方などが変わる中で、いかに従業員体験を向上させるか。これも企業競争力に直結する経営課題です。当社の分析によれば、ハイブリッドワークが浸透する今、クリエーティブな業務に集中できる環境、孤独感を解消してチームワークを発揮できる環境、社内のナレッジを効率的に活用できる環境などが重視されるようになっています。生成AIをはじめとする最新技術を用いて、そうした環境の実現を支えていくことは当社の使命でもあると考えています。
【水野】テクノロジーの進化により、現在、非対面でも対面と同等かそれ以上のコミュニケーション、情報交換が可能になってきています。技術を上手に活用し、従業員の心理的安全性を確保しながら、付加価値の高い業務にシフトできる環境づくりに貢献する。これは、当社が4月から展開している「BXO Hybrid Workspace for Employee Experience」の目的に他なりません。
生成AIを活用したパーソナルアシスタントも
――具体的にはどのようなソリューションがあるのでしょうか。
【高岡】「XR(※)」「パーソナルアシスタント」「ウェルビーイング」の3カテゴリーから成り、サービスラインアップを随時拡充しています。ニーズの高いパーソナルアシスタントについては、人事データや業務ドキュメント、社内規定、ウェブ上の公開情報などを一元的に検索できる仕組みを開発中です。ユーザーの意図に沿って生成AIが自然な回答をするのが特徴で、先輩や同僚、社外の有識者に気軽に質問する感覚で利用できる仕組みを目指しています。
【水野】分散した膨大なデータを横断的に検索できるのは、テクノロジーを活用しているからこそ。対面でやりとりするよりも社内でサイロ化しているナレッジを効率的に利用でき、人は付加価値の高い業務に集中できます。
――ウェルビーイングの分野には、どんなサービスがありますか。
【高岡】1on1ミーティングを実施する企業が増える中で、それを支援する「Kakeai」というソリューションが企業から関心を集めています。従業員が事前に話したいトピックや上司に期待する対応を選択することで、双方にとってスムーズかつ充実したミーティングを実現する。加えて、1on1の状況や実施回数を経営者や人事部門も容易に確認でき、組織全体にメリットを提供する仕組みとなっています。
【水野】現在の1on1ミーティングは、従来の個人面談とは異なるコミュニケーションだと私たちは捉えています。従業員を管理するためのものではなく、考えや希望を引き出すまさに「掛け合い」の場。従業員の満足度や心理的安全性を高める道具としてこのサービスを使ってほしいと考えています。
――各種サービスの提供に当たって大事にしていることを教えてください。
【高岡】一口に「これからの働き方」といっても、その形は企業によってさまざま。絶対的な正解はなく、経営陣、人事部門、現場のマネジャーがそれぞれ異なるイメージを持っていることもあります。そうした中で意思統一をサポートし、最適な仕組みを提案することが私たちの役割。きめ細かくヒアリングをする一方で、お客さまの現状を客観的に見つめ、課題解決に向けて伴走することを心掛けています。
――最後にBXOのサービスに関心を持つ企業にメッセージをお願いします。
【水野】冒頭お話ししたとおり、企業と従業員の関係性が変化している現在、「何か手を打たなければ」と多くの経営者、マネジャーの方々が危機感をお持ちです。その中で私たちは、「しかし具体策が見つからない」というお客さまが一歩踏み出すお手伝いをしていきたい。個々のサービスを提供するというより、それらを使って何を実現するかを共に考えることが仕事だと思っています。グランドデザインの策定から仕組みの運用、最適化まで継続的にサポートしていきますので、どんなことでもご相談ください。
※クロスリアリティ。VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)といった先端技術の総称。