商船三井にしかできない地球環境保全を
――どのような目標を定めていますか。
【渡邉】当社グループでは、グループビジョン「海運業を中心に様々な社会インフラ事業を展開し、環境保全を始めとした変化する社会のニーズに技術とサービスの進化で挑む。商船三井は全てのステークホルダーに新たな価値を届け、グローバルに成長する強くしなやかな企業グループを目指します。」の実現を通じて、社会と共に持続的な発展を目指しています。その推進に当たって「海洋・地球環境の保全」など5項目の「サステナビリティ課題」(マテリアリティ)を特定しており、2023年度にスタートした経営計画「BLUE ACTION 2035」においてもこれらの課題を中心的な取り組みに位置付けています。
また、環境課題に対する具体的なビジョン・戦略として「商船三井グループ 環境ビジョン2.2」を掲げ、とりわけ喫緊の対応が求められる気候変動対策においては、2050年までのネットゼロ・エミッション達成を目指します。
この「環境ビジョン2.2」は、2021年に策定した「環境ビジョン2.1」をアップグレードする形で、2023年4月に発表しました。
「2.1」のもとでは、2022年のダボス会議において国内企業として初めてファースト・ムーバーズ・コアリションに参画し、海運の脱炭素化に取り組むことを改めて表明するなど、大きな成果を上げてきました。「2.2」では、ネットゼロ・エミッション達成に向けたKPIやマイルストーンを追加・更新し、より具体的なGHG排出削減の道筋を描くことで、着実に計画を前進させていきます。
――具体的な活動について教えてください。
【渡邉】世界中の海を航行する海運業としてGHG排出削減に努め、ネットゼロ・エミッション達成へと向かうのは当然のことです。当社グループは、低・脱炭素船舶燃料の導入や風力活用を主とした省エネ技術の導入などを通じ、自社からのGHG排出削減に取り組むとともに、上流から下流までのクリーンエネルギーのサプライチェーンに貢献する「海洋クリーンエネルギー事業」を通じて、社会のGHG排出削減にも貢献し、2050年までのネットゼロ・エミッション達成を目指します。
また、これからも変わり続ける各種ルールに対して迅速に対応しつつ、当社だからこそできる積極的な取り組みも打ち出していきたいと考えています。例えば、海洋マイクロプラスチック・海洋ごみの回収と調査といった試みは、まさに私たちにしかできない環境保全活動でしょう。
こうした形でサステナビリティに貢献できる企業であるという強みを、ステークホルダーや将来当社の社員となってくれる人材のエンゲージメント向上に生かし、皆さんがワクワクしてくれるようなアクションを社会に根付かせていきたいと考えています。
海の多彩な表情を皆さんと分かち合いたい
――募集テーマは「海は、ひとつ」。どんな作品を期待しますか。
【渡邉】30年の歴史を重ねてきた環境フォト・コンテストの輪の中に当社もいるというのは、とても意味があることだと受け止めています。海運事業、海洋事業、洋上風力発電関連事業などはBtoBの産業のため、一般の方々と直接接する機会は多くはありません。コンテストへの参加は広く社会に向けて、また社員やその家族に対しても、地球環境保全、サステナビリティと向き合う当社の一面を印象付ける機会になると思います。
今年5月、日本で建造された船舶の中から技術的・芸術的・社会的に優れた船を選考する「シップ・オブ・ザ・イヤー2022」において、当社が保有・運航する世界初のウインドチャレンジャー(硬翼帆式風力推進装置)搭載ばら積み船「松風丸」が大賞を、日本初のLNG燃料フェリー「さんふらわあ くれない」が大型客船部門賞を受賞しました。大幅なGHG排出量の削減、環境負荷低減、モーダルシフトなどが評価されダブル受賞に至ったものです。海を起点に多様なニーズに応え、生活に欠かせない「グローバルな社会インフラ企業」へと当社がトランスフォームしていく中で、募集テーマ「海は、ひとつ」をきっかけに、海の恵みや歴史に思いをはせていただければうれしく思います。
皆さんそれぞれに、「海」と聞いて思い浮かぶ記憶、風景などがあるでしょう。私自身も例えばアフリカを担当していたころにはケニアのモンバサで見た海、セネガルのダカールで見た海など、世界には多彩な表情の海があることを肌で感じてきました。それらは一つにつながっていて、自由に行き来するようになった人間に、さまざまな新しい歴史をもたらす舞台ともなりました。前回コンテストの商船三井賞優秀賞「海の幸せを願う」、佳作の「たらい舟漁」「ヒカリ指す方へ」の3点とも、異なる海の表情を見事に、美しく切り取っていました。今回もそうした作品を通じて、環境への思いを分かち合えたらと思っています。
●募集テーマ:海は、ひとつ
●前回の入賞作品