紙のサステナビリティ性が注目されている
――力を入れている事業は。
【唐澤】総合商社として「地球上のあらゆるもの」を取り扱う中で、SDGs達成に貢献するビジネスを加速させています。私が所属する「住生活カンパニー」は、住まいと暮らしを中心とした生活消費分野を対象とするセグメントです。北米建材、紙・パルプなどを手掛ける生活資材部は、アジア・ヨーロッパ・北米・南米で強固なパルプ販売ネットワークを構築。世界最大級のフィンランドの針葉樹パルプメーカー・Metsa Fibre社への出資などで市場での取扱量を拡大し、グローバル・パルプトレーダーとしての地位を確立しています。
昨今の脱プラスチックへと向かう流れにおいては「紙のサステナビリティ性」への注目度がさらに高まっています。当社の近年の動きとしては、2021年9月、フィンランド・Paptic社との資本業務提携に合意。Papticは紙でありながら布のようなしなやかさと強度を持つ木質由来の新素材で、すでに確立された紙のバリューチェーンでリサイクルが可能。伊藤忠グループは日本での独占販売権を有しています。包装資材としての拡販を図り環境負荷軽減に貢献します。
また2023年4月には、イギリス・ウェールズのTranscend Packaging社との資本業務提携に合意しました。同社は持続可能な森林由来の紙・パルプを使用した環境訴求型・脱プラスチック型の食品パッケージ事業を展開しており、当社は原料供給、サプライチェーンマネジメントに関わっています。紙ストローや紙コップのほか、今後はファイバーモールドの開発・販売に注力する方針です。
――環境意識の高いパートナー企業との協業を通じた新素材の用途開拓、普及に積極的です。
【長谷川】2023年6月には、Uber Eats Japanおよび当社100%出資会社(間接保有含む)であるBelongと、フードデリバリー事業におけるサステナビリティ推進に向けた包括的業務提携契約を締結しました。当社の生活消費関連における強みを生かして、フードデリバリー向け梱包材や店舗向け業務用資材を提供します。
また、木材由来で、今後自動車等での産業普及が期待される軽量・高強度の高機能素材に「セルロースナノファイバー(CNF)」があります。産業普及のロードマップを描く中で、まずは嗜好品分野での実用化を図るべく、希少な象牙が多く使用される和楽器分野で箏爪を開発しました。また、出資先の大建工業がCNFの板を使用した床材などの建材開発を進め、試作段階の複合フローリングの実装にも取り組んでいます。今後も商社ネットワークを活用して戦略的に用途拡大を目指すと同時に、まだまだ高価なコストが市場普及の障壁となる中で、サプライヤーとの取り組みを一層加速させて、原料コストを大きく引き下げる思い切った施策を検討しています。CNFを使ったビジネスでサステナビリティを推進していく上では、パートナー企業などの存在が不可欠です。ぜひ、多様なステークホルダーと新しい価値を一緒に提供していきたいと考えています。
写真が、世の中をさらに強く結び付ける
――環境フォト・コンテスト参加の効果を、どう捉えていますか。
【唐澤】生活資材部は紙・パルプ関連ビジネスを川上から川下まで手掛け、世界各地にいる駐在員が調達、販売の両面からパートナー企業を支援できることが強みです。こうした当社のグローバルなビジネスは、広大なネットワークを結び、回し続けていくことで持続可能性に貢献する、そこに大きな価値があるのだと考えています。毎年の環境フォト・コンテストへの参加は、写真を通じて当社の取り組みを世の中の人に知ってもらい、つながる人を増やしていくという意味でも、とても意義深いと捉えています。
【長谷川】私たちはさまざまな「地球のめぐみ」に守られ、生かされている存在です。募集テーマは、素晴らしい「めぐみ」が後世に受け継がれるように社会課題の解決に挑み、社会と共に歩んでいくという当社の思いを表現したものです。あらゆるSDGsの取り組みの発信拠点として本社横に開設した「ITOCHU SDGs STUDIO」、未来を担う子供たちが「遊び」を通してSDGsの考え方を体験できる施設「ITOCHU SDGs STUDIO KIDS PARK」など、サステナビリティとの関わり方を発見するきっかけも提供しています。ビジュアライズされたメッセージは、皆さんに語りかける上で非常に有効なツール。どのような作品が集まるのか、楽しみにお待ちしています。
●募集テーマ:地球のめぐみ
●前回の入賞作品