循環型社会の構築をビジネスで後押し
――サステナビリティ、地球環境保全に関して、どのような取り組みに力を入れていますか。
【佐藤】近年の主な動きとして、「キタムラならでは」のリユース事業の成長があります。600億円規模のリユースマーケットといわれるカメラに加えて、2022年には腕時計、スマホの店舗での買い取りサービスをスタートしました。サステナブルな要素を重視した消費行動が世の中に広がりつつある中で、さらなる支持を得られるものと考えています。また、一部店舗ではブランド品、貴金属の買い取りサービスも展開しています。長年にわたるカメラ買い取りの実績とノウハウを生かして「いいモノを長く使いたい」という時代のニーズに応え、循環型社会の実現に貢献するために、こうした取り組みを順次拡大していく計画です。
脱炭素社会に向けて、2030年までに温室効果ガス排出量(Scope1、2)を実質30%削減(2019年3月期比)、2050年の実質ゼロを目指しています。「カメラのキタムラ」全637店舗のLED化の完了によって省エネ、CO2削減を推進しているほか、使用済みフィルムケース、電池、プリンタのインクカートリッジ回収、現像液の適正な処理を行っています。2023年6月より、全国のレストランやホテルから回収したコルク栓を再生利用した「リサイクル素材でつくったフォトスタンド」を販売中です。アクリル部分についても100%リサイクルアクリルを用いており、高透過率で品質も申し分ありません。
――「5つのマテリアリティ」にある「フォトライフ充実による幸せで豊かな社会への貢献」についてお聞かせください。
【佐藤】「フォトライフ・カンパニー」としての環境活動の一環で、年に2回、フォトコンテストを開催しています。地球環境を意識した応募作品も多く寄せられるようになり、皆さんの意識の高まり、写真を通じてメッセージを発信することの価値を実感しているところです。当社のミッションは「ときを映し、こころと生きる」。地球上に存在する多様な自然や生き物に宿る美しさ、それらに対して人間が抱く「感動」を、写真や動画を通じて共有することが私たちの役割です。感動こそが、環境保全をさらに前進させるための後押しとなるのだと考えています。
「多くの人と分かち合いたい」と思った瞬間を
――環境フォト・コンテストの募集テーマは「写真の力~レンズがとらえた瞬間~」。屋外で行動する機会も増え、撮影する楽しみが広がりそうです。
【佐藤】はい。コロナ禍にあったこの数年、行きたい場所になかなか行けないという状況が続いていましたので、ようやく訪れるチャンスがめぐってきたという方もいらっしゃるでしょう。引き続き周囲に配慮しつつ、ぜひ、写真を思いきり楽しんでいただきたいですね。名所などに限らず、きっと身近な場所にも素晴らしい被写体がたくさんあると思います。若い方、働き盛りの方、年配の方など、世代によっても目を向けるポイントは異なると思いますから、さまざまな視点から写した作品が集まることを期待しています。
――では、応募者に向けてメッセージをお願いします。
【佐藤】写真は、瞬間的な美しさ、はかなさ、過ぎ去りゆく時代性といったものを捉えることができます。眺めることで、いつでも時間も場所も飛び越えて、「あの感動」がよみがえります。例えば前回のカメラのキタムラ賞優秀賞「時化る海」は、低気圧の狭間にのぞいた晴れ間がドラマチックな陰影をつくり、荒波のすさまじさが伝わる一枚です。気候変動の影響を思わせる一方で、自然が生み出す圧倒的な迫力は美しく感動的でもあります。また、花火大会を幻想的でメッセージ性に富んだ作品に仕上げた佳作「希望の光」は、「現実」を写して自身の「内面世界」を表現しています。これも、うまく写真の特徴を引き出した作品です。そして「太陽の環」は、日輪、アオサギがリンクする偶然を、見事な画面構成で収めた力量が素晴らしいと感じて入選作としました。
このように、ファインダー越しだからこそハッと気付かされたこと、自然にしか生み出せないアート、印象的なワンシーンといった、皆さんが「多くの人々と分かち合いたい」と思った瞬間を、それぞれの感性を通じて切り取っていただけたらと思います。
●募集テーマ:写真の力 〜レンズがとらえた瞬間〜
●前回の入賞作品