専門性にITスキルをプラスするのが「リスキリング」の本来の意味
リスキリングとは2018年のダボス会議において提唱された概念で、AIなどのテクノロジーによる産業構造の変化に対応するため、今持っている個人の専門性に新たなスキルを加え、新しい仕事に対応していくことを意味します。したがって、リスキリングには昇給や昇格が伴うのが自然です。
ところが日本では今、そうしたリスキリングの概念が正確には広まっていないように感じます。漠然と「デジタル化の流れに乗るために勉強しなくては」という文脈で捉えている人が多いのではないでしょうか。
それだとDXの必要要素を学習しても、結局は知識を増やすだけに止まってしまいます。本来のリスキリングの趣旨からすれば、実践に結び付かなくては意味がありません。
リスキリングは職務に直結した学習です。現状の専門性にITのスキルをプラスし、その分野のプロとしてレベルアップすることが大事なのです。
別の角度から見てみましょう。あるメーカーが不足気味のIT人材を外部から採用したとします。
しかし、ものづくりについてのノウハウが全くないIT専門家が製造現場に入ってきても、すぐに機能できるわけではありません。むしろ現在の事業についての理解の深い人材がITのスキルを身に付けたとき、速やかにそれを応用して現場の改革を進めることができるのです。
より大切なのはITスキルよりも現在の専門性です。専門性を生かすためには、現場の社員がITスキルを「知る」だけではなく「身に付けて」レベルアップしなくてはいけません。
パーソルイノベーションが提供する「学びのコーチ」は、リスキリングの本来の意味に立ち返り、社員それぞれの専門性をレベルアップしてDXに対応するための手段です。
企業の7割が、新しいスキルを身に付けた社員の昇給や昇格を検討
「学びのコーチ」には「企業の目的に合わせて最適化したカリキュラム設計を行う」「学習に伴走するコーチをつけることで習得を加速し、修了率を高める」という二つの大きな特徴があります。
カリキュラム設定では、細分化されたスキル定義に基づいて、学習者の現在のスキルと新たな業務に必要なスキルとの差分を明らかにし、「3カ月で現状に何を足していくのか」を決めていきます。なんとなくDXを学ぶのではなく、業務プロセスに即して目指すべき到達レベルを定義し、短期間で効果的に習得するのです。
期間中はキャリアコーチとテクニカルコーチが受講者をサポートします。
教材としてはUdemyの法人向け講座とマイクロソフトのデジタルスキル認定資格教材を採用していますが、学習においては知識習得よりも実践を重視します。
ただ、アウトプットを単独で行うのは難しいため、基本5人がワンチームとなるピア・ラーニング(仲間同士で学び合う学習)を定期的に実施、そこに各分野の専門家であるテクニカルコーチがついて議論をリードします。テクニカルコーチはまた、不明点へのQ&A対応やアドバイスを通じて受講者の理解を助けます。
一方、キャリアコーチは講習期間の最初にWEB上で一対一で学習者と話し合い、学びの動機を明らかにし、受講者のメンタル面をサポートします。これはキャリアアドバイザーによる転職支援スキームを応用したメソッドで、学習継続率を大きく向上させることがわかっています。
アンケート調査によれば、リスキリングで企業が求めるスキルには、ITのプロジェクトマネジメント、データ活用、クラウドスキルなどがあり、「リスキリングにより新しいスキルを身に付けた社員に対して、昇給や昇格を検討する」企業もおよそ7割に達しました。
私たちは日本の産業界にこうした「学びの文化」が広がっていくことが、日本社会全体のデジタルリテラシーを強化し、競争力を高めると確信しています。
ネット環境の進化で大きく改善されたのが通信教育の学習環境だ。動画学習の普及で時間や場所の制約なく一流講師の授業が受けられるようになり、最近ではコーチングを加えることで継続率の向上や学習の定着を図るサービスも増えている。丁寧なコーチングを売り物とする「学びのコーチ」がそれで、3カ月間の講座の継続率は99%、クラウド資格の合格率も77%に上るという。リスキリングを通じた企業のDX推進に一役買いそうだ。