改ざん耐性が高くシステムダウンにも強い
商店街や自治体が発行する商品券をデジタル化する動きが出てきている。背景の一つとしてあるのは、電子マネー、キャッシュレス決済の普及だ。
「消費者側のデジタル化が進んでも、それが地域の店舗などの売り上げにつながらない。地域活性化が目的のプレミアム商品券をスマホなどで使えるようにして、そのギャップを解消したいという声は増えています」とエバーコネクトの福田氏は言う。そして同社の吉田氏は「デジタル化によって、例えば景品抽選会やウォークラリーなどのイベントと商品券を絡めることも可能になる。そうした利点もあります」と付け加える。
目黒区商店街連合会との連携では、デジタル商品券とスマホを持っていない人のために紙商品券の両方を発行。紙商品券にはQRコード(※)を印刷し、店舗がそれを読み込むことで簡単に利用額を集計できるようにした。結果、このプレミアム商品券は非常に好評で、特に店舗からは「手作業による集計がなく、振り込みまで自動で行われるので助かる」「デジタル商品券への対応も、お客さまが読み込むQRコードを設置するだけでとても簡単」などの声が聞かれたという。
※「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
では、肝心のブロックチェーンを活用するメリットはどこにあるのか――。その第一は“改ざん耐性”の高さだ。
「文字どおりブロックと呼ばれるデータの塊がチェーンのようにつながっているため、情報の一部分を改ざんすることが事実上できません。そのため、正確な情報が維持され、不正利用も抑えることができるのです」(吉田氏)
もともとブロックチェーンは、公明に記録を残しながら、“価値を移転、共有”するためにつくられた仕組みである。なので、セキュリティー確保のために大掛かりなシステムを構築する必要がない。さらに複数のコンピューターでデータを分散管理するので、システムダウンに強いのも特徴だ。加えてエバーコネクトは外部から勝手にネットワーク内に入れないパーミッション型の運用を採用し、安全性を高めている。
ユニオン・テクノロジーの奥山氏は「システム構築や事務作業のコスト軽減に貢献するブロックチェーンは、今後一気に広がりを見せる可能性がある。当社としてもその技術を吸収し、システム開発やお客さまへの提案に生かしていきたい」と言う。
また、同社の金田氏も「今回、エバーコネクトとの協業で、ブロックチェーン関連のアプリ開発のノウハウや流れを知ることができたのは大きな経験。技術面では電子データに原本性を持たせることができるという点がやはりポイントで、従来デジタルの世界でできなかったことが可能になると実感した」と語った。
人のつながりを分析し最適なサービスの提供を
実際、エバーコネクトはすでに独自の取り組みを始めている。その一つが国境を越えてデジタルチケットをシェアできるサービスの開発だ。
「世界にはさまざまな要因で十分な食べ物が得られない人が存在します。そうした人たちに向け、日本から現地のレストランなどで使える食事チケットを届ける仕組みを開発し、現在、ポーランドで実証試験中です。物資による支援も重要ですが、ブロックチェーンを使えば安心、安全に国境を越えて価値を移転でき、保管や配布の手間もかからない。さらに弊社が採用しているStripeの技術を使うことで、価値の移転と国際決済とを一つにしたこれまでにない支援や寄付のプラットフォームをつくれると考えています」と吉田氏は説明する。
エバーコネクトの根本にあるのは、“技術によって人と人をつなぎ、より良い社会づくりや人々の幸福に貢献したい”との思いだ。ブロックチェーンは、それを実現するための信頼性の高い手段というわけである。
「私たちは、ブロックチェーンを使った価値の購入、シェア、利用といった行動を分析することで、個人のウェルビーイングの値や個人間のつながりの太さを測れると考えています。それを基にそれぞれに適した情報やサービスを提供することで、新たな価値の購入、シェア、利用を創出することができる」と福田氏。吉田氏も「そうした循環を生み出すことで、個々人のウェルビーイングを高めるサポートをしていきたい」と続ける。
技術の使い道は、デジタル商品券やチケットなどにとどまらない。奥山氏は「ユニオン・テクノロジーとエバーコネクトとの協業で、エンタメ関連のマーケットプレイスの立ち上げを計画している」と抱負を語る。ブロックチェーンは、多様なデジタルシステム、デジタルサービスの信頼性や安全性を高める新たな基盤技術なのである。
2017年の創業以来、イノベーティブな事業を展開するエバーコネクト。そのグローバルな開発体制も見逃せない強みだ。技術動向をいち早くキャッチするため、社内公用語は英語。日本、米国、ブラジルの3カ国に拠点を置き、ブラジル出身のエンジニア、ウンベルト・フェヘイラ氏を責任者として24時間体制で開発を推進している。
「今後も、ユーザーがわくわくするようなプラットフォームを提供していきたい」と吉田氏は言う。透明性や安全性、効率性の高いデジタルサービスを実現したいと考える企業や自治体にとって、エバーコネクトは頼りになるパートナーとなりそうだ。