「青い海から人々の毎日を支え、豊かな未来をひらきます」を企業理念として掲げる商船三井グループ。グローバルな事業を展開する同社らしいダイナミックな環境問題への取り組み、背景にある海への強い思い、そしてサステナブルな活動における環境フォト・コンテストの位置付けなどを、代表取締役副社長執行役員の田中利明さんに聞いた。

グローバルな枠組みの「その先」を目指す

――どのような目標を定めているのでしょうか。

株式会社商船三井 代表取締役 副社長執行役員 田中利明さん

【田中】サステナビリティに関連する課題の中でも、環境は最も重要視している領域です。1997年の京都議定書の採択をはじめ、世界の潮流を読み解き、環境問題解決に貢献するための取り組みを着実に拡大させてきました。それを一段と加速するために策定した「商船三井グループ環境ビジョン」も改訂を重ねて進化しており、現在「商船三井グループ環境ビジョン2.1」を推進しています。

船舶は世界中を往来するため、環境規制にもグローバルな枠組みが求められます。当社グループは、温室効果ガス(GHG)排出抑制策を検討するIMO(国際海事機関)が定める規制を遵守するにとどまらず、その先を見据えた「2050年までにグループ全体でのネットゼロ・エミッション達成」を目指しています。このビジョンを実現するために、「クリーン代替燃料の導入」「さらなる省エネ技術の導入」「効率運航の深度化」「ネットゼロを可能にするビジネスモデル構築」「グループ総力を挙げた低・脱炭素事業拡大」の5つの戦略を設定しています。

――具体的な取り組みについて教えてください。

【田中】当社グループにおけるGHG排出量削減に当たり、船舶の燃料としてアンモニアや水素などの使用に向けた取り組みを進めているほか、風力も活用しています。また、環境への取り組みを自社だけにとどめず、世界的な視野を持って海運業界全体をリードしたいとの思いから、業界団体や関係省庁を通じて脱炭素化に向けたグローバルなイニシアチブや、ルールづくりにも積極的に関与しています。2022年に開かれたダボス会議(世界経済フォーラム主催)においては、脱炭素技術の需要喚起を目的に設立されたファースト・ムーバーズ・コアリションに日本企業として初めて参画しました。さらに、アンモニアなどのクリーンエネルギーのサプライチェーン構築プロジェクトを後押しするなど、海洋クリーンエネルギー事業へのトランスフォーメーションに挑みます。また、インドネシアでは、CO2を取り込んで炭素を蓄えるマングローブの再生・保全プロジェクトも進行中です。マングローブは気候変動の緩和・適応対策として重要なだけでなく、生物多様性の保全にも大きく寄与します。将来的にはマングローブ植林と水産業を組み合わせた持続可能な水産養殖を導入し、地域住民の生活向上にも貢献していきます。

インドネシアではマングローブの再生・保全プロジェクトが進行中

海の恵みや大切さを考える機会を提供したい

――環境フォト・コンテスト参加の手応えはいかがでしょうか。

【田中】1729点もの作品をお寄せいただき、さまざまな「海」、そこに込められた撮影者の気持ちに触れることができました。歴史上、海は経済・食・生態系・青春・伝統・信仰・未来など、私たちに生きる糧や希望をもたらし、また祈りを捧げる場であり続けています。水平線のかなたまで続く海、見守るように巨岩の上に立つ鳥居を写した優秀賞「海の幸せを願う」は、海を敬い、海と共に生きる人々の気持ちを表しているように感じます。安全な航海への祈り、自然の恐ろしさや美しさに対する敬虔けいけんの念は全世界共通のものでしょう。まさに地球を「ひとつ」につなぐ海に思いをはせることのできる作品です。「海は、ひとつ」という募集テーマを表現した作品を通じて、海洋環境の汚染もその保全も、国境を越えた「ひとつの海の問題」であり、同時に「一人一人の生活に直結する問題」であるという気づきが生まれてほしいと思います。

2023年優秀賞「海の幸せを願う」江郷 透さん
2023年佳作1「たらい舟漁」若杉 元さん
2023年佳作2「ヒカリ指す方へ」西岡尚央さん

――今後、力を入れていくことは。

【田中】海運業はBtoBの産業ですから、生活者の皆さまが私たちの事業を直接目にする機会は限られているかもしれません。環境フォト・コンテストへの参加も、生活に欠かせない社会インフラである海運業について関心を高めていただく、そして海の恵み、大切さについて考えていただく一つのきっかけになればと期待しています。

環境問題対策の基軸である「商船三井グループ環境ビジョン2.1」、当社グループが事業を通じて優先的に取り組むべき社会課題「サステナビリティ課題(マテリアリティ)」を特定し、目標・KPI・アクションプランを設定した「MOL Sustainability Plan」。これらの活動を「感じてもらう」ために、サステナブルアクションを「BLUE ACTION MOL」のタイトルの下、ウェブサイトで情報を公開しています。困難にも思える課題にチャレンジしていく当社グループの姿を、ぜひ多くの皆さまにご覧いただけたらと思います。