青い地球がずっと存在し続けるように――。そんな願いを込めて、旭硝子財団では研究助成や、地球環境国際賞「ブループラネット賞」による顕彰を行っている。顕彰事業部長の田沼敏弘さんは、環境フォト・コンテストへの参加を通じて「多くの方が当財団の活動に共鳴してくださっていることを実感している」と語る。

ブータン王国王女殿下が第4代国王名代として参加。3年ぶりの表彰式典

――2022年は、3年ぶりにブループラネット賞表彰式典が開かれました。

公益財団法人旭硝子財団 顕彰事業部長 理学博士 田沼敏弘さん

【田沼】財団創設30周年の節目でもありましたので、8月に記念シンポジウム、そして10月には、新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催できなかった2020年、2021年のブループラネット賞受賞者もお招きして表彰式典・講演会を実施しました。2022年の受賞者は、米国のスティーブ・カーペンタ―教授と、国民総幸福量(Gross National Happiness:GNH)という開発哲学を提起したことで知られるジグミ・シンゲ・ワンチュク第4代ブータン王国国王陛下。その名代としてソナム・デチャン・ワンチュクブータン王国王女殿下が来日されたこともあって、例年以上に華やかで、盛大な会を催すことができました。ブループラネット賞の存在を世の中に広く知っていただくきっかけにもなったと感じますし、こうして再びみなさんとお会いして交流する機会を持てたことを、本当にうれしく思います。

旭硝子財団は地球サミットが開催された1992年、地球環境問題の解決へ向けた研究や活動で著しい貢献をした個人、組織を顕彰する「ブループラネット賞」を創設しました。この賞の名称は、人類で初めて宇宙から地球を眺めた宇宙飛行士・ガガーリン氏の「地球は青かった」という言葉にちなんで名付けたものです。地球環境の保全は、人類に突きつけられた重要課題の一つです。素晴らしい業績をあげた受賞者に心から敬意を表し、さらなるご活躍を期待するとともに、一人でも多くの方が地球環境問題を自分ごととして捉え、それぞれの立場でできることに取り組んでもらえたら――。そうして、人類が真の豊かさを享受できる新たな社会、文明の創造に寄与したいとの願いから始まったものです。

2022年の講演会には、2022年受賞者に加えて2020年、2021年受賞者も来場した

たくさんの方々がテーマに共鳴してくれている

――メッセージの発信に注力されている印象です。

【田沼】2022年は、東京、大阪の複数の鉄道路線における車内ビジョンでの動画広告、渋谷109フォーラムビジョンでの30秒動画広告のほか、衛星放送で全13回のミニ番組を放映しました。2023年は続編の制作も検討しています。こうした積極的な広報活動の成果として、周囲から「見ましたよ」と声をかけてもらえることが増えましたし、若い層からの反響にも手応えを感じています。

そして環境フォト・コンテストについては、身の回りの自然に改めて目を向け、美しさや大切さを再認識する契機となる、そんな「何かを考えさせる」作品が届くことを期待して参加しました。第29回コンテストでは当財団の募集テーマ「自然の中にある幸福」に対して、参加企業で最多の1974点もの作品が寄せられました。実にたくさんの方が「自然を通じて人間の幸福を考えること」を意識し、共鳴してくださったことの現れだと受け止めています。

優秀賞作品「春の散歩道」は、咲き乱れる桜、長い階段を下りてくる幼い子供たちの様子が目を引きます。1000年を超える歴史を持つ大きな古墳と、生まれて数年の小さな子供たちの対比が、自然の中で見事に描かれていることから選定しました。青い空を背景にした満開の桜は、未来への希望に満ちあふれているようです。写真を目にした職員の中には、心を動かされて「思わず目頭が熱くなった」という感想が出たり、家族がコンテストに応募した人もいました。選定には全職員が関わることができますので、互いの意見を交換するなど、コミュニケーションが生まれる場にもなっていたようです。

募集テーマ設定の出発点は、あるブループラネット賞受賞者が語った「美しい自然に接すると、私たちは家に帰ったような幸福感を得られる」との言葉です。多様な生態系の恩恵を受けて暮らしている私たちは、自然との触れ合いの中で、どんな幸せを感じ取っているのか。優秀賞はまさに、それを体現する一枚だと思います。

2023年優秀賞「春の散歩道」中根英治さん
2023年佳作1「春」門林泰志郎さん
2023年佳作2「ツリークライミングは楽しいな」白木文枝さん

――今後についてお聞かせください。

【田沼】世界には、さまざまな分野、手法で環境問題と向き合っている人々がいます。当財団は今後も地球環境問題の解決に向けて貢献している個人、団体に対する顕彰活動に取り組んでいきます。そして、人々が環境問題を自分ごととして捉え、自分なりの一歩を踏み出す、そのお手伝いができればと考えています。