1985年にリアルタイム中古車オークションを開始し、現在は多様な商材の流通支援やプラットフォームづくりを担うオークネット。同社のグループ会社で新規事業開発や戦略コンサルティングを手掛けるストラテジックインサイトが運営する二次流通(中古品流通)支援サービス「Selloop(セループ)」が、メーカーや小売り、商社などから注目を集めている。なぜ今、リユース市場に関心を持つ企業が増えているのか。それがいかに企業を変革するのか──。オークネットの藤原啓介氏、ストラテジックインサイトの藤本隆介氏に聞いた。
藤原啓介(ふじわら・けいすけ)
株式会社オークネット
商品サービス戦略室
General Manager

「循環型社会実現への要請が強まる今、消費者は企業が中古品や不要品をどのように扱っているのかにも関心を向け始めています。伴って、メーカーや小売業も、二次流通の存在を意識するようになっている。それに無関心でいることは、経営リスクになり得るとの考えも出てきています」

藤原氏はそう話す。そして、藤本氏は次のように続けた。

「一方で企業である以上、収益性の問題も無視できません。コストをかけて単に社会貢献としてリサイクルなどに取り組むのでは持続するのが難しい。二次流通をいかに戦略的にビジネスに取り込むか。これが、従来一次流通だけに関わってきた企業の間で課題となっていると感じます」

まさにそうした状況で生まれたのが「Selloop」である。実際、二次流通への参入に当たっては、古物営業法やリサイクル法への対応、買い取り、査定、値付けなどの方法の確立、流通インフラの構築をはじめ、さまざまな壁がある。「Selloop」には、それらを乗り越えるためのノウハウが詰まっているというわけだ。

「オークネットはこれまで、37年にわたって多様な商材の二次流通に関わってきました。その中で、どんな仕組みが必要か、どんなトラブルが起こり得るかを実地で学んできた。『Selloop』にはそこで得た知見を注ぎ込んでいます。ただ仕組みを提供するのではなく、戦略策定からPoCの実施、システム開発、そして運営の受託まで一気通貫で対応できるのが私たちの強みです」と藤原氏は説明する。

中でも、特徴的なのが戦略策定のサポートだ。連携するストラテジックインサイトが力を発揮する。

「大事にしているのは、“なぜその企業が二次流通に参入するのか”という基本の部分。私たちは、『Selloop』をリユースや循環型社会を実現するためだけのツールとは捉えていません」と藤本氏は言う。どういうことか──。

他社が模倣しにくいためビジネスの差別化に有効

藤本隆介(ふじもと・りゅうすけ)
株式会社ストラテジックインサイト
取締役

「消費者や投資家に、環境への配慮、サステナブル経営をアピールしたい。それだけが目的なら手段は他にもあるでしょう。二次流通のポイントは、お客さまがリユース品の売買に関わるということ。新たな顧客接点が生まれることで、ブランドとして新たなストーリー、世界観をつくり出すことが可能なのです」

藤本氏は、そう話す。確かに二次流通への参入は、実際の顧客体験を伴うという意味で、より消費者市場を向いた活動といえる。参入障壁は高いが、逆に考えれば他社が模倣しにくいということ。成功すれば、ビジネスの差別化に大きく貢献するに違いない。

「今、顧客との関係性強化に当たって、体験的価値や情緒的価値の重要性が語られます。多くの業界で機能的価値だけで商品を差別化することが難しくなっている。そうした中で、顧客を再発見する手段、新たなマーケットを開拓する手段として『Selloop』に関心を示す企業が少なくありません」(藤原氏)

「情緒的価値を生み出すのに欠かせないものの一つが“共感”です。ブランドへの理解や信頼が購買などの顧客行動を引き起こす。確かな理念に基づいた二次流通への参入は、まさにこの共感の醸成につながります。『Selloop』によって、顧客のサステナビリティアクションを誘発する。そうして表面的ではない、本質的なサステナブル経営を実現する。これが私たちの役割だと考えています」(藤本氏)

顧客からの新たな情報が新規事業のヒントに

昨年8月に「Selloop」を正式リリースして以来、オークネットには家電やオフィス家具メーカー、アパレル、百貨店、総合商社など多くの企業から問い合わせが寄せられ、現在複数のプロジェクトが進行中だ。一口に二次流通と言っても、業種や商材、そして目指す顧客との関係によってその形は異なるため、ストラテジックインサイトのコンサルタントが入って、戦略策定やPoCの設計を丁寧に進めている。

「おかげさまでPoCを行った企業からは、『新たな顧客接点がもたらす情報が新規事業のヒントになっている』『リースアップ予定商品の再販売価格が従来より大幅に高まった』といった声を頂いています」と藤本氏。取り組みが、顧客の理解を深め、ビジネスの可能性を広げることにつながっているのである。

最後に藤原氏は、二次流通を経営戦略の中に位置付けたいと考える企業に向け、次のようにメッセージを送った。

「環境負荷低減と収益性を両立するビジネスモデルをつくりたい、サステナビリティを表層的な対応にとどめることなく自社変革のきっかけとしたい、という思いを持つ企業さまのお力になれたらと考えています。サーキュラーエコノミーというと、誰もが生産、消費、再利用がつながった円環の図をイメージしますが、その内実は企業ごとに大きく異なるはず。私たちはそれぞれの世界観をしっかり反映させ、顧客から共感を得られる仕組みづくりをお手伝いいたします」