中堅・中小企業においてもサステナビリティ(主に環境の持続可能性)が経営の重要課題に浮上していることが、世界41カ国の企業幹部に対する1万人調査で明らかになった。これからはサステナビリティに配慮しなければ成長はなく、収益性を高めることもできない。日本の中堅・中小企業にも、サステナビリティ重視の波が押し寄せている。

日本よりも欧州で温暖化への危機感が強い理由

今年はフランスをはじめ欧州各国を40℃以上の熱波が襲い、山火事が多発するなど例年にも増して気象の極端現象が多発している。地球温暖化が目に見える形で災厄をもたらしているというのが、欧州など世界各国の人々の実感だろう。日本でも猛暑、豪雨などの被害が目立つようになっているが、より極端な異常気象に見舞われている地域では温暖化問題への危機感もとりわけ強いというのが実態だ。

そうした危機意識を受けて、世界的にESG(環境、社会、ガバナンス)投資の重要性が急速に高まっている。たとえば投資にESGの視点を組み入れることなどを原則として掲げる国連責任投資原則(PRI)には、すでに3000以上の世界の機関投資家が署名し、日本でも最大の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を筆頭に生命保険会社など多くの機関投資家が署名している。

それにともない、企業側の意識もESGの観点を無視しては成長できないというものに変わってきている。統合業務システム大手のSAPが2021年に企業幹部に対して行った調査では、企業のサステナビリティ重視の姿勢が明らかになった。

日本にも迫るサステナビリティ重視の時代

調査は中堅・中小企業における戦略的優先事項がテーマ。2021年9月から12月にかけて41カ国28業種の中堅・中小企業(売上高10億米ドル未満)で役員や部門長を務める1万507人を対象に、企業の戦略的優先事項について聞いた(「SAP Insights Midmarket Senior Executive Priority」)。

まず「組織として優先すべき事項はなにか」という質問には、1位「収益の拡大」、2位「業務効率の向上」、3位「リスクの管理」という回答が寄せられた。収益性を高めつつ、リスクへの目配りをするというのは、いつの時代も企業にとって共通の課題といえるだろう。

注目すべきなのは、それらの課題を解決する際の手段である。たとえば「収益の拡大」のためには何に取り組むか。

今回の回答で最も多かったのは「製品/サービスのサステナビリティ向上」だった。過去の調査では「新しい製品やサービスの市場投入」や「カスタマーエクスペリエンスの向上」が上位に来ていたが、今回はそれらを抑え、サステナビリティ向上に関する項目が1位を占めたのだ。

自社が提供する製品やサービスの機能面での優位性だけではなく、運用時あるいは調達を含めた目に見えない部分での環境や社会課題への配慮が競争優位を生じさせ、自社にとってはそれが収益向上のカギになる。そのように考える企業が増えてきたことを意味する。

一方で、日本の中堅・中小企業は、サステナビリティへの関心が世界に比べて相対的に低いという調査がある。

2020年、従業員300人以下の企業の代表取締役を対象に一般財団法人日本立地センターが行った調査では、SDGs(持続可能な開発目標)について50%弱が「(調査時点で)初めて知った」と回答し、サステナビリティへの関心が低いことがわかった(「2020年度中小企業のSDGs認知度・実態等調査」)。SDGsに対して取り組みを始めている企業は3.4%、検討中の企業は4.8%だった。

しかし世界の潮流はサステナビリティ重視へ急速に傾き、日本最大の機関投資家GPIFもサステナビリティ重視に舵を切ったのは前述のとおりだ。日本の中堅・中小企業においても、サステナビリティ向上が体面だけではなく収益性のためにも必要になる時代がすぐそこに来ているといえるだろう。

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