これからの社会で役立つ英語とは? 学習で身に付けた英語力を測るために有効なテストとは? 大阪にある近畿大学附属高校と近大キャンパスを訪ね、お話を伺いました。
近畿大学附属高校を経て、近畿大学で学ぶ北川雄大さん(右)と白川果奈さん。実学の拠点として学生が集まる、同大東大阪キャンパスのアカデミックシアターにて。

ますますグローバル化が進む社会において、実際に役立つ英語4技能を身に付けることの重要性がさまざまな場面で説かれている。これからの時代を生きる子供たちにとって、受験のためだけではなく、実社会でも使える英語を学ぶことが大切なのだ。

グローバル社会において、世界に通用する18歳を育成

9年連続で志願者数全国1位(大学通信調べ)を誇る近畿大学は、建学の精神として「実学教育」を掲げる。この教育理念は、大学の東大阪キャンパスに隣接する近畿大学附属高校でも共有されている。

1学年1,000人を超えるマンモス校。卒業生の7割弱は近大に進むいわゆる付属校だが、京大や阪大、関関同立などの難関大にも毎年多数の合格者を輩出する進学校でもある。

「本校では、グローバル社会において役立つ人材育成のための指導に力を入れています。英語特化コースを設けたり、他校に先駆けて授業にiPadを導入したりするなど、さまざまな施策を次々と打ち出しています」

田中聖二副校長(右)とグローバル教育室室長を務める古川英明先生。「英語上達の秘訣は英語を楽しむこと」だと口をそろえる。

副校長を務める田中聖二先生が語る。自身の発案によって国際バカロレアの認定校にもなり、2024年度よりプログラムが本格的に始動する。すべては「世界に通用する18歳」を育成するためだという。

そんな同校が、生徒たちの英語力を測るために導入しているのが「TOEIC Bridge Tests」だ。大学受験や企業の昇進試験などにも広く活用されている「TOEIC Tests」への架け橋として位置付けられる、英語学習初・中級者に焦点を合わせたテストである。「聞く・読む」力を測る「TOEIC Bridge L&R」(*)は07年度から、「話す・書く」力を測る「TOEIC Bridge S&W」(**)は20年度から導入。生徒たちは3年間を通じて、それぞれ5回ずつ受験するという。同校で英語教育改革を推進してきた古川英明先生に、導入の理由を聞いた。

「まずは、出題内容が日常生活を中心にしており、活きた英語の力を幅広く測定できること。実学を掲げる本学の教育方針とは、非常に親和性が高いと感じています。また近大でも授業や就活支援でTOEIC Programを導入しているため、高校~大学のスムーズな連携を期待できます。20年度からTOEIC Bridge S&Wを導入し、4技能すべてがスコアで示されるようになりました。前回のスコアを更新したいと意気込む生徒たちの、モチベーションアップにも役立っています」

*TOEIC Bridge L&RはTOEIC Bridge® Listening & Reading Tests、**TOEIC Bridge S&WはTOEIC Bridge® Speaking & Writing Testsの略称です。

英語力のレベルや目的・目標に合わせてテストが選べる TOEIC® Program

世界最大級のテスト専門機関ETSが開発した「TOEIC Program」は、世界160カ国、約1万4,000の企業・団体で活用されている英語力測定テスト。合格・不合格ではないスコア評価で「現在地の正確な把握」や「目標の設定」が可能。オフィスや日常生活における活きた英語コミュニケーション能力を幅広く測定する点などが評価され、世界共通のモノサシとして信頼を得ている。

テストは下図の2種に大別されており、受験者が英語能力や目的・目標に合わせて選ぶことができる。

生徒同士が刺激を与え合い英語力がぐんぐん伸びる

同校の英語指導法を詳しく聞いた。

「グローバル化が加速し、母語話者以外による英語のバリエーションも豊かな時代です。相手の英語がわからないなら、聞き返したり、ゆっくり言ってもらったり、ほかの言い方で説明してもらったりするよう努める。そして、ジェスチャーなどノンバーバルな方法も駆使して、正確でなくとも英語で自分の考えや主張を表現し、なにより楽しく他者とのコミュニケーションを深めていける。そんな主体性を伴った英語力を高められるよう、指導しています。知識や正確性は後からいくらでも補えます」(古川先生)

今年の9月から8カ月間、米国オハイオ州に留学する国際学部1年生の白川果奈さん。「現地では英語力を身に付けるだけでなく、暮らしや文化の違いを学びたい。視野を広げることで、多様な価値観を理解できるようになりたいですね」

生徒の主体性を養うため、ペアワークやグループワーク、プレゼンテーションなどアウトプットの機会を増やすよう、授業にも工夫を凝らす。英語の授業は、先生から生徒へ一方通行で教える場ではなく、「生徒自身が英語で考え、英語を使って主体的に学ぶ場」だという。

英語でプレゼンテーションする動画の制作を課題に出せば、iPadやさまざまなアプリを駆使して、クオリティの高い動画が続々と集まってくるそうだ。動画サイトやSNSの活用に慣れている世代だから、という理由だけではない。普段からアウトプット中心の授業を通じて、生徒同士が刺激を与え合い、「もっと思いを英語で伝えたい」という内発的な動機を共有しているからだ。

「生徒の可能性は無限大。何かのきっかけで、学習のモチベーションがぐんぐん上がった例を何度も目にしています。教師が上から押し付けるより、生徒の主体性を刺激したほうがいい結果につながるのです」(田中先生)

こうした指導によって伸びた生徒の英語力をスコアで正確に確認できるのが、TOEIC Bridge Testsだ。特に、入学時に英語が得意とはいえなかった生徒たちの伸び具合が、はっきりと数値で表れるという。

英語学習 初・中級者を対象とするTOEIC Bridge® Testsとは?

TOEIC Bridge Testsは、「聞く・読む」力を測るTOEIC Bridge L&Rと、「話す・書く」力を測るTOEIC Bridge S&Wに分かれている。外食や娯楽、買い物など、より身近な日常生活の場面が題材になっていて、初・中級者にとっては取り組みやすいテストだ。

 

リスニング(約25分間・50問)、リーディング(35分間・50問)、合計約1時間で100問に答えるマークシート方式のテスト。リスニングの出題スピードはTOEIC L&Rよりゆっくりで、ネイティブスピーカーが「注意深く」話す際のスピード。

TOEIC Bridge L&Rの問題サンプル
 

スピーキング(約15分間・8問)とライティング(約37分間・9問)で構成。受験者はヘッドセットを装着し、パソコン画面の指示に従って音声を吹き込んだり、文章を入力したりして解答する。TOEIC S&Wと同じく、有資格者の採点者が採点。「意思疎通」に重点を置いているため、発音が滑らかでなく、多少文法的なミスがあっても、採点に大きくは影響しない。

TOEIC Bridge S&Wの問題サンプル

小学生から社会人まで幅広く活用

2021年度のTOEIC Bridge L&R公開テストでは、受験者の約59%が学生。年間の受験者数は14万700人にのぼる(※1)。外国語学習者の習熟度レベルを示すガイドラインとして、欧米で幅広く導入されているCEFRでは、おおよそA1~B1程度の英語力を測定でき(※2)、個人受験だけでなく、企業・大学・高校などでも、レベルチェック、モチベーション向上、学習の進捗測定やTOEIC Testsの受験準備などに幅広く活用されている。

参考までに、英検®で取得した級別に受験者のスコアを平均すると、下のグラフのようになる。

※1 受験者数は公開テストと団体特別受験制度(IPテスト)の合計。
※2 CEFRでは言語力レベルを、A1、A2、B1、B2、C1、C2の6段階で測定する。A1から順に、初級、中級、上級と、レベルアップしていくイメージ。

教育機関内で実施された受験者アンケートより

高校で英語力を身に付け、特待生として近大で学ぶ

同校には、TOEIC Testsで一定のスコアを上回るなどすれば、近大進学への学科試験・入学金・授業料が免除される附属特別推薦入学試験制度がある。これを利用し、特待生として近大で学ぶ学生も多い。

国際学部1年生の白川果奈さんもその一人。高校入学時の英語力は「普通程度」。それまで英語力を測るテストを受けたことはなく、高1の3月に受験したTOEIC Bridge Testsがはじめてのチャレンジだった。

「日常生活寄りの、軟らかい感じの問題が印象的でした。それほど英語に自信があったわけではなかったんですが、実際に実力がスコアで示されると、高校の授業を経てここまでできるようになったんだなって。このまま伸びていけば、特待生の資格を取れるかもと自信が付きました」

映画などを通じて、英語や海外の文化に憧れたという情報学部1年生の北川雄大さん。「将来はグローバルビジネスに携われるよう、大学4年間でIT技術と英語力を身に付けてから、海外の大学院へ進学したいと考えています」

情報学部1年生の北川雄大さんも、同じく特待生。二人が口をそろえるのは、高校で身に付けた4技能が大学の授業で大いに役立っているということ。特にプレゼンやコミュニケーションのための英語力は、他校から進学してきた学生との違いを感じるという。

「高校では、自分の英語力が上がっていることをTOEIC Bridge Testsのスコアで把握でき、学習のモチベーションアップに役立ちました。受験英語とは違う、日常英語の4技能を測れるこのテストは、英語初心者にもお勧めしたいですね」(北川さん)

共に海外志向。留学も視野に入れ、さらに英語力を伸ばしたいと考えている。その先に見据えているのは、英語を活かした実社会での活躍だ。

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(撮影=宮部智史)