事業活動全体を取り巻く大きな戦略が必須
――政府は「2050年カーボンニュートラル」を宣言。2030年度における温室効果ガスを2013年度に比べ46%削減するという目標を掲げています。経済界も連動しつつありますが、これは世界的な流れを受けてのことですか?
2021年にCOP26(国連気候変動枠組条約締約国会議)が開催され、2050年に脱炭素を目指すという目標に多くの国が合意しました。もはやこの流れは変わらないでしょう。既にイギリスは企業に気候変動対策の開示を義務化しています。日本企業としても、もう後戻りはできないことは明確なので、いかに早く有利な形で取り組んでいけるかが勝負になってきます。
――その際に、TCFDという枠組みが指標となるということですね。
TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)とは、G20加盟国の要請を受け、FSB(金融安定理事会)が気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するために設立したタスクフォースのこと。その開示要求は、とてもよく練られたフレームワークです。 企業がカーボンニュートラルを目指す際には、例えばオフィスの照明を省エネのLEDに変えるなど、手を付けられるところから始めるのではなく、まず事業活動全体でどれくらい温室効果ガスのインパクトを出しているのか把握すること。そしてリスクや機会を仮定・考察し、事業インパクトの試算などを考慮したうえで、事業構造の変革や生産設備の刷新などコストがかかることも含めた戦略立てが重要になります。そこで気候変動対策のためのコストが将来リスクの低減につながる不可欠なコストだと、ストーリー立てて投資家に伝えられないといけない。その際に、TCFDが設定している「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」という4つの項目が指針になります。わが社では特にこの「戦略」をきめ細かくサポートしています。
――専門知識のない企業の担当者がTCFDの開示情報をまとめるのは難しいですか。
企業規模が大きいところでも専任の方はいらっしゃらないことが多い。企業の方が気候変動について勉強し、1つ1つの取り組みをまとめていくのはなかなか難しいと思います。私も、環境省時代にカーボン・オフセット・クレジット(企業などが温室効果ガスの排出を認識し削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等を購入する仕組み)の制度設計をしましたが、大学時代に温暖化の研究をしていたわけではないので、入省してから学び、専門知識を得ました。ですから、スタートの段階で専門のコンサルティング会社を使っていただくと、プロジェクトがスピード感をもって立ち上げられ、スムーズに進んでいくのではと思います。
投資家は企業の気候変動対策をシビアに見ている
――2022年の東証市場再編が大きいきっかけになりそうですが、先行して気候変動への取り組みを開示した企業はどうなっていますか?
ご相談を受けたある企業では、2020年から開示を始め、ESG評価が格段にアップ。海外の機関投資家からも最高評価を受けました。投資家は、企業に気候変動の時代を乗り越えられる強靭性があるかという点をシビアに見ており、いち早い開示を求めています。企業価値を高めるためには、これをリスクではなくチャンスだと思って取り組むべきでしょう。対応が後手に回ると、何も良いことはありません。
――金融庁も2023年から企業に気候変動リスクや企業統治にかかわる情報を公開するよう義務づける検討を始めました。
もはや避けては通れないタスクになったと認識し、より早く戦略を練って開示し、もし不十分であれば計画を更新していくというビジョンで気候変動の影響に向き合ってほしいですね。サステナブル経営は守りの手段ではなく攻めの手段。ある程度の気候変動が避けられない中、そこに適応したビジネス展開にシフトし、ビジネスチャンスを育てる経営でもあるのです。
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