人的作業の負担がDXの初期段階の関門に
「企業活動のデジタル化が急速に進展し、ビジネスの競争原理が変わる中、経営者の間にも『DXに真剣に取り組まないと、取り残される』という危機感が広がっています。ただ、いざ実践するとなると、どこから手を付けていいか分からない。そうした企業が多いようにも感じます」
富士フイルムビジネスイノベーションの岡野正樹専務はそう語る。
「DXの目的は単なる効率化ではなく、事業を変革して競争優位を確保することです。それにはまず、紙の文書などのアナログ情報を『電子化』した後、その中のテキスト情報をデータとして抽出し、業務で活用できるようにする『データ化(デジタライゼーション)』を行います。さらにそのデータをさまざまなシステムと連携させ、活用の幅を広げて新たな価値を創出していく必要があります。これらを踏まえて、具体的なアクションを考えていく必要があるでしょう」
今の時代、企業の情報は電子化されて大量にストックされている。ただ、紙をスキャンしたイメージファイルの状態では、経費精算や販売管理などの業務システムで扱うことができない。
「そこでOCR(文書読み取り)ソフトなどを使ってドキュメントの中から業務システムに必要なデータを抽出するわけですが、その際に文字や数字の確認、修正といった人的作業が必要となります。その手間や時間が現場の負担となり、DXの初期段階における関門になっているケースが少なくないのです」
こうした課題を解決するために、同社が開発したのが、紙・電子双方のドキュメントに含まれるテキストデータの読み取りと手間の掛かる前後の付帯作業を一体化して、企業におけるデータ化業務の効率化と業務プロセスの改革を支援するクラウドサービス「ApeosPlus desola Technology by AI inside(アペオスプラス デソラ テクノロジー バイ エイアイ インサイド 以下、ApeosPlus desola)」である。
使えるデータ化により迅速な意思決定にも貢献
企業には注文書や請求書、申請書、経費精算書など多様な文書が、紙や電子の形で日々寄せられる。
「今回の新サービスは、これまで縦割りで処理されていた一連の業務プロセスを入口から出口まで一気通貫で自動化しました」(下図参照)
岡野氏は「ApeosPlus desola」の導入メリットとして、業務効率化に加え、業務品質の向上を挙げる。
「人手による作業ではミスも起こり得ます。当社のサービスでは、ドキュメントからテキスト情報を読み取るだけでなく、読み取った文字の確認、修正、記入漏れや日付チェックといった人手で行っていた業務の簡略化も実現できるので、素早く、正確に、データ化が可能。まさに“使えるデータ”を取り出すのに力を発揮します」
同社は、長年にわたり複合機等を通じてさまざまなお客さまの業務を間近で見ながら、ドキュメントに関わる潜在的な課題をお客さまと共に解決してきた経験がある。そして、紙、電子を問わず、さまざまなドキュメントをPC上で一元管理し、紙と同じ操作感を電子でも実現するドキュメントハンドリング・ソフトウェア「DocuWorks」などで、企業のデジタル化を支援してきた。これらの経験が“使えるデータ化”を実現する「ApeosPlus desola」に詰め込まれているのだ。
情報の活用度を高めるためには、「いつ、どこで、どんなデータが必要になるか」、企業全体でのデータの活用方法を見つめ直すことも重要になる。
「データ活用による競争力の強化を目指すなら、最初から目的意識を持ってデータ化を進めることが大切です。伝票処理などが終わり保管されているデータの中に、経営に資する重要な情報が眠っているケースは珍しくありません。しかし、定型業務の遂行だけを目的に蓄積された情報を後から経営判断などのために集計するのは難しい。業務プロセスを整流化し、2次、3次利用も見据えた提案を行えるのも当社の強みです」
企業の動きを表す情報を、必要な時、必要な形で、すぐ活用が可能な状態に整えておくことで、状況に即した迅速な意思決定にも役立てることが可能になるはずだ。
「ドキュメントのプロの立場で、時代の流れに応じて、最先端の技術を取り入れながらお客さまの真の課題を解決していくことが当社の使命です。DXへの取り組みはビジネスのあらゆる場面で進められますし、一つ一つの積み重ねが大きな成功につながります。お客さまのデータ活用を促進することで、生産性の向上はもちろん、ビジネスの成長にも貢献していきたいと考えています」
DX推進に欠かせないドキュメントのデータ化を支える「ApeosPlus desola」。それは、“何から手を付けていいか分からない”という企業の変革を後押しする有力な一手となりそうだ。