人手による作業が必要な郵便や宅配便関連の業務は、デジタル化での効率化が難しい分野の一つ。その課題を解決しながら、コスト削減などの経営メリットも生む製品が注目を集めている。

コロナ禍以前と比べ問い合わせが約25%増

長引くコロナ禍などを背景に、今、企業では郵便や宅配便に関わる業務の課題が表面化している。

田邉卓也(たなべ・たくや)
ピツニーボウズジャパン株式会社
取締役最高執行責任者

「在宅勤務も広がり、これまで以上に限られた人に作業が集中するケースなどが見られます。ただ新しい働き方が定着するなか、そうした状況を改善したいという企業も増えてきました」

そう語るのはピツニーボウズジャパンの田邉卓也氏だ。実際、同社の「SendPro+」への問い合わせは、コロナ禍以前と比較して25%以上増えているという。

この製品は、業界で初めて郵便発送と宅配便発送の効率化を一台で実現するもの。郵便物については、封書から小包まで正確に計量し、料金を自動算出。切手の代わりとなる印影を素早く印字する。日に30通の発送を行う場合、月で600通に対して約10時間かかる作業時間を2時間以内に短縮することが可能となり、生産性が5倍以上向上することになる。

宅配便は、ヤマト運輸と日本郵便に対応し、登録した宛先の送り状ラベルを簡単に印刷できる。PCから送り先をまとめてアップロードすることもでき、面倒な手書き作業が不要になる。

同社の楢原幸弘氏は、問い合わせが増えている理由を次のように推測する。

楢原幸弘(ならはら・ゆきひろ)
ピツニーボウズジャパン株式会社
Sending Technology ソリューションズ
営業本部 統括本部長

「郵便局による集荷サービスの一部廃止で担当者の負担が重くなったところに、コロナ禍で密を避けたいというニーズが加わりました。また、企業の生産性向上の手段といえば、まずDXが思い浮かびますが、ここにきてデジタル化が難しく人手を介さざるを得ない業務の効率化に目を向ける経営者やマネジメント層が増えています。それらが、『SendPro+』に興味を持つ企業が増えている要因だと考えられます」

加えて田邉氏は、同製品の経営面でのメリットを説明する。

「発送の処理データのレポートを取得できるため、どの部門が、どんな荷物を、どれだけ送っているかが一覧で分かり、見過ごしがちな発送料金のコスト管理がしやすくなる。また、案外手間のかかる切手の管理もなくなります。実は事務的な業務でも、特定の人しか分からない仕事は結構多い。機械を使って属人化を防ぎ、誰もが対応できるようにすることで組織全体の生産性を高められます」

ユーザーからは作業負荷の軽減についてはもちろん、「発送量が増える時期は担当社員が休みづらい状況があったが、そうした課題も解決された」といった声も寄せられているという。

「現場の効率化を進めながら、従業員の精神的な負担も減らしていく。『SendPro+』は、生産性と従業員満足度、双方の向上に貢献する製品だと考えています」(田邉氏)

幅43.9cm×奥行き39.4cmのコンパクトなボディーで、郵便と宅配便両方の発送効率化に貢献。郵便では、計量や料金の算出・印字が行え、集計データの活用で部門別や種別のコスト管理などにも役立つ。宅配便については、送り状ラベルの出力の他、運送会社の料金比較、配送状況のトラッキングなどの機能も備える。

人が会うことなく荷物や備品を受け渡せる

一方、フレックスタイム制や在宅勤務が広がるなか、オフィスでは郵便や荷物の受け取りに伴う課題も大きくなっている。ピツニーボウズジャパンはこれに対しても、「非対面」「非接触」「無人」で荷物の受け渡しができるスマートロッカーの提供で応えている。

荷物をロッカーに入れて渡したい相手のIDを打ち込むと、相手の登録メールに通知が届き、好きな時にパスワードを入力して受け取ることができる。タッチパネル方式で操作も容易。利用履歴が残るので管理もしやすい。

荷物の紛失を防ぎたい、受け渡しのために時間を合わせて出社するのが難しいといった理由で活用する企業が多いが、パソコンなど備品の貸し出しや回収に使う例も見られるという。

働く場所も、働き方も多様になるなか、これまで業務改革が進んでいなかった部分についてもサポートしていく。これがピツニーボウズジャパンのスタンスだ。確かに、オフィスを取り巻く環境が変化する現在は、業務プロセスや人の役割分担を改善するチャンスといえるだろう。

最後に田邉氏は次のように話した。

「労働人口が減るなか、生産性を高めながら、属人化の度合いを低くしていく。それには何らかの手立てが必要です。これまで当然のものとしていたプロセスにも効率を上げられる部分はたくさんありますから、当社がそのお役に立てればうれしく思います」

■ユーザー企業の声

「SendPro+」の導入で発送作業も経理作業も効率化

アズビル株式会社

ビルや工場、また生活の場に、計測、制御の技術を提供し、「人を中心としたオートメーション」を追求するアズビル。同社西東京営業所では「SendPro+」を導入し、業務プロセスを刷新した。

左/アズビル株式会社 ビルシステムカンパニー 東京本店 西東京営業所 成尾祐子さん
右/アズビル株式会社 ビルシステムカンパニー 東京本店 ビルマネジメント部 管理グループ 加藤久美さん

従来、郵便物は発送者が宛名書きまでを行い、事務担当が一つ一つ計量し、買い置きの切手を貼って投函していました。伝票管理や経費精算などさまざまな業務を担当するなか、多忙なときも郵便物はその日のうちに発送する必要があります。また切手は鍵の掛かる場所で保管し、記帳や棚卸しなど管理面にも時間がかかっていました。

「SendPro+」では計量と料金の印刷を自動で行えますから、郵便物は発送者自身が投函することになり、事務担当側の作業はなくなりました。また、宅配便は発送者が送り状を書いていましたが、その手間もゼロに。操作方法もシンプルで、誰でも簡単に使えるため、導入もとてもスムーズでした。

加えて当社では、宅配便で発送するものによって発送費の勘定科目が異なるため、以前は送り状を一枚一枚確認していました。その作業も、「SendPro+」の処理データを使うことで大幅に効率化できました。