世界最大のEC事業を展開するAmazonは、「地球上で最もお客様を大切にする企業」を目指している。この目指すべき姿に今年、「地球上で最も働きやすい企業」「地球上で最も安全な職場」が新たに加わった。事実Amazonでは、独自の制度や行動指針などを設けて、働く社員がポジティブになれる環境の整備に力を入れている。Amazonで働くとはどういうことか。9月16日に開催された「Amazonキャリアデー」のプログラム「Amazonで実際に働く社員による座談会」を通して、その実態に迫る。

社員のキャリアアップを後押しする「インターナルトランスファー制度」とは

Amazonの日本法人アマゾンジャパンでは、EC事業に加え、最先端技術を駆使した物流ネットワークを構築するオペレーションズ、オンデマンドで利用できるクラウドサービスを提供するAmazon Web Service(AWS)という主に三つの事業を展開している。座談会には、それぞれ異なる部門で活躍する佐藤涼子さん、藤本剛志さん、ベッキー・イェさんが登場。この3人の話からまず浮かび上がってきたAmazonの独自性は、「インターナルトランスファー」という社内異動制度だ。

【司会】まずはそれぞれのお仕事についてお聞かせください。

佐藤涼子
アマゾンジャパン
坂戸フルフィルメントセンター・サイトリード

【佐藤】私は埼玉県坂戸市のフルフィルメントセンター(FC)と呼ばれる物流拠点でサイトリード、いわゆるセンター長の役割を担っています。前職では小売店の店舗運営に3年間携わり、2010年にアマゾンジャパンに入社。大阪のFCで主に出荷業務を担当したのち、昨年の坂戸FC立ち上げから現職として勤務しています。

【藤本】私は約7年前の入社からしばらくは、リテール部門における調達戦略の責任者として、需要予測や在庫の最適化、各種オペレーションの自動化などについて検討していました。その後、グループ間での異動を後押しする「インターナルトランスファー」という制度を利用してAWSに異動。現在は、同社でクラウドエコノミクスを提供するチームをリードしています。

【ベッキー】私はマーケティングの仕組みを作る部署でリーダーを務めています。大学では数学を専攻し、卒業後もずっと数字に関わる仕事をしていましたが、8年前にAmazonの仕事に興味を持ち入社。シアトルの本社で約2年間勤務し、その後別会社での5年間の勤務を経て、昨年またAmazonに戻ってきました。

【司会】Amazonでは、キャリアをどのように積み重ねていくのでしょうか?

【佐藤】私のように同じ部署内で上のポジションを目指すこともあれば、藤本さんのようにインターナルトランスファーを利用した異動も活発です。この制度は、新しいシステムを学びたい、英語力を生かしたい、結婚を機に引っ越すことになったなど、ざまざまな理由で利用できます。

藤本剛志
アマゾン ウェブ サービスジャパン
事業開発本部クラウドエコノミクス部長

【藤本】Amazonにおいて、インターナルトランスファーを制限するものはありません。しかも、社員を出す側も受ける側も、そのチャレンジを推奨するという文化があります。また、誰かから異動を指示されるということもありません。自らが自分のキャリアのオーナーとなり、思うようにキャリアを構築していける仕組みが整っています。

【ベッキー】インターナルトランスファーは、Amazonのユニークさの一つですね。私自身、すでに三つの仕事を経験しています。何かを学びたいと思った時、Amazonにはそれが叶う適切な部署が大抵あります。いつになってもキャリアの選択肢が豊富なのは嬉しいですね。

 

全世界共通の16項目の行動指針のもと、一人ひとりがリーダーとしての自覚を持つ

もう一つの特徴的なカルチャーが、「LP(Leadership Principles)」という行動指針だ。Amazonで働くスタッフは「全員がリーダー」という考えのもと、一人ひとりが日々の活動において心がけるべき16項目がまとめられている。

【司会】それぞれ好きなLPについて教えてください。

ベッキー・イェ
アマゾンジャパン
ヘッド・オブ・オートメイティッド・マーケティング

【ベッキー】目の前の利益ではなく、何よりもお客様を中心に考えることにこだわる「Customer Obsession」は、私の仕事のやりがいそのものです。一方、常に正しい判断が求められる「Are Right, A Lot」の実践は簡単ではありません。ただ昨年、新型コロナウイルス感染拡大という前例のない事態に立ち向かう上では、この指針が大いに役立ちました。チームの全員がそれぞれの判断ですべきことをしたこの経験により、メンバーの判断力が大幅にアップしたのを実感しています。

【佐藤】私も一番大切にしているのは「Customer Obsession」です。役職が上がるにつれ、実際のお客様はもちろん、センターへ入荷してくれる業者や出荷後の配送業者、あるいは一緒に働くメンバーなどを仮にお客様と考えた時、自分はどうあるべきかと考えるようになりました。また、プロジェクトの進め方などで迷いがある時には、この指針を軸にするとブレずに進めることができます。

【藤本】私が好きなLPは「Ownership」です。この指針の説明には「『それは私の仕事ではありません』とは決して口にしない」とあり、この考えが浸透しているといいチームができます。またLPではありませんが、完璧なものは存在しないのでより良いものがあればフレキシブルに変えていこうという「Unless you know better ones」も、Amazonの本質を体現したカルチャーの一つだと思います。

「Diversity」「Equity」「Inclusion」の「DEI」を重んじた職場環境づくりを

【司会】多様性を尊重するAmazonの職場環境についてお聞かせください。

【佐藤】FCには、多国籍の方、出産後復帰された方、障害をお持ちの方などさまざまなバックグラウンドを持つメンバーがいます。その一人ひとりが活躍できるような職場環境をどう実現するか、ミーティングでも「Diversity(多様性)」「Equity(公平性)」「Inclusion(包括性)」の実現方法について話し合っています。特に、女性リーダーによるパネルディスカッションを行って、女性が働きやすい職場づくりに力を入れるなど、女性が活躍できる舞台の整備は進んでいると思います。そのほか「仕事を楽しむ」という意識が高いため、社員の誕生日会や家族を招待するファミリーデーを設けるなど、FCごとに多様なイベントが企画されています。入社前に持っていた「外資系はドライ」というイメージは大きく変わりました。

【ベッキー】私自身、アマゾンジャパンに入社するまで日本で働いた経験がなく、上手く馴染めるかとても不安でした。ただ初日からチームのメンバーが支えてくれて、自分が外国人であるという違和感を全く感じませんでした。

【司会】では最後に、Amazonへの転職を考えている方にメッセージをお願いします。

【ベッキー】自分のキャリアに対して「Ownership」を持ちながら、お客様により良いサービスを届けることに喜びを感じられる人にとって、Amazonは最高の職場だと思います。

【佐藤】Amazonはチャレンジする機会が非常に多い会社です。自分を大きく成長させたいと考えている方は、ぜひAmazonでのチャレンジを楽しんでください。

【藤本】入社する前は、経験の有無、専門性の違い、英語力不足などを懸念していましたが、Amazonではそのようなこと以上に、LPで推奨されている行動をどれだけ徹底できるかが重視されます。多少のギャップがあっても「学んでいく」という気持ちがあれば、その部分を評価してくれる会社です。どのようなポジションにも応募するチャンスはあるので、ぜひ自信を持ってチャレンジしてください。

現在、オンラインで視聴できる「Amazonキャリアデー2021」では、この3人の座談会の様子を動画で確認できるほか、アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長のからのメッセージや、Amazonの面接官が教える理想の仕事に就くためのヒントなどを配信中だ。

また、同デーと同時開催された「第7回Amazon アカデミー」の動画も配信されている。毎回、各界の専門家を招き、さまざまな視点から日本社会や企業が直面する課題とその解決策、目指すべき方向性などについて話し合う同アカデミー。今回は「時代の転機を迎える日本社会、これからのキャリアと自分らしい働き方とは」をテーマに、法政大学キャリアデザイン学部教授・田中研之輔氏、一般社団法人Public Meets Innovation代表理事・石山アンジュ氏、NPO法人GEWEL理事・稲葉哲治氏がパネリストとして参加。個々の働き方に対する価値観が多様化する中で、会社はいかにしてインクルーシブ(包括的)な職場環境をつくっていくのか、さらにはそのような新しい価値観が広がる社会の中、個人はいかにして自らの強みを生かし、自分らしいキャリアを築いていくのかについて話し合われている。

Amazonへの転職に興味がある人はもちろん、今の仕事に悩んでいたり、キャリアチェンジを考えていたりする人にとっても、ブレークスルーのヒントを得られる可能性は決して小さくないだろう。