電気料金をはじめとするエネルギー関連のコストは、間接経費のなかで高い割合を占めるものの一つだ。そうしたなか、企業向けの電気料金の削減サービスを1600社超に提供しているのが、今年8月に社名を変更して新たなスタートを切ったエネクラウドである。同社の田嶋義輝社長に、中小企業の電力購入における課題や提供するサービスの特徴などを聞いた。

独自の入札システムなどで電気料金の削減を支援

──社名を「日本電気サービス」から「エネクラウド」に変更しました。新たな社名にどんな思いを込めましたか。

【田嶋】当社は、「すべての企業の競争力を高め、豊かな社会を実現する」を使命として事業を展開しています。これまで、お客さま企業の電気需給契約の交渉・切り替えを支援し、電気料金の最小化を目指す「電気削減クラウド」を提供。あらゆる企業が電力自由化のメリットを享受できるようサポートしてきました。

さらに今後は、脱炭素への要請もいっそう強まるなか、デジタル技術を使ってエネルギー全般の効率利用に役立つプラットフォームを整備していきたい。さらに、「エネルギー管理のDX化」を通じて100年先も持続可能な社会の実現に貢献したい。そうした思いを社内外に発信すべく、今回社名を変更しました。

田嶋義輝(たじま・よしてる)
エネクラウド株式会社
代表取締役社長
1981年神奈川県生まれ。獨協大学卒業。大手上場企業に入社し、2019年に現在のエネクラウドの前身である日本電気サービスで代表に就任。同社にて電気削減クラウド(旧:電気料金削減サービス)を提供開始。同じくしてフルキャストホールディングスの出資により同グループへ参入し、事業を拡大。「すべての企業の競争力を高め、豊かな社会を実現する」を経営理念に、ステークホルダーそれぞれの視点に立ったソリューションサービスを提供。

──中小企業などは電力購入に当たり、どのような課題を抱えているのですか。

【田嶋】工場やオフィスビルなどで使われる「特別高圧」「高圧」区分の電気料金は、電力会社と各企業が個別に契約を結ぶ相対契約です。当然企業は好条件で契約したいところですが、社内のエネルギー関連の情報は多様で複雑。それを正確に把握し、契約の知識も備えながら料金交渉に当たれる人はなかなかいません。さらに、多くの企業は間接経費の節減に向けて費用を捻出するのも厳しい。そのため、課題意識はありながらも、コスト削減が思うように進まないという状況があります。

──そこで貴社が交渉や契約の切り替えをサポートするわけですね。

【田嶋】はい。それが当社の「電気削減クラウド」です。最大の特徴は「削減できた電気料金のなかからサービス料をいただく」という料金体系。イニシャルコストゼロ・完全成果報酬でお客さまを支援します。

──具体的なサービスの流れについて説明をお願いします。

【田嶋】まずは、お客さまの電気の使用状況や現在の料金について伺います。続いて当社が保有する幅広い業種の電気料金のデータベースをもとに、当該状況における電気料金をシミュレーション。予定価格を設定し、当社独自の入札システム「ENEBID」を使って電力会社による入札を行います。そのうえで、出された契約内容や電気料金、削減率をお客さまにご確認いただき、最適価格での契約をサポート。きめ細かなコンサルティングを行い、電気料金の削減につなげていきます。

脱炭素社会の実現を後押しする存在に

──これまでの実績について聞かせてください。

【田嶋】本格的なサービス開始から約2年、現在1600社超のお客さまをサポートし、年間の電気料金の取扱高は300億円を超えています。電気料金の削減率は平均で10.2%。なかには40%以上の削減に成功したケースもあります。おかげさまでお客さまからは、「これまで懸命にコスト削減に取り組み、電気料金については限界だと思っていたが、さらに大幅に減らすことができた」「初期費用なしで、大きな効果があった。もっと早く依頼すべきだった」といった声をいただいています。

──今後、新たなサービスの展開も計画しているそうですね。

【田嶋】現在提供している「電気削減クラウド(契約支援)」は、いわば「電気料金の単価の最適化」を行うサービスです。今後はお客さまの競争力をいっそう高める手段として、「保守支援」「運用支援」も併せて提供していきたいと考えています。

「保守支援」は電気使用状況の見える化に役立つEMS(※)などのシステム導入から法定点検業務まで、電気使用に関わる課題を解決するサービスを一貫して提供し、「電気使用量の改善」を支援。また、「運用支援」ではソーラーパネルや蓄電池などエコエネルギー創出ツールを設置したうえで、効率的なエネルギーマネジメントを支援し、「エネルギー利用の効率の改善」を実現していきます。ポイントは、これらのサービスもイニシャルコストゼロで導入いただけること。お客さまの本業に影響を与えないことには、徹底してこだわっています。

──今後の抱負を聞かせてください。

【田嶋】当社は、「『電気』を可視化できる世界を実現し、最適な課題解決を可能にするエネルギーエコシステムを創造する」をビジョンに掲げています。あらゆる企業の効率的なエネルギー利用と脱炭素化に向けたマインド醸成を支援する仕組みを構築していく。そうして日本経済を支える中小企業の経営基盤の強化と社会課題の解決を両立していく。これが私たちの役割だと考えています。

その役割を担ううえで一つ大事にしているのは、「当たり前を当たり前としない」ということです。日々やるべきことを地道に積み重ねながら、妥協なくその質にこだわり続ける。特別な価値は、そうしたなかからこそ生まれるものだと信じています。

これからも、独自のノウハウに基づくサービスのもと、お客さまの課題に寄り添い、脱炭素社会の実現を後押しする。そうした存在を目指して努力を続けていきます。

※Energy Management Systemの略。IT技術を用いて、エネルギーの使用状況の見える化や利用制御を行うシステム。