今年4月、富士ゼロックスから社名を変更した富士フイルムビジネスイノベーション。ソリューション・サービスの充実を掲げる同社の取り組みについて岡野正樹専務に聞いた。

「社会の変化に先駆けた商品・サービスによって、ビジネスに革新をもたらす存在であり続ける。新社名には、私たちの決意を込めています」

富士フイルムビジネスイノベーションの岡野正樹専務はそう話す。グローバルにビジネスを展開する同社が取り組む事業が、複合機事業とソリューション・サービス事業である。複合機についてはその役割と価値のさらなる向上を目指し、ソリューション・サービスでは顧客のDXなどを後押ししていく構えだ。

岡野正樹(おかの・まさき)
富士フイルム ビジネスイノベーション株式会社
取締役専務執行役員
1981年富士ゼロックス(現・富士フイルムビジネスイノベーション)入社。総合企画部長、執行役員グローバルサービス営業本部長、常務執行役員ソリューション・サービス事業担当などを経て、2019年に取締役常務執行役員。2020年より現職。

「当社の事業の本質は、創業時よりお客様の課題解決にあるといえます。これまでも、複合機、また紙と電子文書を一括で管理する『DocuWorks』などのソフトウェアを通じて業務の効率化や働き方改革をサポートしてきました。また、クラウドサービス、BPOサービスなどでも、企業のIT環境の整備、充実に貢献をしています」

一貫して商品・サービスがもたらす効果や価値を重視してきた同社は、現在解決すべきIT関連の課題を次のようにとらえている。

「テレワークなど新たなワークスタイルが浸透し、IT機器やソフトウェアも進化するなか、IT担当者の業務量は増え、求められる知識の幅も広がっています。他方でIT人材の不足はますます深刻化し、多種多様なIT業務を一人で担わざるを得ない、いわゆる『ひとり情シス』の問題も拡大している。特に中小企業では、増大する業務負荷を自社だけで吸収するのが難しくなってきていると強く感じます」

従来のサービスを進化させより柔軟な対応が可能に

かねてビジネスを取り巻く環境の変化に即してサービスを拡充してきた同社は、PCと複合機がネットワークでつながり始めた2000年前後から、プリンタードライバー関連などPCの各種設定、サーバーやネットワークの構築といったIT機器のセットアップ支援を行ってきた。さらに、企業で使われるIT機器の多様化に伴い、セットアップ支援だけでなく、他社商品も含めた機器の設置、故障時の原因特定、復旧作業も手掛けている。

自社商品・他社商品を問わず対応し、必要に応じてオフィスへの駆けつけも行う──。そうしたサービスが可能なのは、富士ゼロックス時代から培ってきた全国をカバーするエンジニアの保守ネットワークやサービスデスクがあるからにほかならない。その強みを生かし、各ベンダーのサポートのはざまを埋めるサービスはユーザーから多くの契約を獲得しているという。

そして昨年12月、従来のサービスを進化させる形で登場したのがIT関連の困りごとをまるごと解決する「ITあんしん プレミアム」だ。岡野氏は次のように説明する。

「近年はIT機器がますます複雑に連携して機能を果たすようになっています。そのため、例えばインターネットにつながらない、テレビ会議ができないといった不具合が起きても、どこに問題があるかを判断するのが難しい。原因を特定するだけでもIT担当者は多くの時間を費やさねばなりません。そこで、これまでPC、サーバー、ネットワークなど機器別にメニュー化していた運用・保守サービスを統合し、新たな付加価値を加えてオフィス全体を漏れなくカバーするサービスが『ITあんしん プレミアム』です。障害原因の見極めも含め、さまざまな課題に対してワンストップで、より柔軟に応えられるよう、サービスを再設計しました」

リモートでの監視によりダウンタイムを低減

「ITあんしん プレミアム」では、他社から購入した機器も含め、企業がオフィスに保有するIT環境全体に対して、必要な運用・保守サービスをワンパッケージで提供。「システム障害によるダウンタイムを短くしたい」「社内からのPC操作の問い合わせ対応など、作業の手間を減らしたい」といった多くの企業に共通するニーズに応えていく。

「何か不具合が起これば、必要なサポートを迅速に提供し、ご要望に応じて現場へも駆けつけます。併せて、平常時からIT機器の稼働状況をリモートで監視することで、異常を早期に検知しダウンタイムも低減するのが私たちのサービスの特長です」

さらに、個々の社員からの質問にも、電話で対応するのに加え、リモートツールでの画面共有による操作支援も実施。在宅勤務におけるトラブルにも対応してくれるというわけだ。

日々発生するIT関連の作業や困りごと。これらに対応する手間と時間を削減できれば、現場のIT担当者は情報システムの投資計画立案や更新など、戦略的な業務に力を注ぐことが可能になる。そして、それはDXの推進やビジネスモデルの変革にもつながっていくはずだ。

同社では、今回紹介した日々のITの困りごとに対応する「ITあんしん プレミアム」のほか、IT戦略の立案から運用まで幅広くサポートし、プロアクティブにトラブルの芽を摘む、「IT Expert Service」も提供している。これら2つのITアウトソーシングサービス「情シスPLUS」は、さまざまな中小企業の課題を解決していくに違いない。

「日本には、世界に通用する先端技術によってジャパンブランドの担い手となっている企業、また各地の伝統や特性を生かした地域資源を受け継ぎ、その価値を高めている企業など、国を支える基盤となる優れた中小企業が多数存在します」と岡野氏は言う。そして次のように続けた。

「そうしたお客様が得意分野でいっそうの力を発揮するには、働きやすい環境づくりが必須です。まさにそのお手伝いをするのが富士フイルムビジネスイノベーションの使命。時代の変化とお客様の課題を見すえたソリューション提供により、お客様のDXを推進し、『ビジネスにイノベーションを起こす』という社名を体現していきたいと思います」