終身雇用の限界やジョブ型雇用の進展、さらに長引くコロナ禍などを受け、人財マネジメントのあり方も変化している。そこで企業の経営部門、人事部門の関心を呼んでいるのが、ビズリーチの人財活用プラットフォーム「HRMOS(ハーモス)」だ。同社の多田洋祐社長と古野了大氏に、開発の背景やシステムの特徴などについて聞いた。

人財の「採用と活躍」が重要な経営課題

──企業は、現在の人財市場の変化とどう向き合うべきだと思いますか。

【多田】注目すべきは雇用の流動化が急激に加速してきていることです。それに伴い、当社の調査でも「企業に依存しないキャリア形成が重要だ」という回答が9割に上るなど、個人のキャリア観も変容してきている。さらには、労働人口の減少によって人財獲得競争も厳しさを増しており、多くの企業では「どう人財を採用するか」と並んで、「どう人財を定着させ、活躍してもらうか」が重要な経営課題となっています。

多田洋祐(ただ・ようすけ)
株式会社ビズリーチ
代表取締役社長

【古野】経営層の皆さんも、危機感はあるものの、具体的な手だてがなかなか見つからない。そうした企業が多いように感じます。

【多田】昨今のような状況で社員の定着を促すためには、従業員満足度を上げ、エンゲージメントを高めていくことが重要です。その鍵となるのが、個人の特性や成長を意識した人財配置など戦略的な人財マネジメント。それがひいては生産性の向上にもつながります。

──実現に向けて、まず何から始めるのがいいでしょうか。

【多田】各社員のデータを一貫性を持って捉えることが出発点になります。それぞれの採用時の個性、所属部署の履歴、各部署での目標と評価、受けた研修、さらに現状の課題や将来の希望などを総合的に把握する。そして、それらの多面的な“人財”データをもとに、各社員の特性に合わせた“活躍のストーリー”を描いていくことが重要になります。

【古野】とはいえ、社内のデータが採用関連、評価関連、労務関連、と担当部署ごとに散在している状態では、データ活用に膨大な手間がかかります。そこで、各種データを一元管理しながら、必要な形で可視化できる仕組みをつくれないか。そんな思いで開発したのが当社の人財活用プラットフォーム「HRMOS」になります。

「HRMOS」に蓄積した社員のデータを“採用→評価→育成→配置”に活用することによって、これまで以上に的確な事業戦略、組織戦略の遂行が可能になる。

一元的な人財データが経営・人事・現場の目線をそろえる

──「HRMOS」の特徴を教えてください。

【古野】人財に関するデータの入力・検索のカスタマイズ性が非常に高いのが特徴です。なぜなら、人事戦略の考え方は各社それぞれで、活躍する人財の条件も、重視すべきデータも異なるから。そこで、多様なデータを管理でき、ニーズに即した可視化が行えるようにしています。会社ごとに“らしさ”を生かした活用が可能というわけです。また、データ入力画面は社員自身も自分の手で更新できるよう、直感的に使いやすいインターフェースを採用。さらに、例えば異動で所属部署を変更したら、組織図や経歴などそれと紐付いた箇所にも変更が自動的に反映されるようにして、正確なデータベースを手間をかけずに維持できるようにしています。

さまざまなデータ項目を柔軟に設定、変更することが可能で、自社の目的に合ったデータベースを構築できる。

──導入企業からは、どのような声が聞かれますか。

【古野】人財データを一元的に管理・活用することにより、経営層、人事、マネージャーの間で社員の評価の仕方や人財活用の考え方についての“目線がそろえられた”という声は多いですね。その結果、的確かつスピーディーな判断が可能になり、人財の最適配置が実現できるようになります。また、人事が経営のパートナーとして力を発揮できるようになったという評価もいただいています。

人事は社員の成長と活躍の施策を考える本来の業務へ

【多田】ビジネスにおいては勘や経験も大事ですが、時代が刻々と変化するなか、客観的な情報に基づく判断が欠かせません。マーケティングや商品開発と同様、人事の分野でもデータをもとにファクトを正確に捉え、課題を可視化し、解決のための手を打つことが重要です。実際、当社でも「HRMOS」のサーベイ機能などを使って組織の課題を見いだし、各部署の人財マネジメントの判断材料にしています。

古野了大(ふるの・りょうだい)
株式会社ビズリーチ
執行役員
HRMOS事業部 事業部長

【古野】例えば各部署のパフォーマンスに影響を与える要素の違いなど、データを比較することで見えてくる課題もあります。ただ、かつてはそのためのデータの収集に膨大な時間が必要でした。「HRMOS」なら、それを瞬時に行える。結果、人事担当者は「社員一人一人と向き合い、成長と活躍の施策を考える」という本来の業務に時間を使えるようになります。

──最後に改めて、「HRMOS」を通じて提供したい価値について聞かせてください。

【多田】当社は「すべての人が『自分の可能性』を信じられる社会をつくる」というミッションの下、多様なサービスを展開しています。ミッションの実現には就職、転職に限らず、その人が今所属している会社で自分らしく働きながら、成長していくことも大切です。一方で雇用が流動化し、労働人口が減少する時代、企業はデジタル技術を使って生産性を高め、社員の満足度とパフォーマンスを上げていくことも欠かせません。「HRMOS」はその両方をサポートするツールとなっていますので、まずは、貴社が抱える人財関連の課題やビジョンを、当社にお聞かせいただければと思います。

ビズリーチだからできる採用から人財活用まで一貫したデータ活用