コロナ禍をきっかけに、在宅勤務は一気に広まった。在宅勤務を取り入れた働き方はもはや日常になりつつある。働くことを前提に、より快適に過ごせる住空間を作ろうとリフォームを検討する人が増えている。

家族の暮らしと仕事が隣り合う難しさ

リフォーム市場が活況を迎えている。中古住宅を購入して自分好みにリノベーションする動きは以前から活発だったが、コロナ禍で在宅勤務が広がり、今ある家で「働く場所」をどう確保するかが重要なテーマとなってきた。

これまでの住まいは「生活の拠点」と考えられており、テレワークを想定した仕事スペースがある家はわずか。多くの人はリビングの一角を一時的に仕事場としていたが、家族が視界に入るし生活音が多く、集中しづらい。有事はしのげても、在宅勤務が常態化すると課題が多いだろう。そこで家の中にも、より仕事に集中しやすい環境を整備しようとリフォームを検討する人が増えている。

具体的には、生活空間と仕事の場を分ける間仕切り壁の設置や、遮音壁の設置、Wi-Fiなど通信環境の見直し、コンセントの増設などが挙げられる。1カ月のほとんどが在宅勤務になっているようなら、思い切って間取りを変えて、仕事用に部屋を増室する方法もある。

またリフォームでは住まいそのものの基本性能の向上も考えておきたい。例えば断熱性能が低いと、エアコンをかけても暑い・寒いが改善しにくいだけではなく、光熱費が余計にかかる。在宅時間が長くなると温熱環境は重要な問題になる。特に築年数が経過している物件に住んでいる場合は、併せて検討すべきポイントだろう。

テレワーク用のリフォーム補助制度が開始

需要の高まりを受けて、テレワークのためのリフォームに補助金を出す流れが生まれている。国土交通省は2021年度から、在宅勤務用リフォームの補助金制度をスタートした。これは既存の長期優良住宅化リフォーム推進事業の一環として実施されるもので、戸建てとマンションが共に対象となる。在宅勤務リフォームを考えているなら好機だ。

この事業は「性能向上リフォーム」「三世代同居対応改修」「子育て世帯向け改修」「防災性向上・レジリエンス性向上改修」のいずれかの工事を実施したうえで、リフォーム後に耐震性、省エネ対策、劣化対策において一定の性能基準を満たす場合にのみ、補助金が受けられる。補助率は工事費等の3分の1。リフォーム後の住宅性能のレベルによって補助金の限度額が異なり、最も低い限度額でも一戸あたり最大100万円がもらえることになる。

ただ「仕事のスペースを作りたい」というだけでは、補助対象にはならないので注意が必要だ。このほかにも、リフォーム前のインスペクション(住宅診断)が必須など細かな条件があるため、事前にリフォーム事業者に相談をするといいだろう。また自治体独自で在宅勤務リフォームを支援する取り組みもあるため、チェックしておきたい。

くつろぎの場であるわが家で仕事をすることに抵抗感を持つ人もいるが、在宅勤務はコロナ禍で人との接触を減らし感染リスクを低下させるだけでなく、通勤時間を有効活用できるなど利点も多い。そのメリットを発揮させるためにも、家族が快適に暮らしながら、効率的に働ける環境を整備してみてはどうだろうか。