書類選考や面接では知ることができない、採用候補者の人物像やこれまでの仕事ぶりを同僚や上司など第三者に確認する──。今、中途採用の選考で「リファレンスチェック」を実施する企業が増えてきている。この分野においてオンライン完結型の月額制サービス「back check」を提供して注目を集めるROXXの中嶋汰朗社長に、その特徴や上手な活用法などを聞いた。

自分の成果や強みを上手にアピールできない人もいる

中嶋汰朗(なかじま・たろう)
株式会社ROXX
代表取締役
1992年生まれ。大学在学中の2013年にSCOUTERを設立し、19年にROXXへ社名変更。「back check」のほか、人材紹介会社の収益化に特化した経営支援プラットフォーム「agent bank」の開発、運営を行う。

──採用の現場におけるリファレンスチェックへの関心やニーズについてどう感じますか。

【中嶋】コロナ禍など先の見えづらい状況で、優秀な人を厳選して採用したい。またDXなどへの対応が必須となり、これまで自社にいなかったタイプの人材を採用する必要がある。現在、そうした企業が増えています。まさにそのなかで、採用候補者をより深く知ることができるリファレンスチェックへのニーズが高まっていると感じます。

──リファレンスチェックを実施する利点を改めて聞かせてください。

【中嶋】採用候補者をよく知る人からの客観的な評価を得られるのがやはり最大のメリット。自己申告がベースの書類審査や面接だけで、候補者の能力や資質を正しく見極めるのは難しい。日頃の働きぶりや人間性に触れてきた人に、例えば協調性や仕事への向き合い方などを確認することで、選考の判断材料を大きく増やすことができます。

また、面接の評価は候補者の「伝える力」に依存しがちな面があります。誰もが自分の成果や強みを上手にアピールできるわけではありません。丁寧な仕事で地道に成果を積み上げてきた、埋もれがちだけれど優秀な人に光を当てられることもメリットです。

ただ、これまでリファレンスチェックの対象は、経営層など一部の要職にほぼ限られていました。

──理由は何でしょうか。

【中嶋】調査員が候補者を知る人に対面でヒアリングを行うなど、時間と手間がかかり、コストが高くなってしまうのが主な原因です。そこで、当社の「back check」は一連のプロセスをオンライン上で完結させ、低コストを実現。あらゆる職種、階層の採用活動でリファレンスチェックを実施できる環境を提供しています。

入社後の配属などにも有効に活用できる

──「back check」のサービスの流れなどについて教えてください。

【中嶋】まず導入企業さまの担当者がウェブ上で候補者を登録。そして、候補者本人にリファレンスチェックの実施について同意を得て、上司や同僚など評価を行う推薦者を登録してもらう。その上で、指定した推薦者にメールで回答を依頼します(下図参照)。システムは、個人情報保護法に抵触しないように入念に設計されています。

また質問項目は、業種や採用職種を考慮して、こちらで最適なものを用意しますので、導入企業さまに手間はほとんどかかりません。もちろん、質問の修正や追加も可能です。

──リファレンスチェックを行うことによって選考を辞退する候補者が出るといった心配はありませんか。

【中嶋】そうしたケースもなくはないでしょう。ただ、実際は大半の候補者が、自身を正しく評価してほしいとの思いから問題なく協力してくれます。また、「上司や同僚が推薦を受けて評価するとなると、ネガティブなことを書きにくいのでは」という声もいただきますが、回答内容は本人には非公開。一緒に仕事をしていたからこそわかる候補者の能力や資質について、率直に書いてくれる方がほとんどです。

──「back check」の上手な活用法などはありますか。

【中嶋】旧来型のリファレンスチェックは最終面接の後に行われるのが一般的ですが、「back check」は最終面接の前に利用されるケースがおよそ8割。履歴書の内容やそれまでの面接での受け応えとギャップがある点を確認するなど、面接の場でも活用されています。

もう一つ、入社後の配属や仕事の任せ方を検討する、いわゆる「オンボーディング」の際にも使っている企業がとても多いです。「back check」によって、その人がパフォーマンスを発揮しやすい状況などもわかりますから、採用された人がより早く成果を出していける環境づくりにも役立てられるわけです。

「信頼」が正当に評価される採用市場づくりに貢献を

──導入実績を教えてください。

【中嶋】今年4月時点で累計約1万件のリファレンスチェックを実施してきました。また、おかげさまで多くの導入企業さまから高い評価をいただき、サービスの利用継続率はおよそ98%となっています(※)

もちろん当社自身も導入しており、まだ2年目ですが導入前と比べて早期退職率が3分の1ほどに減っています。一口に“優秀な人材”といっても、企業の成長段階や文化によって求められるものは異なります。「back check」があれば、そうした自社とのマッチングを見ながら採用活動を進められ、入社後も適材適所を実現することが可能になります。

──最後に、「back check」に関心を持つ読者へメッセージをお願いします。

【中嶋】私たちはリファレンスチェックを単なるネガティブチェックのツールだとは考えていません。これまで主に勘と経験のもとで行われてきた採用活動に客観的な視点を取り入れることで、候補者の魅力や強みを多角的にとらえられる──。そうした「back check」を採用の現場に提供し、企業の成長を後押ししたい。さらには、転職希望者が日々の仕事のなかで築いてきた「信頼」が正当に評価され、企業がよりよい人材を確保できる採用市場づくりに貢献したいと考えています。導入企業の皆さまが「back check」を有効活用できるよう、継続的なサポートも行っていますので、興味のある方はぜひお問い合わせいただければと思います。

※2020年10月~2021年4月のサービス利用継続率。