ICTコンサルティングからシステム開発、導入、保守運用まで一気通貫のサービスを提供するJSOL。その部門の一つである法人ビジネスイノベーション事業本部は、高いコンサルティング力、技術力と機動力を誇り、幅広い業種の顧客に対応している。近年は大規模なコンペティションで、大手ベンダーや有名ビジネスコンサルティングファームを抑えて選ばれるケースが増えているという。コロナ禍で日本企業のデジタル化の遅れが浮き彫りになった今、同事業本部では未来のデジタル社会を見据えて、イノベーション創出への取り組みを実施中だ。JSOLにおける法人ビジネスイノベーション事業本部の概要と、働く人の意欲と能力を引き出す組織運営について、JSOL常務執行役員・法人ビジネスイノベーション事業本部長の増田裕一氏に聞いた。

システムやソリューションという「もの」を売るのではない

――まず法人ビジネスイノベーション事業本部の概要について教えてください。

当事業本部では、全ての一般企業を対象に「ビジネストランスフォーメーション」、「ビジネスイノベーション」の支援をしています。営業活動からプリセールス、コンサルティングを経てお客様に最適なご提案をし、その後のICTやDXの適用と保守・運用に至るまで、一気通貫で行うというのが私たちの守備範囲です。

その広範囲な事業領域を社員数約350人(ビジネスパートナーを加えて1000人超)で運営しており、JSOLで最大組織です。

私たちが取り扱うソリューションは多種多彩で、特にSAPにおいては、同社がドイツから日本に参入した当初から共にビジネスを進めてきたこともあり、過去に20回もの「SAPアワード」を受賞している実績があります。また、さまざまなソリューションベンダーからの数多くの受賞実績も有しています。

ただし、JSOLの前身は、コンサルティングも行っている日本総合研究所であることから、あくまでビジネスコンサルティングを主体とした考えが根底にあります。システムやソリューションという「もの」を売るのではなく、まずお客様の経営にとって何が「価値」なのかを徹底的に考え抜いたうえでICT、DXを活用する、というポリシーで事業に取り組んでいます。これが私たちの最大の特長です。

――多くの企業を支援する中で、ICT業界の役割として、どのような変化を感じますか。

これまでのように、SAPなどの単独ソリューションを導入して完成という時代は終わったことを感じます。これからはSAP、ERPだけでなく、社内のシステムや外部のクラウド、取引先のシステムまで、周辺にある多種多様なシステムやプロセス、データを俯瞰して“つなぐ”ことによって、どのような価値を創出できるのか、そのアイデアや発想が問われるでしょう。

私たちは、ICTソリューションという「もの」ではなく、経営に「価値」を提供することが最大の使命だと認識しています。ServiceNowといったクラウド・ソリューションなども駆使しながら、お客様に最適な新しいシステム活用方法を提案する、もしくはデータドリブン型の経営にシフトするための提案をして、それを実現することが私たちの役割になると考えています。

増田裕一(ますだ・ひろかず)
株式会社JSOL
常務執行役員 法人ビジネスイノベーション事業本部長
1998年、神戸大学大学院自然科学研究科電気電子工学専攻修士課程修了。同年、日本総合研究所入社。2002年、神戸大学大学院経営学研究科MBAコース修了。06年、JSOL(旧日本総研ソリューションズ)へ転籍。14年、執行役員 製造ビジネス事業部長。21年から現職。

あらゆるシステムがつながる、デジタル時代のICT人財像

――法人ビジネスイノベーション事業本部が事業を通じて企業のデジタル化などを実現していくうえで、どのような人材を必要としているのでしょうか。

JSOLでは人材を「人財」としています。私たちが求める人財は、「自分で考えて、自分で行動する人」です。一般的に従来は、指示に対する迅速性と正確性が大きな価値でした。しかし、新しく何かを創出する独自性・自発性・スピードがより一層重要な価値となっています。能動的に仕事に関わる人でなければ、価値を創出することは難しいでしょうし、日頃から自分の専門領域だけでなく、さまざまなことに関心や意識を持つ好奇心と、描いた絵を実現するまで粘り強くやり遂げる力も重要です。

私たちは画一的な人財像を設定して、条件に適した人を育てたり求めたりということはせず、ダイバーシティによるマネジメントを志向しています。社員にも日頃から、人との差別化を意識するように伝えており、それを私の言葉で表現するなら、一人ひとりに“とんがり”が欲しいということです。

例えば一つの業界のことを熟知しているとか、財務のことなら誰にも負けない知識があるといった、一芸に秀でた者同士が集まることで、新しい価値を創出できると考えています。

とはいえ、珍しい個性や特性ばかりを求めているのではなく、SAPコンサルタントの上位レイヤー、マネジメント、リーダーも必要ですし、意欲なら誰にも負けないということも強力な武器です。意欲のある人なら、何事にも挑戦し何らかのスキルを身につけてきているものです。

 

JSOLには、部署の垣根を超えて社員同士が気軽に協力・意見交換を行ったり、主体的に取り組む意欲を持つ社員を積極的にサポートしたりする風土がある。またダイバーシティ経営を推進し、女性社員の活躍も後押ししている。

意欲と能力があれば、やりたいことができる職場

――法人ビジネスイノベーション事業本部では、そうした人財が活躍するためにどのように仕事をアサインしているのでしょうか。

基本的には、各社員の“WILL”を主体に決めます。つまり本人が何をしたいのかを最大限、尊重するということです。“WILL”のある人なら、年齢、性別などは一切問いません。キャリア採用の人も同様で、意欲と能力さえあれば、やりたい仕事で活躍できる環境が整っています。

また、社員がイノベーションを起こしていくための仕組みも設けています。その一つが、当事業本部内で実施している「法人みらい会議」。これは社員有志のチームが会社の強みを活かして社会課題を解決するソリューションや、新しいテクノロジーを活用した新規ビジネスを検討し、社内審査でパスしたものには予算をつけて事業化していくという仕組みです。

社外オープンなイノベーションの場として、立教大学と共同で設立した「社会デザイン・ビジネスラボ」という取り組みもあります。こちらは日本を代表する企業から金融機関、インキュベーター、スタートアップ、それに「官・学」までが参加する、社会課題を解決するためのオープンイノベーションの場です。そこで議論した内容を参加各社が自社に持ち帰って上申したり、関連企業が連携してジョイントベンチャーを立ち上げたりするといった動きも始まっています。

企業が抱える課題とは、広い視野で見ると全て社会課題なのです。JSOLでは今、全社を挙げて社会課題へのアプローチに注力しており、お客様への提案メニューにも盛り込んでいます。

――社員の本業の仕事と同時に、イノベーションの取り組みも同時に進めているのですね。

その通りです。私たちは一人の人財が、会社の本業と同時にイノベーションも手がける、「両利き経営」を実践しています。会社の一部門でこれだけ幅広く手がけているのは、世の中に唯一無二ではないかと自負しています。

また組織内は非常にフラットですので、キャリア採用の人には入社後、私たちの色に染まる必要はなく、むしろ違いを出してもらいたい。自分の能力を存分に活かしたい人、技術や経験に自信のある人には、ぜひ私たちの仲間になって、その意欲や能力を存分に発揮し、さまざまなフィールドにチャレンジ頂きたいです。