※以下、ベルシステム24第1ソリューション開発部を(B)、ソニーネットワークコミュニケーションズ法人サービス事業部AI事業推進部を(S)と表記。
「予測分析」は今後の企業成長に不可欠
――「予測分析ツール」の活用がさまざまな業種で進んでいますが、予測分析の重要性についてどのように考えていますか。
【安東(B)】機械学習やプログラミングなどのスキルがなくても簡単に予測分析が行えるソフトウェアが提供されるようになり、ビジネスの多様な場面でAIを活用できるようになった意義はとても大きいと思います。予測分析の精度も高く、生産現場における出荷数や在庫数の予測、製造現場における機械の故障予兆管理、コンタクトセンターの入電数予測など、幅広い領域で活用されるようになっていますね。
今後、予測分析は企業成長に必要不可欠なものとなると考えています。詳しくは後ほどお話ししますが、ベルシステム24では予測分析が現場スーパーバイザー(SV)の分析スキルを標準化することに役立つと期待しています。
――データ活用に関してはどのような課題を抱えていたのでしょうか。
【安東(B)】当社はコンタクトセンターのアウトソーシングサービスを中心とした事業を展開していますが、豊富な経験と高度なスキルを持つコミュニケーターが多く、アウトバウンドの獲得率やインバウンドの顧客単価を上げるなど、セールスにおける高い成功率が強みです。しかし、オペレーション現場のデータ活用についてはベテランSVの経験則やスキルに依存しがちという状況でした。
例えば、アウトバウンド業務で接続率や獲得率の高いグループ(リスト)をどう作るか、インバウンド業務では電話をかけてきたお客様に、数ある商品の中から何を勧めればクロスセル・アップセルの成功率を上げられるか、といった問題に対し、ベテランのSVはこれまでの経験とスキルから、精度の高いソリューションを導き出すことができます。しかし、それもその人がチームを抜けてしまうと、困難になってしまう。こうした状況を改善するため、過去のデータから客観的に分析できる仕組みを模索していました。
【金子(S)】同じような課題を抱える企業は非常に多いと思います。エクセルのデータを見ながら、経験と勘で見込み先のリストアップや来客数、売上高などを予測している担当者はたくさんいるのではないでしょうか。データは蓄積していても、それを活用できていないのが多くの企業の現状です。その要因としては、データサイエンティストと呼ばれる専門家が不足していることも挙げられるでしょう。
専門スキルがなくても使える簡単な操作性を重視
――ベルシステム24では2020年11月に「Prediction One」を導入したそうですが、数多くある予測分析ツールの中から同製品を選んだ理由を教えてください。
【西村(B)】当社は全国37拠点でコンタクトセンターを運営していますが、拠点やチームごとに業務内容や課題が異なります。アウトバウンド業務かインバウンド業務か、あるいはクライアントの業種によっても業務内容が変わってくるからです。そのため、本部の専担者ではなく、現場のSVが使うことを想定し、まずはシンプルで簡単な操作性とリーズナブルなライセンス費用を重視して予測分析ツールを探しました。その条件にマッチしたのが「Prediction One」です。
事前にデータを整形すれば、予測分析自体はわずか3ステップで実行可能。複雑な設定は不要で、SVの経験やスキルに大きく左右されることがないため、分析スキルの標準化も期待できます。
【中津(B)】加えて、高い予測精度や予測理由がわかる点も魅力といえます。予測結果とともに、どういう項目が予測の高さに寄与しているかが提示されるため、その情報をセールストークなどに活かすことができます。チュートリアルやマニュアル、サンプルデータがしっかり用意されていて、それらを使いながら操作を習得できる点も現場のSVが使う当社に適しています。
また、PCごとにインストールするデスクトップアプリなので、クライアント企業の顧客データを外部環境に接続せずに利用できるという、セキュリティ面での強みがあります。
【金子(S)】予測精度に関しては、ソニーグループの各企業で実証実験を重ね、そこで培ったノウハウを投入することによって高い精度を実現しています。グループには金融や不動産、通信、エンターテインメントなどさまざまな事業があるため、多様な業種に適しているのも特徴です。
アウトバンドでの「接続率予測」で高い効果を発揮
――では実際に「Prediction One」をどのように活用し、どのような成果が上がっていますか。
【安東(B)】小規模で実験的に使い始めたのですが、アウトバウンド業務での受注確率予測分析に活用し、お客様に電話がつながるかどうかを測る「接続率予測」で高い効果を発揮しました。「Prediction One」で絞り込んだグループは、ランダムに抽出したグループに比べて接続率が約25%高く、獲得件数も上回り、大きな手応えを感じています。現場のSVからも「予測分析はハードルが高いイメージがあったが、短期間で成果が出せるようになったのは驚き」と好評でした。
このほかにも、問い合わせメールのラベリングにおけるテストマーケティングでは分類精度が約70%に達しており、実際の業務でも十分活用できる分析レベルとなっています。
――社内研修も行っているそうですね。
【中津(B)】はい。「Prediction One」を使って一人で予測分析が行えるようになることを目的に開催しています。テストマーケティングで扱ったデータを加工して「Prediction One」に読み込ませ、予測モデルを作成して結果を算出していますので、実際の業務利用にあたってすぐに役立つ研修になっています。
――今後の方針について教えてください。
【西村(B)】社内研修などを通してデータ・AI活用に関する啓蒙・教育を進めながら、「Prediction One」の現場への導入を順次拡大していく方針です。アウトバウンド業務に関しては、前述したように接続率予測で効果が出ているため、さらに獲得率の向上につながるような予測分析を目指していきたいですね。インバウンド業務に関してはまだ実績はありませんが、実験を重ねて効果的な分析方法を見つけていきたいと思います。
【金子(S)】ソニーグループの企業でも属人的な営業を「Prediction One」によって改革し、営業の効率化と成約率の向上を実現しています。こうした営業現場はもちろん、財務や人事の領域でも予測分析が使われるようになっています。「Prediction One」の活用を足がかりにビジネスのイノベーションや働き方改革につなげていっていただきたいですね。