“本当に必要なもの”を「仕様書」に落とし込む
──企業は間接経費の購買でどんな課題を抱えていますか。
【萬田】一般に直接経費の購買は金額が大きく、購入量も多いため、専任の部署を置き、戦略的に取り組んでいる企業がほとんどでしょう。一方、間接経費の領域は購入するモノ、サービスが多岐にわたるにもかかわらず、少数の社員が兼務で担当していることが少なくありません。そのため売り手企業との間の情報格差が大きく、細かな交渉もできない。結果的に、従来の取引や購買を単に繰り返さざるを得ないという場合が多いのです。
──どうすれば状況を変えられますか。
【萬田】まず、自社にとって“本当に必要なもの”を見極めることが重要です。実際、当社に間接経費の圧縮や適正化を相談に来られた企業を精査してみると、明らかにオーバースペックだったり、不要なものを購入しているケースが多く見られます。「なぜこの内容で買っているのですか」とお聞きすると、「昔からこれでお世話になっている」「あそこはサービスがいいんで」といった答えが返ってくる。ここに、無駄や不経済が生じてしまう原因があります。
──ディーコープのサービス内容について教えてください。
【萬田】最初のステップは購買実態の把握です。直接経費ならあり得ないことですが、間接経費については何にどれだけ使っているか正確に把握できていない企業も多い。そこで、私たちが請求書や契約書を見せていただき、状況を整理。並行してご担当者へのヒアリングも行いながら、間接材・サービスに求める内容やスペック、条件を定義した「仕様書」をまとめていきます。お話しした“本当に必要なもの”を再定義するわけです。
──その仕様書をもとに、売り手企業、いわゆるサプライヤーを選定していくわけですね。
【萬田】そのとおりです。仕様書が大事なのは、それが同じ土俵で売り手企業を比較するツールになるからです。見積もり段階でよくあるのが「価格は少し高いですが、無料でオプションを付けますよ」といったケース。もちろん売り手企業の選定にあたって金額以外の部分が重要なこともあるでしょう。ただ、同じ土俵で売り手企業を比較できる状況をつくっておかないと、間接経費の適正化は思うように進みません。
当社はこれまで間接経費の分野に的を絞り、20年間、2800社以上のお客さまをサポートしてきました。そのなかで蓄積してきた仕様書づくりのノウハウをご提供できるのが他社にはない強みだと考えています。
──サポートした企業からは、どんな声が聞かれますか。
【萬田】「本業でどう利益を出すか苦労しているなか、間接経費の分野から短期間でここまで利益を生み出せるとは思わなかった」という声を多くいただいています。お客さまの企業規模にもよりますが、利益創出の効果は数千万円から数億円単位になることもあります。なお、当社への費用は成功報酬の形でいただいていますから、お客さまに新たな支出は発生しません。
購買業務が属人化しない環境の整備をサポート
──仕様書づくりのほかで、ディーコープの特徴を教えてください。
【萬田】何より幅広い選択肢から、最適な売り手企業候補を提案できることです。現在、1万3000社を超える売り手企業が当社に登録しており、取扱品目はおよそ500。各種設備・機器、サービス、エネルギー関連など多種多様な分野を扱っています。
そして、一過性のコスト削減ではなく、お客さま企業が適正な購買を続けられる“仕組み”を提供するというのが当社の基本的な考えです。作成した仕様書などはお渡ししますから、購買活動が属人化せず、ご担当者が変わっても容易に業務を引き継ぐことができます。
一方で、当社には売り手企業からも「新規取引先を探すのが難しいなか、明確な条件のもと、多数の見込み顧客にリーチできるのはありがたい」という声をいただいています。
──コロナ禍で企業の動きに変化は見られますか。
【萬田】これまで以上に利益確保への意識が高まり、当社への問い合わせの数も増えています。そのなかで私たちも、リモートワークを徹底するようになりました。当初、直接会わないとお客さまの満足度が下がるのではないかと心配しましたが、やってみると打ち合わせなども非常にスムーズ。お客さまからも好評ですので、今後オンラインでのサービス提供を充実させていく考えです。
──経営トップとして萬田社長が組織運営や人材育成で重視していることを教えてください。
【萬田】自身を振り返ると、足取り軽く会社に向かっていたのは、自ら目標を定め、新たなことに挑戦しているときだったと感じます。だから、積極的に手を挙げ、行動する社員は全面的に支援していきたい。チャレンジ精神はソフトバンクグループの文化の根幹でもありますから大切にしたいと考えています。
──ディーコープとして、今後どのようなことに取り組んでいきますか。
【萬田】おかげさまで間接経費の適正化支援一筋に事業を続け、20周年を迎えました。今後は、売り手企業に役立つ事業も展開したいですし、コスト最適化と生産性向上は企業において同じ方が責任者をされていることが多いので、生産性向上に資するサービスも新たに開発していきたいと思っています。次の20年に向け、さらなる飛躍を目指しますのでぜひご期待ください。