「ニューノーマル」への移行が進む現在、より良い働き方、生き方を実現するために必要な「心と身体のアップデート」とは──。日本マイクロソフトで長年にわたって存在感を示し、業務執行役員を務めたのち、2020年に独立。年間300回のプレゼンテーションをこなす「プレゼンのスペシャリスト」である澤円氏は「自分という“個”にもっと意識を向けることが大切」と説く。
澤円(さわ・まどか)
株式会社圓窓 代表取締役
立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT子会社を経て、1997年にマイクロソフト(現・日本マイクロソフト)入社。2006年には、卓越した社員にのみビル・ゲイツ氏が授与する「Chairman's Award」を受賞した。11年よりマイクロソフトテクノロジーセンター・センター長を務め、20年に退職。イベントなどで年300回ものプレンゼンをこなす「スペシャリスト」として知られるほか、コンサルティング、オンラインサロンの運営など、その活動は多岐にわたる。

世界はリセットされた。だからこそマインドセットも刷新を

──コロナ禍の社会変化をどのようにとらえていますか。

【澤】COVID-19(新型コロナウイルス感染症)によって、いわば「世界的な同時リセット」が起こりました。このようなスケールで人々に影響を及ぼした出来事が起こったのは、おそらくインターネットが一般にも広まった1995年以来でしょう。その時代に自身をうまくアップデートし、リセット後の社会に適応した人たちが大きく成長しました。例えばGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)などがそうです。

ただし今回のコロナ禍は人体に悪影響を与えるウイルスが原因なので1995年とはリセットの意味合いが異なりますから、「どうしたらいいのか」と立ち止まってしまった人も多いのではないでしょうか。だからこそ組織や場所といった制約から一度離れて、「自分に正直に生きていく」ことや、ありたい自分、すなわち「Being」は何かを考える機会と捉えることもできるはずです。

──ビジネスパーソンはどんな行動を起こすべきでしょうか。

【澤】ビジネスや暮らしの環境がまったく変わってしまい、今まで私たちを支えてくれていた社会システムが機能不全を起こしてしまいました。だからこそ、自分自身の「個」に対するマインドセットの置き換えが必要です。そしてニューノーマルにふさわしい「Being」を手に入れるために何をアップデートしなければならないかを明らかにしていく。こうして自分を中心に据えた「個人力」を磨き上げていくことが、これからもっと求められるでしょう。

幅広いターゲットに向けられた情報をそのまま受け取っていいのか?

──長年勤務した日本マイクロソフトを離れたあと、ますます「個人力」を発揮した働き方を実践されています。多忙な身ですから、やはり健康への配慮は欠かせないのでしょうか。

【澤】もちろんです。ボク自身、以前からその重要性についてはたびたび言及してきましたし、身体を鍛えることが好きなんです。とくに現在は一人で事業を営んでいますから、ボクに何かがあったときに代わりになる人はいない。基本的に日々のトレーニングを欠かしませんし、身体に良いものを摂る、バランスを整えるといったことを心がけながら、常に自分の身体との対話を続けています。

──身体に対する意識や取り組みをアップデートし続けているのですね。

【澤】ええ。自分に必要な栄養素については、ある程度把握しているつもりです。トレーニング効果の最大化を図ったり、疲労からスムーズに回復したりするために、意識的にサプリメントで栄養素を摂取してきました。ただそのときに感じていたのは、複数のサプリメントを使っていると、容器を置くためのスペースを確保したり、フタを開けて取り出したりするのが意外に面倒だなということでした。そうしたことが要因でなかなか意識に定着しないのか、たいてい家を出てしばらくしてから思い出すんです。「あ、持ってくるのを忘れた」(笑)と。

──分析結果に基づき、一人ひとりに最適な栄養素を組み合わせたサプリメントを提案する「パーソナルワン」の印象はいかがでしたか。

【澤】健康管理にとって、パーソナライズされた信頼性の高い情報が得られるのは心強いですね。例えば「中高年向け」「男性向け・女性向け」などの大きなくくりの情報があったとして、体質や生活習慣は個々で異なりますから、そのまま受け取ることがベストとは限らないでしょう。そう考えると、やはりパーソナライズされた情報の取得を前提として健康管理に取り組むのが理想的だと思います。

分析結果をオンラインで閲覧できる「パーソナルワン」個人用ページ。不足している栄養素や健康状態の情報がわかりやすくまとめられている。

「パーソナルワン」の分析でも、いくつか「やっぱりそうか」と思った項目がありました。例を挙げるとDHA(ドコサヘキサエン酸)はやや不足気味だという自覚もあって、積極的に摂らなきゃと思っていたところ、その通りの結果でした。青魚は好きなのでわりと食べているんですけどね。検査機関での採血などを受けなくてもいいし、オンラインでのアンケートと尿サンプルの郵送だけで完結できることに驚きました。実際に手元に届いた「パーソナルワン」は、1回分ずつ個包装で手軽に持ち歩けますし、ケースは一つだけ。容器をいくつも管理しなくていいので助かっています。

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個包装の「パーソナルワン」。名前やサプリメントの組み合わせが印刷されている。栄養素に適した摂取のタイミングを考慮して、1日分を「1回目」(朝)と「2回目」(夜)に分割。効果的な摂取をサポートする。

これからの時代に欠かせないのは「主語を小さくする」こと

──パーソナライズされた情報によって、どんな前向きな変化が期待できますか。

【澤】年齢を重ねるごとに自分の身体に対する責任はどんどん大きくなっていきます。身体に気を使えば使うほど、人生において楽しく過ごせる期間を長くすることができる。QOL(クオリティ・オブ・ライフ)のことを考えれば、細かなメンテナンスを実践していくことがより重要な意味をもつと思います。

健康を損なうということは、身体が「ゼロ」や「マイナス」の状態になるということですよね。バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠といった基本的なことに加えてサプリメントを摂るといったことは、ゼロを「プラス」にする、あるいはマイナスにならないように抑止効果が働くといった面があると思います。それが自分にとって楽しいこと、幸せを感じることに集中できる環境をつくることにつながる。逆に不摂生などで身体がマイナスの状態になってしまったら、必死になってまずはゼロに戻さなければならない。人生を楽しむ余裕が少なくなるのは、もったいないですよね。

この「パーソナルワン」のように一人ひとりの身体を数値として「見える化」するのは、意識を高めるのに大きく役立つと思います。ボクがコミュニケーションについて話をするときによく言う「主語を小さくすることが大事」にも通じる。「中高年に必要」と「あなたに必要」では響き方がまったく違います。先進的な企業がパーソナライズによってユーザーエクスペリエンスの充実度を高めていることからもわかるように、これからの健康管理においても欠かせない視点でしょう。

──最後に、私たちが前向きに生きるための「ヒント」をお願いします。

【澤】ボクは2021年、千葉県・九十九里を拠点とする「半移住」生活を本格化させます。本当に心を楽にして過ごせる環境で、もはやオンとオフという概念もありません。働く時間、プライベートな時間と細かく刻むのではなく、すべてを「自分のライフ」と表現するとしっくりくる気がしますね。24時間を、いかに快適に過ごせるようにデザインするかがテーマ。

組織に属している人に置き換えるなら、「何をしなければならないか」を考えるよりも、「何をやめればいいか」を決めたらいいと思います。ムダな会議、ムダな書類──。健康管理においても、自分に必要な栄養素を効率よく摂ることはムダを省けますよね。たくさんのムダを省いて捻出した時間を、もっと価値のあるサービスのアイデアを練るために使ったり、趣味など好きなことをして過ごしたり。「自分が豊かになれるかどうか」を基準に、限られた時間の活用を考えてみてほしいと思います。

「圓窓」オフィスの一画にセットされた動画配信用の機器。テクノロジーの世界に身を置いてきた澤氏らしい充実ぶりだ。これも「個の追求」の一つのカタチと言える。

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