事業承継を考えるのに早過ぎるということはない
ひと言で事業承継といっても「親族内承継」「親族外承継」、そして「M&A」など、さまざまな選択肢がある。いざ事業承継の問題に直面したとき、どれを選べばよいか悩む経営者は多い。では最良の選択肢とは何か、新宿総合会計事務所グループの清水智明氏と藤本江里子氏に話を聞いた。
「事業承継をゴールという形で考える方が多いようですが、実はその後のほうが重要なのです。どんな選択肢を選べば会社が発展し永続していけるのか。またファミリー(創業家)が繁栄していけるのか。そうした観点で事業承継を考えるのがベストだと思います」(清水氏)
一方、最良の選択肢を選ぶためには早めに事業承継に着手する必要があると藤本氏は語る。
「事業承継を考えるのに早過ぎるということはありません。逆に、緊急事態が起きてからでは遅過ぎる。事業承継をいつ考え始めるべきかというと、その人が社長になったその日からです。経営者として、会社の10年先、20年先を見据えて経営をされるべきでしょう」(藤本氏)
ただ現実は、緊急事態に直面し、承継をしなければならないという経営者も多い。そうした経営者のために同社では「事業承継の計画立案」から「後継者の選定・育成」「財務体質の健全化や内部統制の構築」「金融支援」まで事業承継に関する対策をワンパッケージで提供している。
税理士だけでなく、公認会計士や弁護士、社会保険労務士、司法書士、行政書士など事業承継に特化した専門家が在籍するのも同社の強みのひとつ。同社では他社では取り組みが少ないデューデリジェンスについてのサービス、「セルサイドDD®(デューデリジェンス)」を提供する。
自社の価値を知らないと希望する条件で売れないことも
「一般的にデューデリジェンスとは、買い手企業が売り手企業に対して行う査定。売り手側の価値やリスクを調査するために行われます」(藤本氏)
だが、セルサイドDD®は逆に売り手企業が自らの企業価値を高めるために実施するのだという。
「最初に取り組むべきなのが自社の企業価値を知ることです。お客様の中には自社に対して“価値がない、だから廃業するしかない”と考える方がいらっしゃいます。でも実際に聞き取りをしてみると独自の仕入れルートを持っていたり、専門性の高い人材を抱えていたりと、さまざまな強みを持っている場合が多いのです。また逆に弱みがある場合でも、売却までに克服し、強みを伸ばすことで、会社を高値で売却することが可能になります」(藤本氏)
では後継者育成についてはどうだろうか。同社では次世代経営者塾「若社長®」というサービスを展開している。
「塾では次世代の後継者の皆さんに集まっていただき、自分が経営者になったらこういうことをやっていきたい、という夢を明確化してもらいます。次にその夢を実現するためのアクションプラン、障害への対処法、キャッシュフローや損益など数字を当てはめての具体的な計画を作成。そうして塾の最後には事業プランが出来上がるというわけです」(清水氏)
受講者はすでに後継者として経営に当たっている人やこれからの事業承継を見据えている後継者や幹部候補生など多種多様だという。
「事業承継では2代目経営者で失敗する事例がたくさんありますが、その原因は決断力・判断力のトレーニングができていないこと。若社長®はそうした能力を鍛え、自身の思考を醸成する場です」(清水氏)
承継関係者全員にヒアリングして全体像を分析する
上図では事業承継の各局面における同社のサービスを紹介している。
「事業承継を税務面だけで考える方が非常に多いのですが、それではうまくいきません。重要なのはまず全体を見ること。経営者の方はもちろん、ご家族やご親族の方々はどう思っているのか。弊社では関係者全員にもれなくヒアリングを行い、現状分析を行っています。大切なのは関係者の皆さんがハッピーになること。その上でどんな事業承継の形がよいのか、どうすれば適正な税額になるのか、といった提案をさせていただいています」(藤本氏)
事業承継は税務だけではなく、親族間の関係も含めたきめ細かな立案が大事だという。
また、同社では企業の規模にかかわらず、特例の事業承継税制を活用して経営者の相続に至るまでの税負担を軽くする事案も多く手がけている。経営者に寄り添い最良の選択肢を提供する。それが同社のモットーであり強みなのだ。