100万台以上の車両を管理し、5万社を超える顧客企業をサポートする自動車リース業界のリーディングカンパニー、住友三井オートサービス(SMAS)。同社は現在、オートサービスから「モビリティサービス」への進化を掲げ、新たな価値の創造に力を注いでいる。その具体的な取り組みや今後の戦略について露口章社長に聞いた。

データと生の声をもとに新たなサービスを発想

──社用車を利用する企業のニーズの変化についてどう見ていますか。

【露口】より効率的にクルマを使いたいというニーズはやはり高まっています。情報技術の発達などにより、かつてと比べて社用車の稼働状況を細かく把握できる環境が生まれる中で、データに基づき保有台数の最適化やコストの削減を実現したいと考えるお客さまが増えてきました。

また最近は、社用車の効率利用に加え、レンタカーやタクシー、鉄道などを賢く組み合わせて、移動の利便性や機動力を高めたいという動きも広がっています。当社がオートサービスからモビリティサービスへの進化を掲げているのは、まさにそうした背景があるからです。社用車のリースに留まらず、企業活動における移動全般の課題を解決していく──。そうした“ビジネスMaaS”の分野を確立し、けん引していきたいと考えています。

露口 章(つゆぐち・あきら)
住友三井オートサービス株式会社
代表取締役社長
1979年京都大学経済学部を卒業し、住友商事入社。同社執行役員、住友三井オートサービス専務執行役員などを経て、2016年より現職。

──課題解決にあたってのSMASの特徴、強みは何ですか。

【露口】リースしている約100万台の車両から得られる運行や車両整備に関する大量のデータはまず貴重な財産。一方で、当社の営業担当は日々現場でお客さまの課題、困りごとと向き合っていますから、データと生の声を掛け合わせて新たなサービスを発想することが可能です。さらにドライバーだけではなく、管理部門や経営部門からもニーズを吸い上げる体制があり、総合的な視点から課題解決の方法を探ることができる。確かなデータと対話力、これが私たちの強みだと認識しています。

──具体的なサービスについて教えてください。

【露口】昨年提供を開始した「モビリティパスポート」は、スマホなどで簡単に社用車を予約したり、空きがない場合はレンタカーを手配したりできる仕組みで、まさしく社用車の枠を超えたビジネスMaaSアプリだと自負しています。運転日報や社用車の稼働実績も管理できるため、管理部門の方たちからも「業務改善に使える」と好評をいただいています。

一方、自動車部品メーカーのデンソーテンと開発した「SMASスマートコネクト」は車載器から取得する動画やデータを活用するサービス。リアルタイムで車両の位置情報をつかんだり、運転挙動をもとに安全運転に関する評価を行ったり、多彩な機能を搭載しています。

どちらもお客さまの潜在的なニーズにまで応えたいと開発したサービスですから、「よくぞこういうサービスをつくってくれた」と言っていただくことが何より励みになっています。

お客さまのビジネスに関心を持つことが不可欠

──新たな価値を生み出すためには、どのような意識が大事になりますか。

【露口】例えば、リースした車両がお客さまのもとで何をどのように運んでいるのか。いつ、どこを走っているのか。そうしたことに興味、関心を持つことは不可欠でしょう。イノベーションのヒントは必ず現場にあるからです。

お話ししたとおり、幸い当社は企業活動におけるさまざまな移動の現場から、常に新たな情報や知見を得ています。それらはサービスの開発やアップデートに大いに役に立つ。いま、自動車業界は100年に一度の変革期といわれますが、独自のリアルデータを持つ当社にとって激動の時代はむしろチャンスだととらえています。

──最後に、今後のビジョンや戦略について聞かせてください。

【露口】ますます重要になっている環境への配慮や安全・安心の確保といったテーマにもしっかり目を向けながら、今後もニーズの一歩先を行くオリジナルのサービスを生み出していきたい。そのためにはICTやIoTなどのテクノロジーの活用も大事な要件と考え、現在社内でも専門の人材を育成し、ノウハウ、スキルの蓄積を図っています。

今回のコロナ禍のように感染症が拡大しても、また自然災害に見舞われても、社会には決して止めることができない人やモノの移動が存在します。それを支えていくことが私たちの使命ですから、どんな相談ごとでも遠慮なくお声かけください。既存事業の枠組みにとらわられず、モビリティサービスの可能性を追求し、全力でサポートさせていただきます。

■ユーザー企業より

ドライバーのクセまで把握でき具体的な安全指導が可能に

コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社

総務部 健康安全推進課 健康安全推進リーダー
小池隆介氏
山田真澄氏

当社にとって極めて重要な課題である交通事故の撲滅。それを実現する手段の一つとして、約5800台の配送トラックに住友三井オートサービスの「SMASスマートコネクト」を導入しました。決め手の一つは後退時の事故の予防に対応していたこと。これは他社のサービスにはない機能でした。

危険挙動が発生した際に自動でアラートが出るなど多様な機能を持つこのサービスを導入し、ドライバーの安全運転への意識が一段階向上したように思います。また、車載器によって各ドライバーの運転のクセなども分析、評価される。これまで管理者が把握できていなかった部分が可視化される点に大きな可能性を感じています。データを使って個別に具体的な安全指導ができますし、よくある事例を現場全体に周知するのにも有効です。

ユーザー企業の声を積極的に取り入れ、新たなサービスを生み出してくれる。これが住友三井オートサービスへの印象です。その意味で私たちも、引き続き要望や意見をどんどん言っていきたい。それがお互いにとってのメリットになると思っています。

■パートナー企業より

共にユーザーの期待を超えるサービスを

株式会社デンソーテン

コネクティッド事業本部 執行職
稲葉一郎氏
(写真右)

株式会社デンソー

コネクティッドシステム事業推進部
コネクティッドシステム開発室 担当次長
上野武美氏
(写真左)

住友三井オートサービスさまとはテレマティクス分野で10年来のパートナーです。「未来に向かうお客さまのニーズを見据える」姿勢に共感し、最前線でつかまれる変化、多様化するユーザー指向を課題として提供いただき、ユーザーの期待を超えるサービスの企画を共に進め、両社の強みを生かしたタッグを組んで「モビリティサービスによる幸福度の向上」に一緒に取り組ませていただきたいと考えています。