Jパワー(電源開発)は、国内だけでなく、世界各国で電力関連の事業を広く展開している。今回、多くの国々でプロジェクトに携わってきた同社の尾ノ井芳樹副社長と、IT会社役員でタレントの厚切りジェイソンさんが対談。再生可能エネルギーの重要性やグローバルビジネスを成功させる条件などについて語り合った。

再生可能エネルギー事業の拡大は重要な経営テーマ

尾ノ井芳樹(おのい・よしき)
Jパワー(電源開発株式会社)
取締役副社長執行役員
1979年京都大学工学部を卒業し、電源開発入社。設備企画部長、取締役常務執行役員などを経て、2019年より現職。グローバル事業を数多く担当し、タイで9件の発電所プロジェクトを同時並行で指揮した経験もある。

【ジェイソン】そもそもJパワーさんは、いつから日本以外でも事業を?

【尾ノ井】すでに60年ほど前から取り組んでいます。当初は開発途上国で発電や送電技術のコンサルティングを手がけながら現地のエンジニアの育成なども支援し、その後は各国で発電事業にも参画しています。ジェイソンさんゆかりのイリノイ州をはじめ、米国でも10カ所以上に発電所を所有しており、日本の電力会社では珍しい存在です。

【ジェイソン】イリノイには住んでいたこともあります。途上国や新興国以外でもビジネスをしているんですね。国や地域によって電力需要はずいぶん異なるでしょう。

【尾ノ井】そうですね。産業発展や経済成長のために安定したエネルギー供給が求められている地域もあれば、電力自由化で市場が発達している国もある。それぞれのニーズに応える形で事業を展開していますし、新規案件も多数あります。

【ジェイソン】なるほど。ただ電力というのは一種のコモディティ商品だから、特に先進国では価格競争も激しくなりますね。そうした場所でも事業を行ったり、新たに参入する理由は何ですか。

【尾ノ井】鋭い質問です。市場のプレイヤーが固定されると、技術などの進歩が滞る可能性があります。すると社会や時代が変化したとき、それにふさわしいエネルギー供給ができなくなってしまう。そうした事態を引き起こさないためにも、事業者が挑戦、努力して、新たな技術や知見を生み出していくことが大切であり、私たちの責任であると考えています。

厚切りジェイソン(あつぎり・じぇいそん)
タレント/IT会社役員
米国出身、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校大学院卒業。2005年初来日。11年に再来日しIT企業に勤務しながら14年芸人デビュー。芸歴4カ月にして『R-1ぐらんぷり2015』決勝進出を果たす。

【ジェイソン】確かに再生可能エネルギーの分野などはまだまだ進化が期待されます。気候変動の問題はやっぱり深刻で、昨年の米国での大規模な山火事もその影響が指摘されている。ワシントン州に住む私の両親も、「家の中でも煙で咳き込むほどだった」と言っていました。

【尾ノ井】当社にとっても再生可能エネルギーの拡大はまさに重要なテーマの一つです。米国では大規模太陽光、豪州では陸上風力の開発を始めています。参画している英国東部の北海での洋上風力事業は今、建設が進められています。

【ジェイソン】プロジェクトの初期段階から関わっているわけですね。

【尾ノ井】そうすることで多様なノウハウを蓄積したいと考えています。例えば北ヨーロッパは遠浅の海が多く、洋上風力発電に向いているため、先進的な技術が開発されているんです。もともと当社は、設立当時から多くの水力発電所を手がけ、風力発電所や地熱発電所も運営する再生可能エネルギーの先駆者。これまで培ってきたものと新たな技術やノウハウを融合させ、それを国内や世界で生かしていきたいと思っています。

Jパワーグループの連結発電設備出力
(持分出力ベース)

2000年より海外発電事業に本格参入し、現在タイをはじめとするアジアや米国など4カ国・地域で発電設備の営業運転を実施。Jパワーグループの連結発電設備出力(持分出力ベース)のうち、海外が30%弱を占めている。

エネルギーの安定供給はSDGsの達成にも不可欠

【ジェイソン】僕は今の会社に転職する前、米国のIT企業の日本法人で責任者を務めていましたが、正直苦労することも多かったです。Jパワーさんは、自国以外でビジネスをするにあたって大事にしていることはありますか。

【尾ノ井】社名のとおり、当社の事業は現地での“開発”を伴うことが多いので、まずは地域社会との共生。地域の人たちの理解を得て、一緒に物事を進めていくようにしています。あとはそれぞれの国の制度や仕組み、また先方の論理に合わせた提案を行うことですね。

【ジェイソン】それ、よくわかります。ITの世界も同じで、自分たちの考えや実績を押し付けても受け入れてもらえない。同じ技術やシステムでも、国や地域によって使い方、とらえ方が違うんです。

【尾ノ井】やはりそうですか。例えばエネルギーの世界でカーボンニュートラルが重要だと言っても、相手側にはそれぞれの国や地域の事情がある。それを踏まえて価値を提供していく必要があります。

Jパワーは、英国東部の北海にて進む「トライトン・ノール洋上風力発電所」のプロジェクトに建設段階から参画している。発電容量は風車90基で合計約86万kW。運転開始は2021年の予定。

【ジェイソン】常に最新の技術やシステムを提供すればいいわけでもない。

【尾ノ井】おっしゃるとおり。地球環境とエネルギーの調和という大きな目標があっても、それを達成するトランザクション、やり方は一つではない。いきなりすべてを再生可能エネルギーにするわけにはいきません。

【ジェイソン】今と未来の両方に目を向けて経営判断をしていくというのは、どんなビジネスでも大事ですね。一方で最近は投資家の意識も変わってきて、ESG投資なども拡大しています。特にエネルギーの分野は適切な対応が求められそうです。

【尾ノ井】はい。お話ししたカーボンニュートラルの推進をはじめ、多面的に取り組んでいます。加えてSDGsのあらゆる目標達成にはエネルギーの安定供給が不可欠だとも認識しています。その一端を担うべく、繰り返しになりますが個別の多様なニーズに応えられる力をしっかりつけていきたい。Jパワーでは20年ほど前から企業理念として「人々の求めるエネルギーを不断に提供し、日本と世界の持続可能な発展に貢献する」を掲げています。ストレートな言葉ですが、まさにこれこそが私たちの役割だと思って毎日仕事をしています。

【ジェイソン】応援したいですね。今日はお話をして、IT業界と電力業界には共通点が多いこともわかってとても興味深かったです。今度転職するときは、電力業界だな(笑)。

【尾ノ井】こちらこそ今日はありがとうございました。さらなるご活躍を期待しています。