コロナ禍によって、私たちの暮らしは大きな変革を迫られた。在宅勤務や外出抑制で、多くの人は自宅で過ごす時間が格段に長くなった。そのことは、わが家の“居心地”に改めて気付かされる機会にもなっただろう。住宅とは本来、家族が一番気持ちよく、健やかに過ごせる場所であるべきだ。そのために、住まいに必要なこととは何だろうか。

WHOが住まいの断熱を勧告
冬の室温を18度以上に

WHO(世界保健機関)は2018年に「住まいと健康に関するガイドライン」を公表した。この中で、5項目の勧告を行っている。まず、感染症予防のための「過密対策」。そして「寒さ対策と断熱」と「暑さ対策」、不測のケガや事故を防ぐ「安全」、高齢者や障がい者も暮らしやすい「バリアフリー(アクセシビリティー)」の五つだ。特に寒さについては、寒冷期の室温を18度以上に保つことを強く推奨している。

日本サステナブル建築協会が国土交通省の補助事業として行った調査(※)も、室温が健康に与える影響の大きさを指摘する。この調査では、室温が低いほど血圧が高くなる傾向がみられた。また、室温18度未満の住宅に住む人は、18度以上の住宅に住む人に比べ、総コレステロール値が基準範囲を超える人が約2.6倍、心電図に異常所見がある人が約1.9倍に上ったという。

快適な室温を保つには、エアコンなどの空調機に頼るだけでなく、住宅そのものの気密性・断熱性を高めることが極めて重要だ。高気密高断熱の建物では、冷暖房がよく効くだけでなく、空間の温度ムラも小さくなる。床や壁の表面温度も重要で、体感温度を大きく左右する要因だ。

前述の調査では、足元が寒い家に住む人には高血圧や糖尿病が多いことが報告されている。こうした基礎疾患が新型コロナの重症化につながりやすいことも知られてきた。また同じ調査で、断熱性の高い家では身体活動が活発になる、夜間頻尿が改善されるなどの知見も得られている。住まいと健康の関係は深い。

換気はもちろん空気の質にも着目

日本の新築住宅には24時間換気設備の設置が義務づけられており、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドの放散に対しても、一定の対策が取られている。ただ、アレルギーの原因になるのはホルムアルデヒドだけではない点には注意しておきたい。

感染症対策にもシックハウス対策にも重要なのは換気だ。ハウスメーカー各社は換気システムや室内の空気の質にも気を配っているので、住まい選びの着眼点の一つになるだろう。これからの家づくりには、今まで以上に、“健康”や“快適”が重視されることになりそうだ。

※スマートウェルネス住宅等推進事業「断熱改修等による居住者の健康への影響調査」一般社団法人日本サステナブル建築協会