膨大なデータを有するものの、既存システムの中にある状態
【若原】DXを推進するうえではデータ活用が重要な意味を持ってきますが、御社はその点に関して、どのようなことを課題と捉えていたのでしょうか。
【小栗】当社はさまざまなデータを保有しているものの、各システムの中で個別に管理しており、個々に閉ざされた状態でした。必要に応じて有益なデータを抽出・分析したいと思っていたのですが、いろいろと試行してみたものの、手間と時間ばかりを費やす状況でした。2017年には従来の守りのITから攻めのITへのシフトを明確にするため、情報システム部をITイノベーション部に改組し、データの活用にも取り組んできました。20年度にはさらに組織が拡大し、DX本部が設立されます。各事業部門におけるニーズを把握し、データマネジメント・データ活用をさらに活性化させることが我々の役割です。
1つのメルマガ送信に8時間も要する工程を刷新
【若原】具体的には、どういった方面で活用しているのでしょうか。
【小栗】一例として挙げられるのは、ワークスタイリング(三井不動産が展開するシェアオフィス・レンタルオフィス事業)のマーケティングにおける活用ですね。それまではメルマガ施策や売上実績管理、データ分析といった各業務の担当者が個別でデータベースにその都度アクセスし、必要なものを抽出・加工するという作業を行っており、工数が多く非効率でした。たとえばメルマガを発行するにも、平均で8時間程度を費やしていました。顧客層を絞り込み、その対象者を特定してメールアドレスを確認するという流れを経るのですが、担当者が手作業で行っているので工数が多いうえに、確認にも慎重さが求められていたわけです。そこで、各業務のデータをトレジャーデータのCDPに集約してツールと連携させ、工数を大幅に減らせました。
マーケティングオートメーションの実現
【若原】なぜ、ワークスタイリング事業での活用をお考えになったのでしょうか。
【小栗】ワークスタイリングというサービスへの登録はプライベートのメールアドレスではなく、ビジネスで使用しているアカウントなので、メルマガを送ると反応率が高いということは把握していました。仕事中に届いたメルマガのタイトルを見て、「訪問先の近くに新しいワークスタイリングのオフィスができたのか!」と気軽に開いてもらえるケースが多く、マーケティングオートメーション(MA)との親和性が高いのです。戦略的にMAを展開できれば、お客様のニーズにきめ細かく応えられ、利用率の向上につながるはずだと捉えていました。実際に円滑に導入が進み、まさにMAと言える取り組みになりました。先述したように、従来は1つのシナリオに沿ったメルマガ送信にも骨を折りましたが、今後は新規登録時、初回利用時、イベント参加時などといった10通り以上に及ぶシナリオのメルマガを自動的に送信できます。
【若原】他にも、御社のビジネスにおける様々なシーンに活用が広がっていきそうですね。
【小栗】現状は「CDPの基本的な使い方がわかった」というレベルにすぎませんが、我々にとっては大きな成果です。今後は、社内各部門で活用を広げていきたいと考えています。こうしてDXが推進されれば、不動産の開発スタイルも変貌するかもしれません。今はその分野の経験者が自らの経験に基づいて構想を練り重要な判断をくだしていますが、施設内での人の移動状況などといったデータ分析が開発に生かされることも考えられます。
今回の記事に載せきれなかった三井不動産のDX戦略の詳細や、CDP徹底活用談義、DXがもたらす未来像など、小栗・若原両氏の間で繰り広げられたディスカッションの詳細をホワイトペーパーとしてまとめ、期間限定で公開しております。自社のデータ活用に新たな視点をもたらすきっかけとして、ぜひご活用ください。
-- ホワイトペーパーの配布は終了しました --