各種報告書や稟議書、契約書……。普段何気なく接している紙の文書にどれだけのコストや管理の手間がかかっているか、意識したことがあるだろうか。今、先駆的な企業があらためて“ペーパーレス化”に着目、そこに多くの潜在的なメリットを見いだしている。そうした中、「文書の電子化に思っている以上に多様な価値がある」と言うのがペーパーロジックの横山公一社長だ。同社は、あらゆる領域のビジネス文書を法的要件を満たした形で電子化し、紙をなくす完全ペーパーレス化を後押ししている。
ペーパーロジック
2011年設立(18年に現社名に変更)。紙での保管が法律で義務付けられている書類を含め、企業の多様な文書のペーパーレス化を支援。e-文書法、会社法、電子帳簿保存法、会計監査などへ完全対応したpaperlogicクラウドサービスを提供する。
横山公一(よこやま・こういち)
1967年生まれ。学習院大学法学部を卒業し、91年に監査法人トーマツに入所。99年青山綜合会計事務所を創業し、管理資産額4兆円に成長させる。現在は、日本の生産性向上に資するペーパーレス化の普及に尽力。公認会計士・税理士。

端的に、正しい情報が経営の現場に届いていない。私は、本当の意味でのペーパーレス化や文書のデジタル化が日本の企業で思うように進んでいない原因はそこにあると考えています。

日本にはビジネス文書等を紙で保存することを義務付けた法律が約300ありますが、2000年頃から着々と規制緩和が進行。すでに8割以上の文書はデジタル保存が可能です。一方、デジタル化の要件として求められるタイムスタンプや電子署名の技術も進歩しており、先頃政府が企業の電子書類に公的な信用を与える制度の検討を始めたとの報道もありました。また、電子契約の導入によって印紙税を数千万円単位で節約できる企業も少なくありません──。セミナーなどでこうしたお話をすると、多くの方が「知らなかった」と驚かれるのが実態です。

確かに個々の法律の規定は微妙に異なり、経理、総務、法務と多岐にわたる文書を電子保存するためには一定のノウハウが必要です。それでも、ペーパーレス化の環境が整備された現在は、メリットを享受できる企業とできない企業とで競争力に差が付く時代。経営者の皆さんには、ぜひそのことを知っていただきたいのです。

では、文書の電子化で企業活動はどう変わるか。第一にコスト削減はわかりやすい効果でしょう。紙代や印刷代、印紙税、郵送費などはもちろん、実は大きいのが文書を出力したり、綴じたり、保管したり、何度も同じ内容を入力や転記したり、探し出したりする間接的なコストです。多くの企業では、ここに相当の人件費がかかっています。例えば当社に相談のあったある企業では、紙ベースで行っている派遣社員の更新業務をデジタル化することで、担当者を5人から1人に減らせることがわかりました。

他方でペーパーレス化の見逃せない経営効果として、内部統制、コンプライアンスの強化がここにきて注目を集めています。電子ワークフローによる承認プロセスの管理は、「誰が」「いつ」「どのようなアクションを起こしたか」の履歴を残すことに直結します。タイムスタンプ、電子署名を活用すれば、文書の改ざん・なりすましも防げる。企業の法令順守・ガバナンス強化が厳しく問われる今の時代、業務の見える化によってビジネスの健全性を担保することは経営の基本ともいえるのではないでしょうか。

さらに現在、AIやRPA(ロボットによる業務自動化)といった技術の活用に強い関心を寄せる経営者は少なくないでしょう。しかしそれを自社の事業に取り込むには、そもそも情報をデジタル化しておくことが大前提です。ある社長が、顧客からのクレームの報告書の束を見ながら、「これは宝の山だ」とおっしゃっていたのが印象的です。しかし膨大な紙の文書から、その宝を見つけ出すのは容易ではありません。デジタル化してこそ、迅速な検索・分析による情報の利活用が可能になる。情報が持つ価値を最大限引き出せるのです。

会計、税務、法務の知見を生かし独自のシステムとサポートを提供

これまで紙で行っていた業務をデジタルベースに切り替えるには、業務フローや業務マニュアル、各種規程の変更が必要になります。また、税務に関しては申請も必要です。お話ししたとおり、スムーズに実現するには一定のノウハウや仕組みを要します。

そこで私たちペーパーロジックは、公認会計士、税理士、弁護士、行政書士の知見を活かし、法的要件を満たしたシステムを構築してご提供しています。電子稟議、電子契約、電子書庫のサービス群を組み合わせ、企業内外のビジネス文書を全方位的にデジタル化できることが特徴で、あらゆる業務のペーパーレス化、情報の効率的な利活用をシームレスに具現化することが可能です。もちろん個々の企業によって、どのレベル、範囲から始めるかは異なり、運用過程での調整もありますから、当社は士業によるコンサルティングにも力を注いでいます。そうした体制を整えることで、どんなお客様にも最適なご提案ができると自負しています。

平成元年当時、世界時価総額ランキング上位50社のうち6割超が日本企業でした。それが平成30年には1社だけ。また日本の労働生産性は主要先進7カ国の中で最下位です。こうした現実を変えるには、固定観念に縛られない挑戦こそが求められます。横並び意識や事なかれ主義の中で変革はできない。お伝えしたように、ペーパーレス化には多様なメリットが存在します。2000年以上続く紙の文化は根強いですが、グローバル化が進展する中、文書のデジタル化は今後ますます不可欠なものとなるでしょう。それを後押しするのが私たちの使命。電子認証基盤を組み込んだ当社独自のシステムによって、また企業の、社会の変革を必ずや実現するという強い熱意を持って、日本に真のペーパーレス化を根付かせていきたいと思っています。