導入企業数2700社超。昨年、その数を10カ月で約3倍にも増やしたRPAツール「WinActor(ウィンアクター)」。急激に販売数を伸ばしているだけでなく、特定業務で利用を始めた企業が全社的な大型導入に移行する事例も増えているという。現場のニーズに磨かれ、進化を重ねるWinActorの特徴や今後の展開を同ツールを提供するNTTアドバンステクノロジの二人に聞いた。

業務時間の削減効果に加え社内のマインド改善にも貢献

荒川賢一(あらかわ・けんいち)
NTTアドバンステクノロジ株式会社
取締役
ソリューション第二事業本部長

WinActorは、スモールスタートに適した現場フレンドリーなRPAツールとして認知度が高い。一方で、NTTアドバンステクノロジの荒川賢一氏は「最近ではスモールスタートでの導入に成功した企業が、部門、組織をまたぐ形で多種多様な業務に活用するケースが増えています」と言う。

食品物流大手のニチレイロジグループ本社は、そのうちの一社だ。同社ではまず、運送事業の工程で発生するデータ入力と確認作業をWinActorで自動化。人手の大幅な削減により、1受注あたりの作業時間を130秒から10秒へと短縮させた。そしてこの効果を受け、WinActorの水平展開を本格化したのだ。

成功事例の動画紹介などで社内での普及活動にも力を入れた結果、本格利用開始から1年での導入はグループ12社94事業所に拡大。年間約1万時間の業務時間削減を実現している。今後は年間18万時間の削減を目指すという。

「ニチレイロジグループ本社様では、単に作業時間が削減できただけでなく、『こうすればより効率的だ』と業務自体を変えようとするマインドが醸成され、社内のコミュニケーション活性化にもつながったと聞いています」と荒川氏は加える。

WinActorが実績を伸ばしてきた背景には、第一に導入のしやすさがある。企業は自社のPCに同ツールをインストールすればよく、既存のシステムを変更する必要はない。

プログラムの知識を必要としない使い勝手の良さも魅力だ。例えば、表計算ソフトのデータを基幹システムにコピーする作業。WinActorでこれを自動化しようと思えば、一度人がその作業を行ってみればいい。するとWinActorが作業内容を記録し、業務シナリオを作成する。シナリオはフローチャートの形で表示され、ドラッグ&ドロップで直感的に編集できるというシンプルさだ。よく行われる作業などはライブラリ化されているので、効率的にシナリオの利便性を高めることもできる。

加えて導入企業の多様なニーズに応える販売代理店のサポートも見逃せない。荒川氏は「WinActorの販売代理店は、NTTグループ企業ほか、人材派遣事業者、ITコンサルティング事業者など約350社。それぞれが強みを活かしながら、導入領域の拡大や業務プロセス改善をはじめ多様なサポートを行い、WinActorの価値を最大限引き出しています」と説明する。

管理機能を用意
高度なセキュリティ確保も

髙木康志(たかぎ・やすし)
NTTアドバンステクノロジ株式会社
取締役
AIロボティクス事業推進室長

一方で、もともとNTTグループ内の業務効率化を目的に開発されたWinActorは、大型導入やトップダウンでの導入に対応できる素地を持つRPAツールといえる。

大型導入においてはまず、集中管理機能が重要になる。多数のPCで利用するようになると、「稼働状況を把握したい」「セキュリティが心配」などといった課題が出てくるためだ。これらの課題に対応するのが「WinActor Manager on Cloud/WinDirector」である。

NTTアドバンステクノロジの髙木康志氏は次のように話す。

「この管理機能を使えば、複数のPCにおけるWinActorの稼働状況や障害発生状況などをリアルタイムに把握できるほか、空いているPCにタスクを振り分けて自動処理を効率化することも可能。就業時間外に複数のPCでタスクを実行するといったこともできます。また、クラウド型もオンプレ型もお客様のニーズに応じて選択が可能です」

部署を超えて利用するようになると、各部署が勝手にシナリオを書き換えるなどの事態が心配されるが、その点もユーザーごとに管理権限を設定することで対応可能。重要情報を扱う際も、高い秘匿性を確保することができるというわけだ。

「NTTグループは、多様なシステム、ネットワークをご提供する中で相当に高度なセキュリティ技術を培ってきました。クラウド型管理機能の提供においても、強固なセキュリティ対策でお客様の貴重な情報を守ります」と髙木氏は言う。

そしてNTTアドバンステクノロジでは、下の図のとおりWinActorのさらなる進化を見据えている。具体的な内容としては、例えば業務に使用できるさまざまなシナリオのマーケットプレイスの設置、従量制の料金体系の追加、外部の業務アプリケーションとの連携など。ロードマップを描き着々と開発を進めているところだ。

「そして近い将来、AIとロボティクスを融合することも私たちの重要なテーマ」と髙木氏。「例えば、電話やメールでの問い合わせのような非定型業務も、自然言語処理技術などを使えばデータ化してWinActorで扱うことが可能になります」

また、AIを使って業務の傾向やパターンを収集・分析し、最適な業務改善や自動化を導き出すことなども視野に入れる。

「定型業務、非定型業務、さらに契約や監査なども含め、あらゆる既存システムをつなぎ、ワークフロー化していきたいというのが当社の考え。AIロボティクスによってお客様のデジタルトランスフォーメーションを後押ししていきたいと思っています」と髙木氏は今後の展開を語る。

WinActorはNTTが誇る研究所の成果であり、今後も研究所から最先端の技術が継続的に投入されるとすれば将来性も期待できる。NTTグループにおいて、先端技術の実用化、価値化を担うNTTアドバンステクノロジ。その取り組みから、今後も目が離せそうにない。

WinActor(R)はNTTアドバンステクノロジ株式会社の登録商標です。
WinDirector(R)は株式会社NTTデータの登録商標です。