日本企業の競争力の源泉は現場にある
──日本市場で急速に普及し、世界でも存在感を増しています。その理由をどう見ますか。
【長谷川】我々が目指したのは、日本ならではの高度な要件を具現化する“日本型RPA”です。それが結果的にグローバルでの優位性につながりました。
もともとRPAは、欧米企業がインドのオフショアセンターへ外注していた「単純・大量・反復」する作業を自動化するために開発されたツールです。対して日本企業の仕事は「少量・複雑・多様」、つまり「分岐のある繰り返し」が非常に多く、従来型のRPAではニーズを満たしきれませんでした。
「現場に神宿る」、日本企業の競争力は現場にあります。社員(人財)一人一人の中に、おもてなしの精神が溢れ、お客様のため、より良い仕事のために力を尽くしている。しかし、それゆえに労働生産性は先進国の中で下位に甘んじています。労働人口が先細る中で、変化しなければ日本の誇る品質は保てないでしょう。そこに日本型RPAが貢献するのです。
現在UiPathの世界での開発投資のうち40%は日本関連のものです。今後は、日本型RPAが世界標準となるはずです。
業務の“ラストワンマイル”を担いオープンなデジタル基盤になる
──RPAの導入を進めることで企業は今後どのように変化するのでしょうか。
【長谷川】これまで新しいシステムが導入されても、複数のシステムをつなぎ業務を終わらせる“ラストワンマイル”は、人間が担うしかありませんでした。そこを自動化するのがRPAです。うまく使えば、既存システムそのものに手を加えずに業務効率化が可能になり、レガシーシステムの延命にも貢献します。そして社員(人財)はルーティンワークから解放され創造性のある仕事へと取り組めるのです。
──進化するデジタルテクノロジーの中で、UiPathはどのような役割を担いますか。
【長谷川】UiPathはレガシー、つまり今までのIT投資と、AIやOCR、チャットボット、Cloud/仮想化など進化するデジタルテクノロジーをつなげ、またSAP、セールスフォースなどさまざまなERPシステムにも容易に接続することで、ラストワンマイルを広げます。
企業内システムの連携への活用から始まり、今後はフィンテックやオートテックなど今、生まれている先進社会インフラシステムともつながるようになります。あらゆるテクノロジーをつなぐオープンなデジタルプラットフォームになり、Society 5.0の実現にも寄与したいと願っています。RPAは日本が世界をリードする産業へと発展すると期待します。
──AI活用とのかかわりをどう考えますか。
【長谷川】UiPathは過去2年間で、企業価値が20倍になりましたが、これはRPAがAIを活用するのに不可欠であると期待されているからだと思います。
AIでは多くのデータサイエンティストがデータ整備のための単純手作業に時間を費やしています。RPAを利用することで、データ収集、クレンジング、外れ値のチェックなどの作業が効率化されます。
また、RPAが様々なシステムやデジタルテクノロジーとAIをつなげることで、AIが実効性をもって活用されるようになります。UiPathでは現在80社以上のAIと連携しており、AIの啓蒙活動を行っている英国団体「CognitionX」より2年連続でAI利用促進に貢献した企業として表彰を受けるなどその実力は高く評価されています。
ロボット フォー エブリワン
一人一人がロボットの使い手になり日本の自動化を前に
──「人財がど真ん中のDX」とはどのような考えが込められているのでしょう。
【長谷川】RPAのプロジェクトはロボットを作るプロジェクトではなく、RPAを使いこなす社員(人財)のためのプロジェクトだと考えています。ある精密機器の社長が「自分たちが実現したいのは“働き方改革”ではなく“働きがい改革”だ」とおっしゃっていましたが、まさにUiPathが目指す未来もそこにあります。しかしそのためには、表計算ソフトや電子メールを利用するように全社レベルで、一人一人がロボットを使いこなせる必要があります。現場で業務に精通する人々がDXの旗手となるのです。そのためにUiPathは、よりロボットが身近に使える価格体系、簡単に使えるロボット、ロボット活用ノウハウの共有化、さらには、教育プログラムの整備に努めています。会社全体そして日本全体、中堅・中小企業や地方でのDXの活用が進みSociety 5.0へとつながり日本が再び元気になる、その一翼を担いたい、これがUiPathの思いです。