生産性向上や働き方改革、人手不足などを背景に、日本企業でRPAが急速に広がっている。なかでも中堅・中小企業で「身の丈にあったRPA」として導入社数を増やしているのが、ユーザックシステムの「名人シリーズ」である。同社代表取締役社長で、名人シリーズの創設にかかわった石井伸郎氏に聞いた。
石井伸郎(いしい・しんろう)
ユーザックシステム株式会社
代表取締役社長

日本にはすでに15年の実績を持つ“国産RPA”が存在する。ユーザックシステムの「名人シリーズ」だ。昨年リリースされた「Autoジョブ名人」を筆頭に、現在700社超が導入。ライセンス購入後の実業務での利用率は92%。テスト導入の利用だけにとどまらず、一度導入した企業では基盤システムとして着実に定着している。

石井伸郎氏はこう話す。

「我々はRPAという名称ができる前の2004年から、業務自動化を助ける『名人シリーズ』を提供してきました。多くの中小企業では、RPAの導入に関心があっても、人材や予算の壁に悩んでいらっしゃいます。それを解消するのが私たちの役割。RPAのツールをただ販売して終わるのではなく、導入支援やサポートなども含め、業務の確実な自動化を支える一体的なソリューションを提供しています」

ユーザックシステムのアンケート(RPAユーザー100名が回答)によると、「名人シリーズ」の実業務での利用率は92%と、実業務に根差して活用されていることがわかる。導入目的は「生産性向上」が最多で83件、続いて「残業時間の軽減」「高付加価値業務にシフト」が続く。より高いパフォーマンスを出し、長時間労働を減らしていくという働き方改革と合致している。

導入からメンテナンスまで技術者がサポート

ユーザックシステムは約50年間にわたって、中堅・中小企業向けに業務支援システムを提供してきた老舗のITベンダーだ。それゆえに、顧客のITリテラシーに合わせた支援に長け、ノウハウも豊富に有する。

「中小企業は大企業に比べて単純作業の量が少ないため、RPAの費用対効果が小さく、開発技術者を社内で確保できないなどの課題があります。そこでRPAを自社で運用できる企業には技術者による導入教育などを行い、自社対応が難しい企業には導入時のシナリオ作成からメンテナンスまでサポートするプランを用意しています」

「Autoジョブ名人」の開発版の年間ライセンスは60万円、実行版は18万円。ある飲料メーカーは開発をすべてユーザックシステムに依頼したが、「サポートを含めた投資費用は2週間で回収できた」というほどだ。

特に評価が高いのが、人による手厚いサポート体制である。「名人シリーズ」の開発や運用中にもしも不具合があれば、メールに加えて電話でも相談可能。さらに緊急時には技術者が現場に駆けつけるサービスも「安心できる」と好評を得ている。

RPAで高パフォーマンスを実現!

一つの業務見直しで月間92時間の削減に成功[昭和電機]

電動送風機や集塵機など、風を使った産業ソリューションを提供する機器メーカー、昭和電機(本社:大阪府大東市、年商80億円、社員数227人)。2017年から働き方改革に取り組む中で、ユーザックシステムの「名人シリーズ」を導入し、業務効率化を実現している。

昭和電機ではまず、勤怠管理の自動化にRPAを導入し、有効性を確認したうえで、現場でのRPAの適用範囲を拡大していった。なかでも改善効果が大きかったのが、顧客への納期回答業務である。

以前は、営業拠点で基幹システムから納期回答に関するデータを抽出し、納期回答書を手書きで作成し、取引先にファックスするという手間のかかる手順を取っていた。

このプロセスの効率化にRPA「Autoジョブ名人」が貢献した。「データ抽出」「一覧表の作成」「営業担当者ごとのデータを切り分け」「納期回答書pdfの作成」までを自動化。1日約600件の処理が可能になり、営業担当者は受け取ったpdfに手を加えず、顧客あてのメールに添付するだけでスピーディーな納期回答が可能になった。これによって納期回答にかかっていた時間は月間92時間削減したという。

同社ではRPAの導入業務をさらに拡大し、59の業務改善に着手する予定だ。

現場目線で機能を開発
長年のノウハウを生かす

徹底した企業目線に立っているのは、もともと「名人シリーズ」が顧客の声から生まれたという背景がある。

「今でいうRPAの開発を始めたのは、得意先のWeb-EDI(インターネット上の取引情報交換システム)を利用しているお客様から、『手作業で受発注データを集める手間を軽減したい』というご相談を受けたことがきっかけでした。受発注データを扱うのですから、ミスは許されません。だからといって、いちいち人がシステムの稼働状況を確認したのでは自動化の意味がありません。安定稼働を重視しているのは、その重大性を実感しているからです。また、不具合を見逃さないようにエラー通知をメールで発信するなど、有事の即応対策は徹底しています」

顧客から「煩雑なメール処理の負担を減らしたい」「ウェブサイトからの情報収集を自動化したい」などの相談を受けるたびに、自動化する範囲を拡大していった。

「『名人シリーズ』は製品主導ではなく、ビジネスの現場の悩みに応えることで進化しています。その結果お客様にとっては非常に使い勝手が良いものになっていると思います」

例えば、「名人シリーズ」は独自のスケジュール実行機能を備えており、四半期決算日や休祝日を除く日など、任意の日時で設定可能。また、RPAは定型的な作業を得意とするが大量のデータ処理では時間がかかりすぎてしまう。そんなとき、「名人シリーズ」なら大量のデータを瞬時に処理するデータ変換オプションも選択できる。これはWeb-EDIを手がけてきたユーザックシステムならではの強みだ。

「賢いRPAを導入した組織は非常に高いパフォーマンスを発揮しています。優れた事例をウェブサイトやマガジンで幅広く発信していますので、ぜひ参考にしていただければと思います。これからは、人の能力を生かす時代です。人間の能力や技術をさらに醸成できるような仕事は人が行い、そうでない仕事はロボットにさせていくことで働き方は変わっていくでしょう。RPAの導入にはハードルもあります。しかし、そこを支援するのは、まさに私たちの得意分野です。ぜひ、安心してご相談ください」

昭和電機の事例の詳細や、RPA導入のポイントを解説!

「RPAマガジン」を無料ダウンロードできます

上記で紹介した昭和電機のさらに詳細な取り組みや、RPAユーザーアンケートなどが読める「RPAマガジン」を無料でダウンロードできます。

RPAマガジン>>