便利で安心、手頃な値段で味もいい。多種多様な商品が店頭に並ぶ冷凍食品。その中で、大きなマーケットを確保しているのが冷凍うどんだ。近年はコロッケと生産量1位を争いながら、市場規模はおよそ670億円にまで達している。
そんな冷凍うどん市場で4割超のトップシェアを誇るのがテーブルマークである。下のとおり、1974年、前身の加ト吉による発売以来、約10年の助走期間を経て生産量を着実に伸長。現在は年間5億食を超える状況だ。
「当初は『冷凍したうどんなんて』という言葉もいただいたようですが、おかげさまで現在は食卓でもおなじみの存在に。マーケットをリードする立場として、何より大事にしてきたのはやはり“おいしさ”の追求です。ほかと比べて違いがわかる。そんな商品を目指して改良、努力を重ねてきました」
そう話すのは、同社マーケティング&セールス本部の高橋良輔氏だ。実際、最近の冷凍うどんを食べたことがある人なら、高橋氏の発言にも納得するだろう。あのコシの強さやもちもち感がすぐに思い起こされるはずだ。
うどん職人の技を生産ラインに落とし込む
「香川県観音寺市、讃岐うどんの本場で生まれた当社のこだわりは、うどん職人の技をできるだけそのままの形で機械に置き換えること。単に生産効率を求めるのではなく、どうすれば手打ちの作業に生産ラインを近づけられるか。これが技術部門の人間にとっては重要なんです」と高橋氏は言う。
例えば生地づくり。うどん職人が生地を足で踏むのは中の空気を徹底して抜くためだ。空気が含まれていると、生地が不均一となり、コシも出にくい。そこでテーブルマークは、機械メーカーと協力して、小麦粉や塩、水を真空状態で混ぜられるミキサーを開発。これでつくった生地を寝かせてしっかり熟成させ、その後何度も延ばすという工程を採用している。
麺の切り方についてもそうだ。くしのような刃に生地を通す「スリッター方式」のほか、うどんを1本1本切り落としていく「包丁切り」のラインを複数稼働させている。
「『包丁切り』のうどんの断面を見ると、外周部が鼓のようにくびれた形になっていて、ここにつゆがよく絡みます。また、四隅の角(かど)も立つので手打ちうどんのようなのどごしが再現できるのです」
そもそも冷凍うどんは、なぜあれだけのコシの強さを保てるのか。ポイントは麺の水分量の維持だ。うどんが一番おいしいのはゆでたての状態。このときの水分量は外側が80%程度、中心付近が50%程度になっている。外はもちもちで中は歯ごたえがある、この最適なバランスを“急速冷凍”によって閉じ込めているのが冷凍うどんなのである。冷凍に時間がかかると、麺の中の氷の結晶が大きくなり、組織がダメージを受けてしまうのだ。
鍋やお湯を使わず電子レンジで調理できる
さまざまな技術を駆使し、手間をかけてつくられていながら、家庭ではそれを手軽に便利に食べられる。これが冷凍うどんの魅力だろう。鍋やお湯を使わずとも、凍ったまま、内袋のまま、電子レンジで3分30秒ほど加熱すれば、ゆでたてのおいしさが味わえるのをご存じだろうか。
「電子レンジ調理の認知度は60%台。火を使わず、キッチンが暑くなることもないこのメリットを当社としてもより多くの人に周知していきたいと思っています。夏場なら、電子レンジで加熱したうどんをさっと冷水で締め、好みの具材をのせれば一品完成。テーブルマークでは、『レンジで夏うどん 100レシピ』という夏季限定のウェブサイトも用意して、いろいろな味わい方をご提案しています」
ネギやミョウガを薬味にシンプルなざるうどんもいいが、サイトにある“豚しゃぶとポン酢の冷やしうどん”や“トマトとバジルのイタリア風”──。なるほど、どれも試してみたくなる。考えてみれば、和・洋・中、どんなアレンジもできるのがうどんの特徴。夏の麺といえば冷やし中華やそうめんが定番だが、そのバリエーションの幅広さはうどんが一番だろう。
テーブルマークでは今年、「冷凍うどんの夏に!」との思いのもと、5年ぶりのテレビCMも展開している。俳優の松山ケンイチ氏を起用したCMのキャッチコピーは「冷凍だから、コシが強い。」だ。
「初めての方はもちろん、これまで召し上がったことのある方にも、何よりそのコシの強さを実感してほしい。そう考えて、シンプルなメッセージとしました。私の個人的なおすすめの食べ方は、“納豆釜玉風うどん”。納豆好きなら、きっとやみつきになるはずです」
食欲が落ち込みがちなときに、好きな具材と好みの味付けでつるつるっと一杯──。これから始まる暑い夏の強い味方になりそうだ。