新薬の開発競争が世界的に激化するなか、グローバル化を強力に推し進める中外製薬。一方、ビジネスパーソンに特化した英会話学習プログラムで、同社のグローバル人財育成をサポートする(株)ビジネス・ブレークスルー。両社のキーパーソンが、グローバル人財に求められる資質と英語力について語り合った。

国内市場だけでは製薬会社は立ち行かない。
グローバルに打って出る必要がある

中外製薬株式会社 人事部長
矢野嘉行

【政元】初めに現在、中外製薬を取り巻く事業環境について教えてください。

【矢野】まず新薬の開発競争が、世界的に激化している状況があります。例えば、がんやリウマチ、アルツハイマー病など、いまだに治療が困難な病気に対し、画期的な効果を持つ新薬へのニーズが高く、しかもそれをできるだけ短い期間に開発して市場に出すことにしのぎを削っています。一方、先進国はどこも財政難で、なかでも負担の大きい医療費を削減したい。そのため薬価に対するプレッシャーも厳しくなっています。日本も例外ではありません。

【政元】薬価の引き下げは、新薬の開発コストとも大きく関わりますね。御社は、2002年に世界的な製薬会社、ロシュ社と戦略的アライアンスをスタートしましたが、そのような背景が理由として大きいのでしょうか。

【矢野】弊社は、創薬から開発、生産、販売までを一貫して行っている製薬会社ですが、もはや国内市場だけでは立ち行かなくなるだろう、やはりグローバルな市場に打って出て、画期的な新薬のニーズに応えていかなければならないと考えています。

そして、おっしゃるように研究開発費用の確保があります。新薬を開発し、世界規模で発売するとなると、数千億円ともいわれる膨大なコストが必要になります。ロシュ社との提携は、研究開発のクリティカルマスを確保するうえでも重要となる選択でした。

ただ、ロシュ社との戦略的アライアンスは、ロシュ社が弊社株式の59%を保有しながらも、中外製薬の経営の独自性は担保するというユニークな提携となっています。

【政元】子会社に独立経営が許されることは、確かに珍しいケースといえますね。

グローバルビジネスで結果を出す、そのための英語力が必須

株式会社ビジネス・ブレークスルー取締役
株式会社BBTオンライン代表取締役社長
ビジネス・ブレークスルー大学
経営学研究科経営管理専攻 教授
政元竜彦

【政元】ロシュ・グループの一員として、これまで御社はグローバル化に取り組んできましたが、その手ごたえはいかがですか。

【矢野】成果のひとつといえるのは、FDA(米国食品医薬品局)の「ブレークスルーセラピー」指定ですね。重篤または致命的な疾患を治療する薬の開発及び審査を促進する制度で、指定を受けた医薬品は優遇措置を受けられます。ロシュ社は、全部で14件の指定を受けており、世界でナンバーワンですが、そのうち弊社で開発したものが5件指定を受けています。

【政元】それは素晴らしい。御社は、グローバルに活躍する日本のトップ製薬企業、さらには世界のトップ製薬企業を目指すと聞いていますが、目下の課題は何でしょう。

【矢野】やはりグローバル体制の構築で、これは継続して着々と進展しています。一方で重要課題として取り組んでいるのが、グローバル人財の育成です。

【政元】御社が求めるグローバル人財とは、どういうものですか。

【矢野】重視するのは異文化コミュニケーションスキルです。弊社の場合、創薬から開発、生産、マーケティングなど、さまざまな業務分野でロシュ社やそのグループ会社との交渉が発生します。そこでは相手と伍して話せる対話力、英語力が重要になります。

とくに研究開発段階では、非常にデリケートなやりとりも必要になります。自分の考えや意思を正しく伝えるだけではなく、ときには相手を説得して動かすほどの対話力が求められます。

単に英会話ができるというレベルにとどまらず、結果を出すための英語力がグローバルビジネスでは必要だと考えています。

あらゆるビジネスシーンに即したスカイプレッスンが導入の理由

【政元】「結果を出すための英語力」はまさしく、ご採用いただいているBBTオンライン英会話のコンセプトなのですが、このプログラムを選ばれた理由をお聞かせください。

【矢野】ひとつはスカイプによる1対1のレッスンです。多忙な社員が、通勤時間も含めて自分なりの隙間時間を使って学習できます。加えて、グローバルなビジネスシーンで実際に遭遇する、多様なシチュエーションをもとに教材が組まれていることです。

【政元】ビジネスコースで設定されたシチュエーションは、200パターンあります。

【矢野】しかも、個々の語学能力に応じたプログラムが用意されていますね。例えば、プレゼンテーションでの対応、あるいは高度な交渉が必要な場合など、受講者がこれから直面するであろう場面に即して、多彩なフレーズを学べるところが実践的だと思います。

【政元】とかく日本人は和文英訳型の会話をしがちで、表現がその場にそぐわず、相手に不快感を与えたり、誤解を招くことがよくあります。TPOに合ったフレーズを使いこなすことは、ビジネスシーンではとても大切です。BBTオンライン英会話の講師は、ビジネス経験も豊富なので、実践的なアドバイスができます。

【矢野】弊社では受講者に半年で100回のレッスンを課しました。語学の学習は、短期に集中してやらないと、なかなか蓄積されません。その点でも、BBTオンライン英会話のプログラムは有効だと思いました。人事部として、受講者の英語学習へのモチベーションが保てるように、受講前には集合研修を実施し、途中、講師からのビデオメッセージを見てもらいました。

【政元】成果のほどはいかがでしょう。

【矢野】累計で95名が受講していますが「継続して英語力を高めていきたい」という声が多く聞かれます。受講終了後のプレゼンテーションでは、受講生たちが堂々とした英語スピーチで自分の考えを発表していました。

 ロシュ社との間に、人財交流プログラムがあるのですが、当初は語学研修や人財のネットワークづくりが主でした。しかし、今はロシュ社のメンバーと、即戦力として一緒に業務を行えるようになってきています。さらに語学力、異文化コミュニケーション力を高め、ロシュ・グループのなかで、リーダーを担える人財を育んでいきたいと思っています。

【政元】BBTオンライン英会話のプログラムには、マネジメントやリーダーシップに特化したハイレベルなものまでありますので、ぜひ引き続き貢献させていただきたいと思います。

「BBTオンライン英会話」とは
大前研一が学長を務めるビジネススクール「ビジネス・ブレークスルー大学」(株式会社ビジネス・ブレークスルー運営)の授業にも導入されているスカイプを使ったマンツーマンのスピーキングレッスン。
「ビジネスで結果を出す英語力」をコンセプトに、海外駐在経験のある教授陣によって開発されたプログラム。人を動かすためのニュアンスを駆使した表現を学べる教材に定評がある。スピーキングレベルに合わせて10段階にレベル分けされた「ビジネスコース」と、60のビジネスシーンを想定した「マネジメントコース」がある。