特別なことをせずとも、普段どおりの生活を送っているうちに、いつの間にか得をしている。そんな手軽さから浸透した各種ポイントサービスの展開は、健康維持の分野にも広がっている。

厚生労働省は今年5月に「個人の予防・健康づくりに向けたインセンティブを提供する取組に係るガイドライン」を発表した。「自らの健康は自らがつくる」という意識の向上を図り、具体的な行動を後押しするために、どう個人へアプローチしていくか、という方向性が示されている。その中心的な役割を担うのが、多様な「見返り」の創出を推進していくというものだ。

すでに、さまざまな自治体や健康保険組合、企業などが「健康ポイント」制度を取り入れた試みをスタートさせている。例えば、定められた歩数に達したり、健康診断を受けたり、数値が改善したりすることで、それぞれの成果に応じたポイントが付与されるほか、健康づくりイベントへの参加や、提携するフィットネス施設などの利用で獲得できる事例もある。こうして貯まったポイントは商品券や景品、あるいは協力店でのサービスといったものと交換できるという仕組みだ。

このように国によるバックアップ体制が築かれるなかで、健康長寿社会の実現へ向けた環境整備が着々と進んでいる。これまで健康づくりに無関心だった層にとっては、具体的なインセンティブが、自分を変えるいいきっかけにもなるだろう。

加齢とともにリスクは高まる

ただ、健康長寿社会といわれても、なかなか自分に関連づけてとらえるのは難しい。別に深刻な不調を抱えているわけではないし、気力や体力もまだ十分にある。そんな働き盛りの世代にも、加齢が心身に影響を与える時期はやってくる。そのときに健康を維持できるかどうかは、やはり“いま”の心がけしだいだ。実のところ、のんびりと構えている余裕はまったくない。

日本人の死因の6割は生活習慣病が占めており、加齢やライフスタイルが発症や重症化と深いかかわりがあることが認められている。厚労省の調査によると、30代前半と比較して40代前半の心疾患の死亡率はおよそ3倍、50代前半になると7倍以上にも膨れ上がる。生活習慣病のリスクが確実に高まっていくことが分かっていながら、何の手も打たなければどうなるか。これはもはや個人だけの問題にとどまらず、企業の経営にも影響する。近年、レセプト(診療報酬の明細書)などの情報を分析して効果的・効率的な保健事業の確立を目指すデータヘルス計画や、健康経営といった言葉がクローズアップされているのも、こうした深刻な実態があるからだ。

やはり、先に述べたように「自らの健康は自らがつくる」という意識を持つことが健康寿命を延ばすためのポイントである。見渡してみれば、健康増進を支えてくれるサービスやツールの選択肢は増え続けている。一人では心許ないというなら、専門的なサポートを受けられる場所に通うのもいいし、スマートフォンのアプリなどをうまく活用すれば、健康管理を無理なく習慣化することもできる。いずれにしても、自分に合った手法をいかに早い段階で見つけられるかどうかが、将来を左右することになる。

上の「行動変容ステージモデル」は1980年代に禁煙の研究から導かれ、 現在、その他の分野にも適用されている。