分け方に差がある場合、必ずその理由を!

内容面での主だったトラブルには、

(1)遺産目録が不正確
(2)一部の財産と相続人のみ記述(全財産の分け方が不明)
(3)相続人の間で分け方に差がある
(4)遺留分(特定の相続人に最低限保障される一定割合の遺産)を無視した遺言

が挙げられます。

まず、(1)では、本人名義の預貯金が網羅されておらず、後から五月雨(さみだれ)式に見つかって混乱を来すケース。昨今、増えているのがインターネットでの銀行や証券口座の存在です。従来型の金融機関と違って郵便物がほとんど来ないため、口座がある事実を本人以外が把握していないこと

が多く、死後に他者が全部を探し出すのは至難の業に。すべてを網羅した遺産目録の付記が必要です。

次に、(2)は「自宅は長男へ」「(メーンバンクの)△△銀行の預金は次男に」など、一部の資産だけしか記述がなく、その他の財産を誰にどう分けるのか触れていないパターン。記載のない遺産については、遺産分割協議書が必要となり、結局、遺言書がないのと同じ状態になってしまいます。とても全部を書き切れない場合には、目ぼしい財産だけをどう分けるか記し、「残りの遺産は法定相続分に従って分ける」といった記述のみでも可。最も危険なのは、「後は皆で相談して分けろ」とすることで、話し合いの過程で、ほぼ必ず争いを招いてしまいます。

(3)(4)は遺族間の仲たがいのもと。「長女には療養中に面倒をかけた」「次男には留学費用を出した」など、どんな根拠で子どもたちの間に差をつけたのか、どうしてその子の相続分が多い(少ない)のか、明確な理由を付言事項として残すこと。

とはいえ、法律で定められた「遺留分」を無視した内容だと、権利を侵害された相続人によって、裁判に持ち込まれる可能性も。遺留分を無視した遺言は、極力避けるのが大原則です。

預貯金、売って現金に換えられる不動産や金融商品の場合、数字上での分配が容易なため、遺産分割は比較的スムーズです。問題になるのは総じて“割れない財産”で、目ぼしい相続財産が自宅の土地建物しかなく、かつ、子どもの一人が住んでいるケースなどは、その代表例。もめることが予想できる家族こそ、生前の話し合いと有効な遺言書が必要です。

親に書いてもらうなら「いつ書いてもらうか」が重要

親に遺言書を書いてもらう際は、「いつ書いてもらうか」も大きなポイントです。

認知症やほかの病気など先に何があるかわからず、また高齢になるほど死や体力減退が現実的なものとなり、子どもの側から「書いてくれ」とは言い出しにくくなります。

加えて、健康状態が良好でも、当人の年齢が上がるにつれ、他の相続人から「作成時には認知症を発症していた」などと異論を唱えられるリスクも高まるため、一日でも早く、健常なうちに書いてもらうべきでしょう。

「縁起でもない!」と激高される向きもありますが、不思議なことに、一度作ってしまうと「気が楽になった」と、安堵する人がほとんどです。

ちなみに、遺言書の作成時に病気を患っていたり、医師の診察を受けている場合には、その時点での診断書やカルテのコピーを取得しておくと後の面倒を回避できます。

 
星 千絵
弁護士

田辺総合法律事務所所属。案件に応じた親身な対応と明快な法律解説に定評あり。著書に『生活と環境をめぐる法律相談Q&A』(ぎょうせい、共著)など。