「悪玉コレステロール」として有名なLDLコレステロール。でも、なんとなく他人事のように思ってしまうのでは? 将来の自分を、いま守るためにも、ぜひその値はチェックしておきたい。

コレステロールとは──
コレステロールは肝臓でつくられ、生命の維持に必要な脂質。全身の組織や細胞が、主にLDL-Cからコレステロールを取り込んで、細胞膜の成分やホルモンなどの原料にしている。ところが生活習慣の乱れや病気や体調などによって“需給バランス”が崩れることも。すると余ったLDL-Cは血液に乗って回り続け、やがて血管の壁にたまって動脈硬化の原因に。一方で「善玉コレステロール」と呼ばれるHDL-C。これは不要になったLDL-Cを“処分”するため肝臓へ戻す運搬役。だからHDL-Cが少な過ぎる状態も、LDL-C値の上昇を招くことになる。

参考:(一社)日本動脈硬化学会「コレステロール摂取に関するQ&A」より

LDLコレステロールは動脈硬化の原因。若くても油断できない

自分らしく働く、生きる──そのための条件やプランは一人ひとりさまざま。ただ、きっと共通するのは「いつまでも健康を大事にする」ということ。ならば病気の予防や早期発見・治療につながる特定健診や人間ドックは、必ず定期的に受けておきたい。何か気になる結果が出たら早めの対策を。いまは自覚症状がまったくなくても、将来の突発的な病気につながりかねない検査数値もある。

その一つが、LDLコレステロール(以下LDL-C)の値。LDL-Cの別名は「悪玉コレステロール」だと分かっていても、「その理由までは……」という人たちに、帝京大学の寺本民生先生は次のように説明する。

寺本民生先生
帝京大学
臨床研究センター
センター長

「LDL-Cによって血管がダメージを受け、動脈硬化が進んでいくのです。これは、心筋梗塞や狭心症、脳卒中など重大な病気が起こりやすい状態になっていく(※1)ことを意味します」

LDL-Cと聞けば、飲み過ぎ・食べ過ぎ・運動不足の中年男性を、ついイメージしがち。でも男女の区別なく20代でさえLDL-C値が基準を大きく上回る「家族性高コレステロール血症」(以下FH(※2))があることも、ぜひ知っておこう。

自分の状態を知りそれに合った治療を続けてリスクを抑える

FHは、遺伝が原因の病気。国内の患者数は約30万人と推定される。東北大学の佐藤靖史先生によれば、2つのタイプがある。

佐藤靖史先生
東北大学
加齢医学研究所
腫瘍循環研究分野
教授

「父親と母親の両方から異常のある遺伝子を受け継いだホモ接合体の患者さんは、100万人に1人とされます。どちらか一方から異常がある遺伝子を受け継いだヘテロ接合体の患者さんは、200~500人に1人(※3)。まだ若いのにLDL-C値が180mg/dL以上の場合(※4)は、原因としてFHも疑われます。子どもさんへ伝わる可能性もあるわけですから、家族で医師に相談しましょう」

通常、血液中のLDL-Cが多過ぎる高LDL-C血症の診断基準値は140mg/dL以上(※5)。しかしFHだと、生まれたときからLDL-C値が上昇し、180~400mg/dLになるのが一般的。そのまま何年もたてば、動脈硬化による重大な病気のリスクが増してしまう(※6)。また、たとえ大人になってLDL-C値が高いとわかり治療中でも、FHは見逃されているかもしれないことにも注意が必要。

そして、もう一つリスクが高いのは、心筋梗塞や狭心症などを一度発症した人たちだ。心臓や脳の血管で再び病気が起こることが心配される。それを防ぐため、動脈硬化の悪化を抑える二次予防の一環として、LDL-C値は100mg/dL未満にコントロールするのが原則。「二次予防は主治医の先生とよく相談を」と寺本先生。また佐藤先生も「FHの方々や心筋梗塞などを経験した方々はLDL-Cの治療を中断しないで、しっかり続けてほしい」と強く勧める。

「えーっと、私のLDL-C値は?」。

いままで気にとめることがなかったのなら、ここで再確認してみよう。もし疑問や心配があったら、迷わず医師に相談を。これからもずっと自分らしくいられるために。

※1 CTT Collaboration. Lancet. 2010; 376: 1670-1681
※2 Familial Hypercholesterolemiaの略
※3 Nordestgaard BG et al. Eur Heart J 2013;34:3478-3490.
※4 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2013年版
※5 日本動脈硬化学会『動脈硬化の病気を防ぐガイドブック』
※6 Nordestgaard BG et al. Eur Heart J 2013;34:3478-3490.