自分の興味のあるものでまずは始めてみる
これだけ環境は整っているわけだが、いざ、投資を始めようとすると、なかなか踏み出せないのも事実だろう。どうすればよいのか。
「自分が興味を持ったもので、とにかく始めてみること、それが大事です」
リスクを抑えた投資を行うためには、分散投資が鉄則だといわれる。確かにその通りだが、自分で分散投資を行うためには、ある程度の知識が必要。本を読んで勉強しても、なかなか理解できないという人が多い。それでは、いつまでたっても投資を実践できないということになってしまう。
であれば「まずは実践して、そこから学んでいったほうがいい」というのが深野さんの考え方だ。
興味があるものが見つからない、というのであれば、日経平均株価に連動する投資信託などがお勧めだという。
「国内の商品なので情報が取りやすく、為替リスクもありません。日々のニュースをチェックしていれば、自分の資産がふえているのか、減っているのかもわかります」
投資デビューをして利益が出てきたら、いったん売却して利益確定をすることも大事だという。その利益は自分へのご褒美消費に使ってもいい。そうすることで、「次はもっとがんばろう」というモチベーションにつながる。
利益確定をしてみないと経験できないことも多い。いざ売却をするとなれば、欲が絡んできて判断が難しくなる。売った後にさらに上がって損をしたとか、売らないで持っていたら下がってしまったとか、そういう経験はやってみなければできない。購入から売却まで、ひと通り経験することが投資でステップアップをするための近道になるというわけだ。
投資割合の目安は100マイナス年齢で
実際に投資を始める際には、資産のうち、どの程度を投資に回してよいのかも迷うところだ。
「年齢で判断するのがひとつの方法です。100マイナス年齢を目安にするといいでしょう」
アパート経営など不動産へ投資する際の自己資金も、この計算式が目安のひとつになる。例えば30歳なら70%を回してもいいと。70%というと大きな割合に感じるが、ビジネスパーソンならリタイアまで約30年はあるので、たとえ失敗したとしても、時間をかけてリカバリーできるからだ。ただし、この目安は投資の限度となるものなので、必ずしもそこまで投資しなければならないというわけではない。
もうひとつは、「資産がいくらまで減っても耐えられるか」で判断する方法。そのときに重要なのは、割合ではなく金額で考えること。株式に投資するケースで考えてみると、年間の値動きが30%から40%まで拡大することもある。100万円の投資をすれば、40万円の損失が発生する可能性があることを意味する。
それが耐えられないと感じるのであれば、投資金額を少なくするのがいい。50万円にすれば、損失額も20万円で済む。あるいは、もっと価格変動の少ないものに投資する方法もある。
リスクは避けることなく上手に付き合う
こう考えてくると、「やはり投資はリスクがあるから避けたい」と考える人もいるだろうが、それは、そもそもリスクに対する考え方が間違っているという。
「リスクとは『不確実性』であり、『危険』という意味ではありません。これからはリスクを避けるのではなく、上手に付き合っていくことが重要です」
深野さんは、徒歩と自転車を例に話をすることが多い。徒歩に比べれば、自転車のほうが遠くまで行くことができ、荷物も運ぶことができる。だが、自転車は徒歩よりも事故に遭う確率は高くなる。
それでも自転車に乗るのをやめるという人は少ない。代わりに交通法規を守るとか、荷物を載せる際にも前と後ろにバランスよくするとか、いろいろ工夫してリスクと共存することを考えるのが普通だ。それは資産運用も同じである。リスクを避けるのではなく、上手に付き合っていく方法を学ぶべきだという。
その方法のひとつが先人の知恵である分散投資だ。さまざまな資産に分散投資をすれば、ある資産が値下がりしても別の値上がりした資産で補うことができる。資産の分散だけでなく、通貨の分散や時間の分散も重要だ。
3つの分散を効率よく実践できる金融商品の代表は投資信託。投資対象には、株式や債券、不動産などさまざまなものがあり、世界各国の資産への投資も可能。また、積み立てで購入すれば時間分散も可能だ。
投資で成功するためには、購入後のメンテナンスも重要となる。
「定期預金であれば、ほったらかしでいいのですが、投資は何かとかまってあげなければいけません」
定期預金の場合は満期があり、そのときに資産の額が最大になる。しかし、投資の場合は10年のつもりで運用を始めても、場合によっては5年で目標金額に達してしまうこともある。そのような場合は、売却して、利益確定することも必要。ときどき状況を確認して、柔軟な対応が必要になる。
今度のボーナスをきっかけに投資デビューしてみてはいかがだろうか。